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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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最奥で待つ者

 プレルから戦いが始まった報を受け、俺達も行動を開始する。迷宮の位置としてはプレルの管理領域からさらに西へ進むことになる。


「案内は任せてくれ」


 彼女はそう言って俺を先導……その途中でこちらは一つ質問する。


「ベルンザークの管理領域に踏み込んだら、俺が前に出るってことでいいのか?」

「ああ、それで頼む。無論道についてはわかっているため、きちんと案内はするぞ」


 それなら……けど、


「一直線にベルンザークの所へ向かっているとわかれば、敵も警戒するんじゃないか?」

「む、そうかもしれんな……とはいえウロウロする余裕などもないが」

「オーゴ達はそれほど長い時間戦えない……ってこと?」

「連合軍であるためそれなりに応じることはできるだろう。ただベルンザーク側の戦力は底知れないからな」


 どこまでもつのか、彼女達もわからないってことか……ふむ、けど連合軍を形成した以上はベルンザーク側もオーゴ達に戦力を傾けるはず。狙うのなら今しかない。


「さて、あと少しで管理領域外に到達する」


 ふいにプレルが発言した。


「そこを出ればベルンザークが管理する領域に突入だ……警戒はされていないだろうし警備なども手薄だと思うが、注意はしてくれよ」

「わかってるさ」


 そんなやりとりをしながら俺達は通路を進み続け……やがてプレルが立ち止まった。


「ここだ」


 以前シェノが管理する領域同様、特に区切りもなく道が続いている。


「領域に踏み込めばベルンザークは間違いなく気付く」

「現在はまだ気付かれていないと?」

「うむ。管理領域の範囲については厳格だからな。踏み込まない限り判別することは不可能だ」


 なるほどね……俺はじっと真正面の通路を見据える。

 少し先が曲がっているため奥などは見えない。なおかつ枝分かれするような道もいくつか存在している。


「さっきゼノが言ったように、馬鹿正直にベルンザークの所へ向かっているとマークされる危険性もあるな」


 プレルはさらに語っていく。


「というわけで予定を多少変更し、ちょっとばかり蛇行して進むことにしよう」

「……ベルンザークの管理領域内について、詳細はわかっているのか?」

「ああ。実を言うとこっそり潜入したこともあるからな」


 こっそり……。


「とはいえガチガチに気配を消して行動していた上に相手が警戒していないからできた所行だ。今同じことをやれと言われても無理だ」

「なるほど……それじゃあ頼むよ」

「ああ。では行くぞ!」


 声を張り上げプレルと俺はベルンザークの管理領域内に踏み込む――なんとなく彼女がいつか裏切るのではと思ったりもしたのだが、それを見越したかこちらに目を向け、


「疑っているのか?」

「……まあなんというか、今更って感じでもあるけどさ」

「もし罠であればどこかで盛大な歓迎が待っているな」

「ならとりあえず、あんたを吹っ飛ばして逃げることにするよ」

「うむ」


 冗談めかしいやりとりを繰り広げる間に俺達は突き進む。先ほどまでと通路の様相は変わっていないのだが、ベルンザークが管理する場所であるためか、魔力が濃くなった気がする。

 とはいえそれ以外で目立った変化はない……むしろ本当に相手の陣地に踏み込んだのかわからないのだが――


「こっちだ」


 プレルが指示を出す。時折ザワザワと気配のようなものを感じるのだが、基本的にこちらはスルーして相手についても反応がない。


「このまま突破できそうな雰囲気だけど……」

「油断はするなよ」


 プレルの警告。こちらはもちろんだとばかりに頷き……さらに角を曲がる。


 迷宮内自体かな入り組んでいるのもあって、俺達は現在どこをどう進んでいるのかわからないわけだが……まあとりあえず順路自体は記憶しているし、帰ろうと思えば帰れるので、もしもの場合でもどうにかなりそうだけど。

 やがて下り階段を発見。プレルは何の迷いもなく下り、俺はそれに続く。次に到達したのは広い空間だったが、魔物の姿などは皆無だった。


「完全にオーゴ達へ向かっているな」

「そのようだ……さて、そう遠くないうちに到着する。今のうちに手はずを再確認しておくぞ」


 そう述べてプレルは話し始める。


「踏み込んだ瞬間、私は即座に準備を始める。その間ゼノには時間稼ぎをやってもらいたい」

「それはどのくらいだ?」

「そう掛からんから心配はいらない……そうだな、ものの数分で終わる」


 数分か。相手の出方によっても変わってしまうからどうとも言えないけど……。


「こちらの策が発動すれば後はベルンザークを倒すだけだ」

「敵には護衛とかもいるだろう? そいつらは……」

「そこはベルンザークと共にいる敵を見てから判断するしかないな」


 ……敵の様子が窺えないのだから、仕方のない面もあるが……ま、出たとこ勝負だな。


「オーゴ達もかなり本腰を入れている以上、精鋭については間違いなく出払っているはずだ。よってファグラントを倒せたゼノならばいけるはず」

「了解……頑張るよ」


 不確定要素満載だけど、とにかくやるしかない。

 そうして俺達はさらに階段を下る。迷宮の深部へ近づいていくのが俺にも伝わってくるが……と、通路の様子も変わってくる。石造りなのは相変わらずだが、それがどんどんと硬質となり、重苦しい雰囲気となっていく。


「いよいよだぞ、ゼノ」

「わかった」


 さて、果たしてどういう戦いになるのか……そう思った時、俺達は狭い通路を抜けた。

 そこは、広々とした空間……なのだが照明が少なく奥が暗闇で満たされている。


「少し先にまた通路がある。そこを抜ければいよいよベルンザークが待つ場所だ」


 プレルが解説。目の前の闇は俺達の侵入を阻もうとしているような空気を発しており、まるで来るなと警告しているようだった。


「……ここまで気味悪いくらい敵と遭遇しなかったけど」

「完全に油断していたか、あるいは侵入者に対し自らの手で処置すると決めたか……とはいえ後者は考えにくいが」

「ベルンザークが直接手を下すような真似はしないってことか?」

「ああ、そうだ。用心深いからな……ともあれ、進むぞ」


 プレルの声音にも緊張がある。本当にいよいよ決戦なのだと思うと、俺もまた肩に力が入る。

 通路に入り、少しして……また開けた場所に出た。そこで、


「――お前達が、私を滅する刺客というわけか?」


 声が、聞こえてきた。


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