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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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魔族との交戦

 水中でビームを放つと、速度は平地と変わらず魔物へ突き刺さった。

 俺の攻撃により、巻き込まれた魔物は全部で三体。散発的に出現するような状況になっていたので、一時視界に魔物がいなくなる。


 このまま突撃する――そう思い俺は足に力を入れた。水中であるため動きは最初緩やかだったが、加速し一気に移動する。

 そして上部にどうやら水面……俺は即座に跳ぶように地を蹴った。同時にビームの準備をする。敵は俺の存在は気付いているだろう。水面から顔を出した直後、攻撃があってもおかしくない。


 やがて水面から顔を出し――刹那、真正面に光が見えた。おそらく魔法だけど、こっちはビームで対抗する!

 腕を突き出しビームを放つ。すると目の前の光がビームによって、吹き飛んだ。


 なおかつ光の向こう側に、驚愕する魔族の姿があった。赤い髪を持ち、どこか装飾過多の貴族服みたいな格好をした、見たところ二十代半ばくらいの男性。

 こちらと目が合った……瞬間、俺のビームに飲み込まれる!


「――ぐおおおっ!」


 雄叫び、それがダメージによるものなのか他に理由があるのか。とにかく攻撃は成功。俺は飛び出した勢いで地面に着地し、魔族を見据えた。

 ビームが途切れ姿を現す。瞬殺とはいかなかったが、それでもダメージはしっかりあるらしく少しよろけた。


「……なぜ、ここがわかった?」

「魔物がどうやって出現しているか調べていたら、偶然見つけただけさ。水中で魔法を使っているとかではなく、こんなわかりやすい方法だったとはな」


 適当に返答しながら腕をかざす。逃げられると面倒だ。さっさと片付けるに限る!


「ちっ!」


 魔族――ザナンは後退を選択した。すかさず俺は追っかけながら再度ビームを放つ。

 だがそれを相手は避けた。その動きは素早く、どうやら回避能力が高いらしい。


 む、このままだとまずいのではないか……そんな考えを抱きながらなおもビームを放つ。今度はまともに直撃する。

 二発食らったら、さすがに――と思っていたのだが、ザナンはまだ健在。そして洞窟の出口に到達し、視界から消えた。


「げ……」


 逃がした。いや、まだ追える。

 即座に足に力を入れて駆ける。洞窟を抜けるとそこは以前もあった石造りの迷宮。道は左右に伸びており、左にザナンはいた。


「逃がすか!」


 跳躍する勢いで地を蹴る。するとザナンとの距離がグングン縮まっていく。

 それを相手はどう感じ取ったか――どうやら逃げられないと判断したらしい。途端、その体に魔力がまとわりついた。


 おそらく、迷宮管理者としての力を行使し、迷宮に眠る力を用いて俺を倒そうと動いた。肌で感じる魔力は確かに魔物や水竜などとは比べものにならないほどのもの。

 とはいえ――確実なことが一つ。


 その力は、明らかにファグラントよりも下だ。


「死ね!」


 喚きながらザナンは力を発揮する。さして広くない迷宮の通路を覆う圧倒的な光。それが俺へ発射され、視界が真っ白に染まる。

 それに対し俺は再度ビームを放つことで応じた。すぐさま白がこちらのビームによって弾かれ、力を一気になくしていく。


 同時に俺は目を凝らすように力を入れる。ザナンはどう動くか……力を発揮した直後、距離を置いた。どうやらこの白い光を煙幕代わりにして退散するらしい。

 迷宮管理者としての力を使っても逃げの一手か……ビームの威力を思い知って逃げるべきだと判断したのか? でもビーム二発に耐えられるだけの能力を持っている。そこに管理者としての力が加算されれば、俺に挑めるだけの力にはなるはずだけど。


 疑問はあったがとにかく追いすがる必要がある。俺は全身に力を入れて白い光を強引に突破する。ビームである程度相殺されたためか、光は俺にまとわりつくとあっさりと消え……抜けた先に、距離が縮まったザナンの姿が。


「ぐ……!」


 うめき声。これでも駄目か、というような雰囲気。

 このまま押し通す……そう決断してさらに足に力を入れる。それによりさらに近づく間合い。そこで俺はビームを撃つ。狭い通路、こちらの攻撃も逃げ場はないだろう。


 するとザナンは腕を振った。それにより生じたのは盾のような結界。淡く紫色に輝いたそれで、俺のビームをガードした。

 結果は――軋むような音が聞こえると同時に割れる音。結界を吹き飛ばしたのだと自覚すると同時、ザナンからさらなる声が。


 終わったかと一瞬考えたが、まだだ。なおも相手は後退しながら俺をにらみつける。

 たぶんビームを完全に防げないと確信し、威力を削る目的で結界を構築したのだろう……そこで相手は角を曲がる。即座に追随すると、その奥に広い空間が見えた。


 どうするつもりだ……疑問に感じながら通路を抜け、広い空間に。そこは俺達が通ってきた道以外に通路はなく、完全な行き止まりだった。

 けど俺は追い詰めたとは思えない。ここに誘い込んだ、あるいはここに到達することが目的だったと解釈して構わないだろう。


 こちらは沈黙を守り、ビームをいつでも撃てる準備をして佇む。相手もまた動かない。こちらを警戒し、それでいて両拳に力を入れる。

 その時、ザナンが両手を左右に広げた。こちらが反応してビームを撃とうとした矢先、相手の体が光に包まれる。


「――ここまで追い込んだことは褒めてやる」


 そう語るザナンの気配は、どんどん濃くなっていく。


「だがここで終わりだ……後悔するがいい」


 俺はその言動から一つ推測をする。迷宮管理者の力……それを本格的に使ったのだろう。

 これまではあくまで一部分しか利用していなかった。いや、例えば動きながらでは完全に力を行使できなかった、と解釈するべきか。


「……本来ならこうなる前に仕留めたかったわけだけど、仕方がないか」


 俺は小さくため息をつく……まあ相手が上手だったか。


 思えば逃げる相手にどう戦うかとか、あまり考えたことがなかった。目覚めた直後についても基本敵は向かってきたし、それにどうやって応じるかだけを考えれば良かった。今回みたいに逃げ一択という相手には、相応のやり方が必要ってことだろう。


 ま、後悔しても仕方がない。俺は一度深呼吸をした後、ビームを撃つべく手のひらに力を集める。


「悪いが、ここで終わらせてもらう」

「それはこっちのセリフだ」


 ザナンの声には怒気が混ざっていた。


「魔族……貴様がなぜ人と手を結んでいるのかは聞かない」


 ――この口調だと、俺がファグラントを倒したことは知らないってことか?


「問答する気もまったくない……この私の邪魔をした事実。それだけで、万死に値する」

「徹底的に邪魔させてもらうさ。あんたの戦いはここで終わりだ」


 断じた直後、この広い空間をギシギシと言わせるほど魔力が膨れあがった……これが、迷宮管理者の力か。

 とはいえ、俺の心に恐怖などはない。ファグラントと戦った時の絶望感もない。その理由は――


「……勝負だ、魔族」

「滅びろ」


 宣言と共に駆けるザナン。それに俺は応じるべく、足を踏み出した。


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