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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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迷宮調査

 さて、俺は再びシェノと一緒に迷宮へ入ったのだが……あちこちに兵士がいて調べ回っている光景が。彼らは迷宮の構造を調べているみたいだな。


「シェノ、迷宮内を兵士達が調べているけど、そこはいいのか?」

「別にいいよ」


 ここでシェノは「それに」と付け足すように続ける。


「一番重要な部屋……迷宮管理者となるための部屋だって、管理者の任意で変えることができるから、知られても変更すればいいだけだし」

「へえ、そうなのか」


 まあ彼女がいいと言うのなら、問題もないか……そんなことを考えながら彼女と共に進む。


 通路自体は結構入り組んでおり、俺が最初に目覚めた場所と同様迷路のような感じだった。もしこれを正面突破して攻略するとなると、かなり大変だろう。襲い掛かってくる魔物達に対処しながら、迷宮管理者を探す……しかも船による移動で兵も少なく、湖からの妨害だってある。補給や援兵すらままならない状況で攻略しなければならない。うん、これはさすがに無茶だ。


 今回俺達はずいぶんと楽に制圧できたけど……人間だけで攻略しようとすると、どれだけの資源を投入しなければいけないのか。

 それに、シェノの協力も大きい。彼女の案内により短期決戦に持ち込むことができたわけだし――


 と、ふいに彼女が立ち止まった。何事かと思っていると、彼女は床を指差し、


「ここが境界」


 そう告げた。えっと、それはつまり、


「ここから先は管理外ってことか」

「うん」


 通路が真っ直ぐ続いていて、見た目に変化も何もないのだが……。


「管理の範囲はすごく曖昧で、こんな風に通路の間に境目があるのはよくあることだよ」

「そうなのか……ここ以外にも道はあるのか?」

「うん、ある。他の場所もここと一緒で通路の途中で切れている」


 この辺り、何かルールとかあるんだろうか? まあ疑問に思っても解決しようがないから、捨て置こう。


「ちなみに奥から魔物が出てきたらどうするんだ?」

「その場合は……」


 言いながら彼女は手を振る。すると目の前に半透明の壁が。けれど彼女はすぐにそれを解除する。


「こうやって結界を構築する……もっとも、迷宮管理者としての力が上回っているような存在だと、どうしようもないけど」


 迷宮内に魔族や魔物がはびこっていることから考えると、いつ何時脅威が来てもおかしくないし、彼女が敗れるような可能性もあるってことか……ふむ。


「この奥がどうなっているのか知っているか?」

「ううん、私は湖周辺の迷宮しか知らないから」

「わかった。なら少し調査してこよう」


 俺は言いながら一歩足を踏み出す。それにシェノは少し驚き、


「だ、大丈夫なの?」

「迷うようなことがない限りは。もし夜までに帰って来なかったらファラに報告してくれ」

 俺はそう言いながらシェノが示した境界線を越える。といっても感触は何もないけど。


 これまでと変わらない通路……ただもうシェノの管理範囲の外に来ているので、いつ何時魔物が現れてもおかしくない。

 もし魔族と遭遇したら――場合によってはシェノに危害を加え、新たな迷宮管理者となるべく活動し始めるかもしれない。攻略の糸口はつかんでいるのでザナンとの戦いよりかは楽に戦えるかもしれないが、できることなら人間側と手を組み味方となってくれたシェノが管理者であった方がいい。


 というわけで遭遇したら倒そう。


「ま、今日のところはあんまり深入りしない方がいいかもしれないけど」


 呟きながら歩を進める。入り組んだ道は相変わらずで、下手に角を曲がると迷いそうな雰囲気。なので、とりあえず直進していけるところまで行ってみよう。

 そういうことでずんずんと進んでいく……やがて道がやや湾曲し始めた。他の道へ曲がるようなことはせず、ひとまず道なりに進んでいく。


 シェノの手から離れた場所なので、いつ何時魔物が現れてもおかしくないはずだが……来ないな。それともこの場所は魔族が管理していないのか?


 あるいは、ザナンのように人間と戦うようなことがなければ、魔物を出さない? そういえば最初目覚めた時だってファグラントは地上へ侵攻しようとして魔物を多数引き連れていた。そういう経緯から考えると、普段はこんな感じに魔物がいない空間なのかもしれない。


「とはいえ、シェノが管理者になったら魔族側も何かしら干渉してくるかもしれないな……」


 その辺り、要警戒かもしれない……そんなことを考えながらひたすら前へ。気付けば結構な距離まで到達したのだが、先は続いている。


 途中にかなりの数の分岐があった。それを一つ一つ調べるだけでも相当な時間が掛かるだろう。しかもそれを魔物などを警戒しながらやらなければならない……膨大な時間が掛かるにも関わらず、お宝などについても望み薄……とくれば、人間側が積極的に調査する理由もない。


 迷宮については調べなければならないにしろ、そういう面で放置されていたなんて可能性もあるよな……人間側だって資源が無限なわけじゃないから仕方がないけど。


「どこにあるのかわからない宝箱を探すにしても、死と隣り合わせだからな……さっさと入口を封印した方が効率よさそうだよな」


 それに、この迷宮全てを支配するような存在は、きっと強大だろう。迷宮を探索するだけでなく、そうした存在とも戦う必要があるとなれば……うん、人間が二の足を踏んでも仕方がない。


「俺一人で攻略するわけにもいかないけど、人間側があんまり深入りしたくないのもわかるしな……」


 でも、今の俺はこの迷宮に入ることが何より優先すべきことだ。自分がなぜこんな世界にやって来たのか……それを知らなければ、この世界で前に進めない。

 まあ、全部無視して面白おかしく過ごすというのも選択肢の一つだけどさ……いや、それは無理かな。心情的に。


 色々と頭の中で考えていると、正面から風が。突風というようなものではなく、かといって外に続いているわけでもないだろう。一体何があるのか。


「広い空間にでも出るのかな?」


 そう思っているとようやく通路を抜けた。少し先には崖。その下は――


「……へ?」


 広大な地下空間――それが左右に延び、俺の声がとんでもなく響く。漆黒が空間の大半を満たし、全貌をわからなくしている。

 しかし、それ以上に注目したのは……明かりが照らされ視界に映る、真正面にあった黒い城だった。


「地底城、ってわけか……」


 まさかこんな光景が広がっているとは予想外だったので、結構驚いている。ただ収穫はあった。あそこにはおそらく、それなりに強い魔族がいるに違いない。


「この周辺の迷宮の管理者だっていそうだな……さて」


 ひとまず引き返そう……そう思い俺は城に背を向ける。とはいえ、そう遠くないうちにまたここを訪れる――そういう予感がひしひしとしていた。


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