表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/66

真実

 光が広間を満たし、それが終わった時……俺の体に変化があった。

 突然、力が抜ける――いや、それだけではない。先ほどまで発揮していた俺の力が突然消え、膝をついてしまう。


 これは……どういう状況なのか、嫌なくらい理解できてしまった。


「成功だな」


 プレルの声。正面にいるベルンザークは――健在。


「その様子だと、どういう状況なのか理解できたようだな」


 魔族は語る……が、一つ確認しておかなければならない。


「……プレル、オーゴの件を含め全てが嘘か?」

「いや、オーゴがゼノの協力を頼んだ点は本当だ。問題は私を頼ったこと……本来ならばのらりくらりとかわすつもりだったが、君がいたのだから話は別だ」


 そう述べるプレルに対し……俺は、


「俺のことを知っていたのか……?」

「それはどのレベルの話だ? 君がファグラントを倒したことか? それとも――」


 間を置いて、プレルは告げる。


「君が望まぬ形でこの世界に降り立ったこと……か?」


 な、に……!?


 内心驚愕し、プレルへ首を向けようとする……が、この段に至り体がほとんど動かないことに気付く。


「安心しろ、すぐにトドメを刺すつもりはない」


 ベルンザークは語る。その声音は、ひどく冷静だった。


「ファグラントが滅んだことについては予定外であり、こちらとしても思うところはあるが、迷宮を支配する力を手に入れることができるのだ。必要な犠牲だと思うことにしよう」

「迷宮を、支配……?」


 疑問を呈する。答えが返ってくるかわからなかったが……ベルンザークは上機嫌なのか、口を開いた。


「この迷宮は、元々とある存在が管理をしていた。書物によればこの大陸における戦争……といっても人間ではない。我々魔族が地上と地下の軍勢に分かれ争っていた。地下にいる魔族達は、地上侵攻を行うためにこの迷宮を大陸全土に広げた。そして迷宮の全てを管理する存在は……現在その力を維持したまま眠りについている」

「まだ管理者は存在している。だが私達の手で目覚めさせることができない」


 プレルが続ける。俺の横まで歩み寄ると、こちらを見下ろしながら続ける。


「管理者はそれこそ厳重な棺で自分自身を封じたんだ……戦争が終わった際、迷宮も役割を終えたが彼自身、魔族同士の抗争が続くかもしれないと考え……そうした事態に陥った際、再び眠りから目覚めるようにした。けれど過去のような大規模な戦いは起こらず、やがて魔族は地上から追いやられこの迷宮の中で細々と暮らすようになった」

「それを打破しなければならない……私達の手で」


 ベルンザークが続ける……彼らが何をしようとしているのかは理解できた。だがそこに俺がどう関係するのか?


「結論から言おう……厳重に封じられている棺から、わずかではあるが力が漏れ出ていることに私達は気付き、その力を利用し迷宮支配を目論んだ。だが取り出せても取り込むことができなかった……研究の結果、この力を得るにはまず器に力を入れ力を魔族の力として馴染ませる必要があった」

「そこで登場したのが……俺ってことか?」


 こちらの質問に、ベルンザークは「そうだ」と応じた。


「器は力を元に用意した。だがそこに意思を宿す作業が困難を極めた。この迷宮全てを支配者する存在は、この世界に存在する同胞の意思では難しいらしい……そこで様々な次元を介し、適合する存在を探した」

「それが、俺ってことか……」


 無茶な話だった……けれど、そんな無茶な話によって、俺は今ここにいる。


「あとは貴様自身経験したことが全てだ。ファグラントを破り、ザナンを倒し……そして今私達の目の前でうずくまっている。そして魔族の器に慣れきったその力を、奪うことができる」


 ――このままでは計略通りになってしまう。けれど体が動かない。どうすればいい……!?


「プレル、始めてくれ」

「ああ、だがもう少し時間が掛かる。動きを止める魔法だけでもかなり大変なんだ」


 ――おそらく、プレルは何かしらの方法でベルンザークの管理領域の力を使い俺の体を封じ込めている。つまり迷宮そのものと喧嘩して勝たなければいけない。


 そこで俺はこの世界で目覚めてからのことを思い返す……ミーシャやレト、クローやギルフォードにファラ、シェノ、オーゴ……出会って間もない面々だが、彼らと手を組み、また彼らに協力し俺は迷宮の深部へと向かおうとしていた。

 そしてもし俺が敗れれば、彼らは――そう思った瞬間、体の内から力が湧き上がった。


「まだ抵抗するか」


 プレルが呟く。同時に俺を縛る魔力が強くなった。


「しかし終わりだ……この力はゼノ自身の力を封じるべく用意されたものだ。どのような力を持ってしても、無駄だ」

「わざわざ迷宮の力を貸してやっているんだ。このくらいのことはできなければ手を組んだ意味がないな」

「わかっているさ……ゼノ、悪いな。私も興味があるんだ……この迷宮の支配者がどういう存在なのか。そして、そうした力を得てベルンザークがどう迷宮を支配し、また地上を制圧するのか」


 俺は奥歯をギリッ、とかみしめた。魔法で縛られている……プレルの魔法は完全なものかもしれない。だが、これを破らなければこの世界の人々は――


「……まだだ」


 俺は呟く。それと同時にベルンザークは眉をひそめ、


「まだ抵抗するか……まあそちらにとっては理不尽な出来事の連続だろう。怒り狂うのも仕方はないが――」

「そこじゃない……悪いがお前達の目論見は、ここで俺が叩きつぶす」

「ずいぶんと、人間に肩入れしているのだな」


 そうベルンザークは答えた。


「元々人間だったのか、それとも情が生まれたのか……どちらにせよ無駄な話だ。例えどんな力を使っても――」


 その言葉の直後、ピシリと弾けるような音が響いた。


「……プレル、どうした?」

「いや、大丈夫。問題は――」


 俺の体の中で異質な力が生じ始めていた。目の前の存在を許すわけにはいかない……そう思った矢先、体の内からファグラントとの戦いでさえ生じなかった力が、体の中に生まれていた。

 それがどういう意味を持つのか……理解した瞬間、俺は吠えた。


 魔力が、周囲に拡散する。何事かとベルンザークやプレルが驚愕する中で俺は――ゆっくりと立ち上がる。


「プレル、何をしている……!?」

「馬鹿な……!? 魔法が制御、できない……!?」


 俺はプレルの魔法をその身に受けながら、平然と行動を開始する……どういう状況なのか、こちらは克明に理解できた。


「最大の誤算は……こんな真似をしたことで俺を怒らせたことだな」

「何だと……!?」

「俺も迷宮支配者の力がどんなものかよくわかっていなかった……けれど、お前達がこんな所行をしでかしたことで、俺の体の中にあった支配者の力が目覚めた」


 そう告げた俺は、ベルンザーク達へ告げる。


「お前達の野望は……ここで終わりだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ