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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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決戦前

 俺はプレルと顔合わせをした後、迷宮の一室を間借りして決戦の日まで待つことになった。


 迷宮内は基本鬱屈とした世界なのだが、プレルが用意した部屋は照明となる魔法もかなり明るいことに加え、壁面などが石材でも少し見た目をよくしているなど、工夫がしてある。ついでにベッドまであるのだが……どこから持ってきたんだ?


 普通の部屋をこんなに改装するとは、どういうことなのか…・もしや、プレルの部屋なのかと考えたが、


「部屋を改装するのが趣味なのだよ」


 そう言われて俺はそれ以上何も言わなかった…・まあ、魔族にも色々いるってことだろう。そう無理矢理納得することにして、とにかく待つことになる。


「技の練習とかした方がいいのだろうか……」


 時間もあるし戦う手段を増やしておくのもいい……と最初思ったが、結局浮かばない。というよりビームが効率良すぎる。

 基本狭い通路で戦うため直線的に襲い掛かるビームは相性いいし、何より出力などを割と簡単に調整できるのも魅力。まあ無理に技を習得して自爆とかしたら目も当てられないし……というか実際にやらかしているし。


 うーん、かといって何もしないっていうのもな…・色々考えていると、プレルが俺の部屋へとやって来た。


「悩んでいるようだな」

「まあ、これから強敵と戦うことになるわけだし……時間があるのなら少しでも強くなる方法を見つけたいな」

「それについてだが、一つ提案がある」


 お、提案?


「君の能力について……先ほど確認したわけだが」


 この部屋にこもる前、俺の主な攻撃手段――というかビームについて説明はした。俺の能力を多少なりとも知っておいた方がいいし。


「あの強力な技で基本的には問題ないと思う。道中の敵については大丈夫。だがベルンザーク相手となると、そう上手くはいかないだろう」

「ファグラントとの戦いでも、最後は拳を使っていたからな」

「うむ。ただ接近戦というのも危険だし、やるにしても明確にダメージを当てた後にすべきだろう……そこで、君の技に威力を加え決定力を引き上げる」


 そう言って彼女は俺に腕輪を差し出した。


「これを手につけて撃ってみてくれ」


 言われるがままとりあえず右手につける。変化は何もないのだが……試しに右手に力を入れてみると、む……なんだか様子が違うぞ。


「外に出て試してみるといい」


 プレルの言葉に従い、俺は部屋を出てビームを撃ってみようとする……そこで明確に変化が。

 簡単に言うと、ビームを撃とうとする際にずいぶんと力の流れが違う。今まで単純に放出していたのとは異なり、手の先へ一極集中していくように思える。


「君の攻撃は迷宮の通路において逃げ場もなく非常に有効だ」


 と、プレルは語り始める。


「だがベルンザークのような存在と相対する場合、力を凝縮させた方がいい。よって放つその力を束ね、槍のように鋭くした」


 はあ、なるほど。確かにこれならいけそうだ。


「時間が多少あるにしても、新たな技法を習得するまでには至らないだろう? 君の能力はかなり高いため、こういうアレンジだけでも十分なはずだ」

「なるほど、ありがとう」

「それとこの技法は使いどころが肝心だ。威力は高まるが効果範囲が狭くなるからな。通路では普通に攻撃した方が当たりやすいし効率もいい」

「わかった」


 うん、これなら少し訓練すれば撃ち分けができるだろう。そういうわけで俺はビームについて試し打ちをしてみる。

 プレルはこの場から立ち去り、一方で俺は道具の感触を確かめる。これが通用するかどうかはわからないが、確実に強化にはつながっているし、良しとしよう。


「この道具を応用すれば、もっと戦法を編み出せそうだな……」


 例えばファグラントとの決戦では最後拳によるせめぎ合いとなった。プレルからもらったこの腕輪はビームそのものの威力を強化するものだが、これを応用すれば拳に力を集まる際も威力が高まるようにできるのではないか。


「よし、色々試してみるか……」


 大きな戦いになるだろうし、やれることはやっておこう……そう決め、俺は修行に勤しんだ。






 そうやってプレルの管理領域で過ごす間に、迷宮の状況が変化する。どうやらベルンザークが大きく動き始めた。


「オーゴが様々な迷宮管理者と手を組み始めたのが引き金になったようだ」


 そうプレルは語る……いよいよということで、俺は彼女から話を聞くことになった。


「現在領域の境では一色触発のようだ。にらみ合いという形にはなっているが、いつ爆発してもおかしくない」

「戦いが始まるのに合わせて、俺達はベルンザークの管理領域に入る……だよな?」

「そうだ。オーゴの状況がどうなっているかなどはこちらも逐一把握できるため、問題はない」

「わかった……で、俺達が領域に入ったらベルンザークはどうするんだろう?」

「せいぜい配下の魔物か魔族をけしかける程度だろう。私達が侵入したことはおそらくすぐに把握するはずだが、軍団で攻め寄せるわけではないからな。そう警戒するようなこともあるまい」

「……つまり、それほど妨害されることはないって話か? むしろ余計な戦闘はせず、一気に突破した方がいいと」

「まあそうだな。ただしここは微妙なところだな。管理領域に潜入している私達を見てベルンザークがどう判断するのか……私は研究者ってことでベルンザークも認識しているため、混乱に乗じ管理領域内になるお宝とかが狙いだと解釈してくれればまあ大軍を差し向けられるようなこともないだろう」

「それってつまり、俺達はオーゴ達と関係なくどさくさに紛れて動いているって思わせる方がいいってことか?」

「ああ、そうだ。私としてもそれを装う気でいる」


 ……まあ俺とプレルだけで動くようだし、まさか相手もベルンザークを狙っているなどとは思わないだろう。


「管理領域に入り込んだらあとは時間との勝負だ。この戦い、私と君しかこちらにはいないため、道中いかに妨害されないかが重要になる」


 ……なんか、不安要素が一杯である。けどまあ、劣勢の状況だしこんなものか。

 それより、一番重要なのは果たして俺がベルンザークを倒せるのか、ということ……プレルの策が成功すれば大丈夫――のような気はするが、確実なことは言えない。


「……ま、なるようにしかならないか」


 戦いはもう始まってしまう以上、やるしかない――そして祈ろう。この戦いによって、真実に少しでも近づけことを――


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