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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話
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新技の開発

 俺は最初に敵と遭遇した地底湖まで戻る。ビームが通用しなかった時の対策として他の技の練習でもしようと思う……その場合多少なりとも広さが必要なので、ここを訪れた。


 それで改めて思うんだが……さっきの戦闘であれだけビームを撃っているのにまったく疲れるような気配を見せない。魔法を使うんだったら魔力とかそういう概念のものを消費すると思うんだが、全然減ってる感触がない。


 もしや、無尽蔵とはいかずともすごい力を保有しているのだろうか……? ただそうだからといって安心できないなあ。

 あと、腹も減らない。最初の戦闘の後に俺は水を飲んだけど、どうもその必要もあまりなさそうな感じだ。


 となると、生命維持とかどうやっているのだろうか……この体結構怖いな。

 しばらく悩んだけど……話を進めようと思い、技の開発に取り組む。


「うーん、威力のある技か……」


 ビームは遠距離攻撃が基本だし、ここはやっぱり近距離技かな? なら例えば右ストレートと共に何か力を乗っけて攻撃するとかだな。


 剣とか槍とか使えばよさそうなものだけど……確かに武器は魔法で作れそう。だが肝心の俺がそんな武器を使う能力がからっきしだ。そもそも単純に殴る蹴るだって誰かに教えてもらったことなどない。テレビか何かで見た、格闘技の真似事くらいしかできないぞ。


 とりあえず、拳に力を凝縮して殴ればいいかな? そう思い俺は右手に魔力を集めた。体は考えに応じ、右手に静かに力が集まり始める。

 試しに一度拳を放つ。うーん、威力があるのかどうかまったくわからない。


 それに、単に放つだけだったらビームとそんなに変わらない気がする。何か足したらいいかな? 例えば……風をまとわせ、相手に攻撃が当たったらその風を食らわせ吹き飛ばすとか。


 試してみよう……すると、右腕に風が巻き付いた。よし、さっきと同じように拳を放つ。


 結果、巻き付いていた風が正面に拡散した。風の塊、とでも言うべきものが真正面に生じ、やがて岩壁を打ちゴォン、と衝撃音がもたらされ地底湖の岩肌を破壊する。

 しかもその威力はどうやら俺の予想以上。壁を多いに削り、少し驚いた。


 おお、これならいけそうだな……拳と風の組み合わせ。ビームと比較して威力が上かどうかはわからないけど、全力だったら上だろう。たぶん。


 他にも色々と練習しようかなー、と思ったけど、ひとまずここまでにして少し休むことにした。洞窟内に座り込み、天井を見上げる……そういえば今何時だ?

 地上に上がらない限り明確な時間はわからないか……なんとなく勘だけど、昼くらいのような気がする。いや、俺が勝手にそう思ってるだけなんだけど。


 腹なんかは減らないし、食料とかの心配をする必要がないのはありがたいな。もしそれあったら、無理ゲーだ。この迷宮でどうやって食い物を調達すればいいのか。


 あと、眠気もあんまりない。そもそも疲労もない……魔族ということもあって、そうしたところが人間と違うのかもしれない。


「これからどうしようかな……」


 次に考えるのがこれからのこと。魔物を倒しまくったことがどう影響するのか。

 一応他の魔物に見つかっていないので、もし指揮官的な魔物と出会って尋ねられても誤魔化すことができるかもしれない。俺一応魔族だし、情報だってもらえるかもしれない。


「……とりあえず、地上への階段を見つけよう」


 休憩終了。心理的に行きたくないけど、とにかく外に出るため先へ進むことにしよう。






 再び階段を下りて三方向の道と出会う。さっき右に行ったけど……途中で引き返したからな。ひとまず右の探索を済ませよう。

 歩き出し、角を曲がる。ミノタウロスは当然いない。ある程度時間が経ったら復活、みたいなパターンではないようだ。


 さらに進み、角をまたも曲がる。似たような景色が延々と続く。代わり映えがあまりにもしないので、辟易するな。

 魔物もいないけど……うーん、さっきあんだけ倒したし、警戒してもおかしくないと思うけど……何か理由があるのか?


 色々疑問に思っていると、真正面から足音が。お出ましか。


 さて、どうなる……と、次に見えたのは先ほどビームで吹き飛ばしたミノタウロス。その巨躯から発せられる予想通りの重い足音。手に握る斧は食らったら真っ二つにされそうな雰囲気だ。


 俺はふと立ち止まる。ミノタウロスがどういう反応をするのか……まずそれを検証しよう。

 こっちが黙っていると、どんどんと近づいてくる……首がこちらに向いているので、気付いてはいるな。


 最初の虎なんかは問答無用で襲いかかってきたけど、今回は違うな。その様子から、敵か味方かを判断しているように見える。

 襲ってはこないのかな……? と、ミノタウロスは俺の前の前で止まった。


 で、視線を向けてくる。うん、ジロジロ見られているのがはっきりわかるな。

 こっちとしてはできるだけ穏便に……というわけで沈黙していると、


 ――オオオオオオオ! 


 おい、結局駄目じゃないか!


 さっきまでおとなしくしていた状況とは一変、やおら手に持っている斧を振り上げ、俺に一撃加えようとする――って、やめてくれ!

 慌てて後ろに下がった。俺が立っていた場所に斧が振り下ろされ、床の石がはじけ飛んだ。


 うん、これはまずいな――ということで、反撃!


 拳に風をまとわせる。斧を振り下ろしたことによりミノタウロスには隙ができている……少し怖いけどここしかない!


「おおおっ!」


 ちょっとばかり気合いを入れて、右ストレートを放つ。ミノタウロスは動かない。ここで――当たった!

 次の瞬間、風が拳から炸裂する。それにより通路内に旋風が吹き荒れ、ミノタウロスの巨体が持ち上がった。


 おし! そして――爆発でもするような音が耳を打ち、ミノタウロスは後方へすっ飛んでいく。攻撃は見事成功し――


 気付いたら、自分も吹き飛んでいた。


「――わああああっ!?」


 体が浮いて視界がグルグル回る。待て! 何で技出した俺まで吹き飛ぶんだよ!?

 心の中で絶叫した瞬間、地面に体が激突した。でも止まらない。うおお、バウンドしてる!


 視界がグルグル回り――結局三回バウンドしてようやく止まった……全身が痛い……。

 防御する暇もなかった……いや、こういう可能性を考慮して、予め防御しておいた方がよかったってことなのか?


 ヨロヨロと起き上がって前を見る。ミノタウロスはいつの間にか消えていた。倒したのは間違いない。威力は十分みたいだったが……うん、なんというかあれだな。


 自爆したんだ、俺。


「……風が近距離で炸裂したらこうなるのか」


 よくよく考えたら、四方に風が拡散するんだからゼロ距離だと自分も被害にあって当然か。例えば風が魔物へ一定方向に流れるとかなら話は別だろうけど。


 ……新技を開発したけど、もっと練習してからだな。少なくとも今の状況で使うもんじゃない。


 なんだか非常に悲しくなったけど、いったんこの技は封印……そう思った時、さらなる魔物の唸り声が聞こえた。


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