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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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湖の中へ

 翌日、いよいよ決戦開始日。


 シェノは分身体を維持したままでログハウスにいる。彼女によるとザナンはまだ動いていない。こっちが仕掛ければ動くだろうとのこと。


「ちなみにシェノ。君の本体はどこにいるんだ?」

「迷宮内のとある部屋。誰も入れないようにしてるけど、ザナンくらいの能力ならあっさりと壊される」

「隠れてはいるんだな?」

「うん」

「わかった。水中にある迷宮の入口位置も教えてもらったから、そこで待機していてくれ」


 俺達は外へ。既にファラが準備を進め、最初の戦いと同じく魔術師達が魔法準備を始めている。


「ゼノ殿」


 彼女が近寄ってくる。俺が「ああ」と応じると、ファラは笑みを浮かべた。


「頼むぞ」

「ま、やれるだけ頑張るさ」

「その意気だ」


 ファラが去って行く。俺は移動し、湖面近くへ向かう。


 さて、この戦いが長引くかどうか……それがこの一戦に掛かっている。もし失敗すればザナンとかいう魔族は逃げるか雲隠れする可能性が高い。

 まあシェノという情報提供者がいる以上は、迷宮内の状況とかを教えてもらうことで上手く立ち回ることもできそうだけど……短期決戦の方が俺としても都合がいいし、できればこの戦いで決着まで持っていきたいところ。


 ファラ達の準備がいよいよ終わる。俺はそれをやや離れた位置で見て、


「シェノ、確認だ」

「うん」

「現在水中に魔物とかはいないな?」

「いないよ」

「なら、ここで俺は消えておくか」


 透明人間的に、姿を見えなくする……昨夜の時点でこれについても使えることは確認済み。


 敵が魔物の目を通して状況を把握しているのなら、姿を見せなければおそらく問題はないはず。というわけで魔法を使って……といってもなんとなく意識するだけなんだけど、とりあえずこれで透明にはなれた。


「始めるぞ!」


 ファラの声。見れば兵士達が槍を握りしめ、さらに魔術師が魔力を集め始めた。

 それにより、大きな光の光弾が生まれる……先日と同じような形による挑発行為だが、今回は乗ってくれるのか。


 光弾が放たれる。それが水面を打ち轟音を生み、水しぶきが湖面を大きく揺らす。

 さあどうだ……沈黙しているとシェノから声がした。


「魔物が……動き出した!」


 挑発は成功か。再度ファラが指示を飛ばした時、湖から魔物が姿を現した。

 前と同じく半魚人的な魔物だが……今回は数が多い。しかも湖岸の広い範囲にかけて上陸してくる。


「なるほど、ファラを直接狙うのではなく、兵士や騎士の数を減らすつもりか」


 俺は魔族の意図を理解する……水竜を作ってもファラに倒されるのだから意味はない。よって質より量……数で押し込み、ファラ以外の兵士や騎士を倒していくという目論見。


 これはファラとしても地味に面倒。下手に犠牲者が出れば戦力低下だけでなく、国側から色々と言われるかもしれない――大きな犠牲ともなれば責任問題とかに発展する可能性だってある。魔物との戦いよりも人間側のゴタゴタにより戦力が低下する……魔族ザナンがここまで計算しているのかは不明だけど、とりあえずこっちとしては厄介な手だ。


 戦線も拡大し、兵士達は大変そうだが……透明になった俺の横を魔物が通り過ぎる。シェノも魔法か何かを使って気配を殺しているため、俺達の存在はまったく気付かれていない。


「よし、行くぞ」

「うん」


 行動開始。シェノを案内役として、俺は湖へ歩み寄る。

 そして水面に足をつける。しかし濡れない。既に結界は構築済みなので、そのまま少しずつ入っていく。


 浮いたりすると面倒だったのだが、足に少しだけ力を入れて浮かないように処置。水中を歩いた方が効率よさそうだったからなのだが……うん、泳ぐよりもいいな。


 水中は当然ながら下に行けばいくほど暗闇が広がっている。湖はずいぶんと深く……少し進むと、坂ではなく断崖とでも言うべき角度で下に続いている。

 しかもそこは完全な暗闇。魔法を使えば視界の確保ができそうだし、とにかく行くしかない。


 意を決し俺は湖底を蹴って飛び込むように湖の底へ向かう。その間に少しばかり目に力を入れてみると……暗闇の中でも視界が確保できた。赤外線スコープとかをイメージしたのだが、そんな感じだ。

 下へ進む間も周囲に魔物の姿がある。どうやら断続的に魔物を生み出しているらしく、こっちの存在を勘づかれたら一斉に襲い掛かってきそうだ。


 気配を殺しながら、俺はひたすら下降し……やがて足がついた。少しばかり土砂などが舞い上がったが、気付かれた様子はない。

 シェノも隣へやってくる。彼女はこっちだと言わんばかりに正面を指差すと、俺は頷き歩み出す。


 少し目を凝らすと少し離れた場所に壁がある。ただその一部分から魔物が出ている……どうやらあそこが入口のようだ。

 ここまで来れば、俺一人でも問題無さそうだな……シェノの分身はどうするのか。ひとまず彼女は俺の案内を続けている。頃合いを見計らって姿を消すのかな。


 程なくして俺達は魔物の出現地点近くに。注目すると魔物はそこから出てきている。あの先に水中から脱するポイントがあり、そこでザナンが魔物を生み出しているわけだ。

 俺はシェノと目を合わせる。彼女は小さく一礼すると、静かにこの場を去って行く。


 失敗した時のことを考えて、ザナンに顔を見せるわけにはいかないからな……俺は周囲を警戒しながらそちらへ近寄る。まだ気付かれていないけど、これ以上接近したらどうなるかわからない。

 あと、敵の戦法によってファラは動き方を変えると言っていた。魔物を倒し続ければそれだけ増援がやってくるわけだけど……つまりザナンも延々と魔物を作り続けるわけだ。できることなら魔物が途絶えた状態で仕掛けたいけど……まあここまで来たのだ、やるしかないか。


 俺は静かに、魔物が出現するのを捉えながら進んでいく。結構な頻度で魔物が出現しているわけだが……少しずつ、数が少なくなっていく。

 上の状況に変化があったのか、それとも……疑問に思いながらも俺は進む。そうしていよいよ入口近くになって、俺は姿勢を落とした。


 魔物には気付かれていない。透明になっている状態がまだ通用しているが……入口周辺には魔力がある。たぶん魔法によりバレるのは間違いない。

 少し心の中を落ち着かせる。ファグラントを倒した実績がある以上は、ザナン相手でも十分勝機はあるはず。とはいえ失敗が許されない状況――絶対に成功させないと。


 よし……! 胸に内で一つ呟いた後、俺は足を踏み出した――突入する。

 魔物はなおも散発的に出現し続ける。しかしこちらのことは気付いていない。


 場合によっては水中でビームを放って……そんなことを考えた直後、魔物の一体が止まった。

 透明になっていても水中に土砂が舞い上がっているからだな……どうやらバレたらしい。


 行くぞ――心の中でつぶやきながら俺は魔法解除。途端魔物達がこちらへ向かって動き始め……いよいよ、戦闘が始まった。


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