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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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決着

「ちっ!」


 舌打ちと共にベルンザークが力を行使する。巨大な光弾……けれど俺はそれを――片手で弾き飛ばした。

 パアン、と乾いた音を立てて防ぐ姿を見て、ベルンザークは何が起こったのか理解した様子だった。


「貴様、迷宮の力を……!?」

「ここはお前の管理領域だ。けれど迷宮支配者の力を持つ俺は、あんたの権限なんて無視して力を行使できるみたいだな」


 気付けば俺はこの広間の魔力を隅々まで把握していた……ベルンザークに引き寄せられる魔力。それがどういう流れでどういう形で彼の所へ集まっているのか、今は明確に捕捉できる。

 俺自身、ベルンザークから自身の正体を聞かされたことで……能力に目覚めることができた。最後の最後に彼らは油断した、というわけだ。


「くっ……!」


 ベルンザークがさらに巨大な光弾を生み出す……が、それを俺は再度片手で防ぐ。


「――終わりにしよう、ベルンザーク」


 宣告。同時、俺は自らの意識へ働きかけ、迷宮に――干渉する。

 迷宮支配者としての力……干渉した直後、バチリと大気を切り裂くような音が聞こえた。


 するとベルンザークから発せられる気配がずいぶんと小さくなる。


「馬鹿、な……」

「お前達の手で作り上げた存在だが……その力は、圧倒的にこちらが上だったようだな」


 迷宮管理者としての力をベルンザークから剥奪。そして俺へと集中。結果、こちらに力が集まり始め、圧倒的な魔力が俺の体を包んだ。

 視線を転じれば顔を引きつらせたプレルが座り込み、呆然と俺を眺めている……信じられない、という様子か。


「――させ、るか!」


 ベルンザークが吠える。その形相はまだ死にたくないという抵抗が窺え、退こうと動き始める。

 だが、力関係が逆転した俺に、その行動は無意味だった。


 刹那、力を発する。迷宮の力と俺の力が合わさったことによって生じた魔力は、あまりに膨大で俺自身が驚くほどのものだった。

 ベルンザークもその規模に驚いた様子であり……逃げられないと、悟った様子だった。


 突如彼の目の前に光が生まれた……いや、それは巨大なビーム。一瞬でベルンザークが生み出した光弾よりも遙かに強力な力を持つそれを、俺は容赦なく放った。

 ベルンザークは避ける暇もなかった。それが直撃し、広間が白い光に包まれる。


 轟音が生じ、目の前の何もかもが白に飲み込まれていく――その間に俺はベルンザークの気配を探知する。その力が……命が、消えていく。

 あまりにあっけない……迷宮管理者の最後だった。けれど迷宮支配者としての力を利用できる俺にとっては、造作もないことだった。


 そうしてしばらく光と轟音に包まれていたが……やがて光が消えた時、部屋の様相はほとんど変わっていなかった。

 というのも俺は迷宮の強度を考慮してビームを放ったのだが……頭の中に湧き上がってくる迷宮に関する情報が正確なのだと俺は認識することができた。


 変わったのは、正面……ベルンザークの気配が完全に消えたこと。そして彼が保有していた迷宮管理領域の管理者がいなくなっている……この一事からもベルンザークの存在そのものが消え失せたのだと認識することができた。


 そこで横を見る。なおも座り込んで俺を眺めるプレルの姿が映った。


「……そっちは、どうする?」


 ビクリ、と相手の体が震える。次いでこちらに平伏したような姿勢を示したが……言葉を発さない。

 というより、言葉にならないってことか……俺としてはさっさと始末してもいいかもしれない。というより騙して俺を殺そうとした存在だ。さっさと片付けても――


「……ふむ」


 俺は一つ呟き広間の奥を見る。階段については無事だったが、玉座については綺麗さっぱり破壊されていた。そこについては後でベルンザークがしつらえた物なのだろう。

 そして玉座の背後にある壁も壊れ……奥に空洞が。


「先へ進めるってことか……プレル」


 名指しされプレルは首をブンブン縦に振った。


「なるほど、あの奥に進めば迷宮支配者……眠りにつく迷宮支配者に会えるってわけだな」


 確認の問い掛けに再度プレルは頷いた。


「わかった……プレル、そちらは今後一切他の管理領域に干渉しないということを誓えばこの場は見逃すが、どうだ?」


 もう一度彼女は頷く。


「ならばこれで終わりだ。目の前から消えてくれ」


 強い言葉を発すると、彼女はゆっくりと立ち上がり震える足で歩き始めた。

 それを俺は黙って見送る……その背にビームを撃ち込んでもよさそうなものだったが、ベルンザークを倒したことで戦いも終わり、あまり意味がないと思った。


「それに、管理領域の空白地帯が増えるのは、あんまり望ましくなさそうだし」


 そんな呟きを発した後、プレルの姿が見えなくなった。


「……よし、行くか」


 俺は先へ進むべく歩き始める……オーゴの戦いが終わってからでもよさそうだったが、足が迷宮の奥へと向いた。ベルンザークも倒れたし彼らも大丈夫だろうから、俺は俺のやりたいようにやろう。

 そんな考えを抱きながら玉座のあった場所へ。先にあるのは下り階段。俺は魔法の明かりがあることを確かめ、無言で下り始めた。


 やや長い階段が途切れた時、明らかに空気が変わった。何か……元々魔力の濃い場所ではあったけれど、ここは輪を掛けてさらに濃い。しかもそれは侵入者を阻むようにまとわりつくほどのもので、例えば人間なら倒れてしまいそうなくらいだ。


「終点は……そう遠くないな」


 俺は迷宮支配者としての力を行使し、この周辺を探れないか試してみた。すると支配者の権限はそれに応じ、この地下がどういう構造なのかを察することができた。

 ここも迷路になってはいるみたいだが、支配者としての力を有する俺はどう進めばいいかがわかる。よってそれに従い歩き出した。


 突然始まったベルンザークとの決戦。そして裏切りと覚醒……正直頭の中がまだ混乱しているくらいだったが、それでも足は前に進む……真実へと向かって。

 俺は正解の道を歩き、迷宮の奥へと突き進んでいく……また同時に考える。封印されている支配者と対面して、俺はどうするのか?


 そして、俺は迷宮内で最大の目的を果たして……何を成すのか。答えはまだ出ないが……俺は前に進む。目標としていた場所まで、もうすぐだった。


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