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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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協力関係

「えっと、オーゴさん。俺としてはこの迷宮についてわからないことが多い。その辺りの情報とか、もらえると嬉しいんだけど」

「さすがにタダで、とはいかないな」


 やっぱりか。となると渡せるものは――


「もし私にとって脅威となる存在が現れたのなら、手を貸してくれ」

「……それは構わないけど、そういう存在がいるのか?」

「少しばかり迷宮内が慌ただしくなっていてな」


 ……それ、もしかしてファグラントとかのことが関係していたりするんだろうか。


「理由とかはわかるのか?」

「私も自分の境界を離れたことがないからな。どうと言うことはできない」


 うーん、迷宮管理者はあまり世相に詳しくないのかもしれない。シェノだってあまり知識がないみたいだし。

 元々迷宮内は魔物が徘徊する以外は平和なのかもしれない。迷宮管理者同士が戦うようなことはほとんどなく、大騒動に発展するわけでもなかった。


 もっとも、ファグラントのような例もある……推測の域を出ていないけれど、オーゴが語っている慌ただしくなったという事実は、その辺りが関係しているのかも。


「ああ、いいよ。それで情報がもらえるなら万々歳だ」

「うむ、わかった……とはいえ迷宮についてそう多くの情報を持っているわけではないぞ?」


 そう前置きをして、オーゴは話し始めた。


「この迷宮には管理者を決める制度を始め、いくらかルールが存在しているわけだが……それを決めた存在が、この迷宮の主と言われている」

「言われているって……見たことはないのか?」

「おそらく迷宮管理者の大半が知らないだろう。私もそうだ」


 謎の存在ってわけか。


「この迷宮ができたのは相当前だろ? ってことは既に迷宮の主は死んでいるんじゃないのか?」

「代替わりしているのかどうかは知らないが、迷宮の主が存在しているのは確かだ」

「根拠はあるのか?」

「例えば迷宮内が何かの影響によって異常を引き起こす場合がある。魔物の大量発生や、迷宮管理領域の変化などがそれに該当する。しかし見えない力が働いて大量にいた魔物が突如消えたり、迷宮領域が元に戻ったりしている」

「それってつまり、迷宮の主には迷宮全てのことを見えていると?」

「そうだ。よって迷宮の主は存在していると私は確信している……が、君の言うとおり初代の主は既に滅んでいるだろう。しかし主の資格を持つ者は、確実にいる」


 ……仮に迷宮の全てを見通しているのなら、俺がファグラントを倒したことやザナンと交戦したことについてどう思っているのか……もし厄介者だと判断されたらまずいことに――


「君はザナンを倒したことで不安を抱いているようだが、おそらくそういうことにはならないぞ」


 と、オーゴは語り出した。


「そもそも迷宮の主は魔族同士のいざこざなどには不干渉……いや主は魔族の主であるような言い方も変だ。主そのものは魔族であってもその考え方は魔族に味方しているというわけではない。あくまで迷宮に関してだけ、干渉している」

「つまり、どれだけ暴れても基本的には無視ってことか?」

「そうなるな」

「……例えば迷宮の主が地上へ侵攻するとかは――」

「おそらくないな」


 ってことは、ファグラント達は迷宮の主とは別の存在から指示されて地上へ侵攻しようとしていたのか? いや、実はファグラント自身があの軍のトップだったってことか?


「……ファグラントって名の魔族は知っているか?」


 少し突っ込んだ質問をする。それにオーゴは反応。


「ほう、ヤツを知っているのか」

「見知った感じだな」

「距離があるため現在何をしているかは知らないが、な。ファグラントがどうした?」

「簡潔に言うと、俺はヤツを倒した」


 さて、どうなる……するとオーゴは俺と視線を重ね、


「ほう、大変興味深いな」

「……あんまり驚いている感じではないな」

「驚いてはいるぞ。なるほど、ファグラントの技量は把握している。それに打ち勝つだけの強さを持っているとは……この迷宮でも上位に位置する存在だな」


 ……迷宮管理者の言葉は非常に大きいな。それはつまり、現段階の力でも迷宮探索については十分できそうな感じか。


「しかしファグラントか……」

「何か問題が?」

「ヤツは確か、ベルンザークの一派だったはずだが……そいつとは出会っていないのか?」


 ベルンザーク? 魔族の名前か?


「そいつについては遭遇していないけど……」

「そうか。ファグラントが忠誠を誓っていた魔族で、迷宮管理者としての力も相当高い。しかも征服している領域もかなり広いため、それだけの力を有している」



 へえ、なるほど……ファグラントを倒した以上、そいつと戦う可能性だってありそうだな。


「ちなみにだが、迷宮の主のいると思われる迷宮の深部へ行くには、ベルンザークの領域に踏み込まなければならんぞ」

「あー、そうなると戦闘は確定か……しかしどうしたものか」

「ふむ、そうだな。場合によってはそれに協力してやらないこともない」


 ――思わぬ言葉。え、協力?


「ベルンザークは迷宮管理者の中でも野心が強く、管理領域を現在進行形で広げている。私のところまで到達はしていないが、領域を現在も広げるべく活動しているのなら、そう遠くないうちに戦う可能性もある」


 あ、何が言いたいかなんとなくわかった。


「つまりあれか、共同戦線ってことか」

「うむ、私としてもファグラントを打ち破ったその実力を借りて迷宮領域の確保をしたい。なおかつ、この周辺にいる迷宮管理者に協力を仰ごう」


 同盟ってことだろうか……構図としてはオーゴの連合軍とベルンザーク一派ってところか。

 果たして勝てるのかどうか……とはいえ、


「ファグラントとの戦いで相手はずいぶんと消耗した……はず。現状迷宮領域の拡大まではしていないんじゃないかな」

「かもしれないが、ヤツは配下も多いからな。むしろ部下が減らされたことにより、それを補充するべく魔力などを求め攻め込んでくる可能性も否定できない」


 そう応じたオーゴは一拍置いて、俺へ述べた。


「どのみちベルンザークが襲い掛かってきたらこちらは徒党を組まなければ勝てない。今回こうして顔を合わせて話をしたことは、そのきっかけになるかもしれないな」


 なんだか話が大きくなってきたぞ。下手すれば迷宮内で戦争とかいう可能性もゼロではない。

 そうなったら……俺にとっては有利なのか? それとも不利なのか?


「事情はわかった。こちらとしても無闇に争う必要はない……よってひとまず、手を組もうじゃないか」

「……ああ、いいよ」


 俺は色々と思案しながらも返答……警戒の余地はあるけれど、シェノに引き続き手を組むことにした魔族。これを迷宮探索の足がかりにしたいところだと思った。


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