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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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魔族の居所

 ひとまず魔物はこれ以上出てこなかった。しかし肝心の魔族は姿を現さないし、戦いは続く。なるほどこれは確かに厄介だ。

 水竜を操っていた魔族を探すべきなのだが……気配を探っても湖の中にはいない。やっぱり島にいると考えるのが妥当だろうな。


 ファラが湖岸に降り立つ。兵士達が歓声を上げる中で、彼女は俺に近づいてきた。


「最後の攻撃、見事だった。まさか一撃とは」


 そこまで言って、彼女は「ふむ」と一つ呟き、


「いや、魔族の大幹部を倒したのだ。実力の一端と考えるのが妥当だな」


 ハードルを上げてくるなあ……ま、俺の実力なら水竜は一撃ということがわかったので、よしとしよう。


「魔物は撃破した……本当なら魔族まで引っ張り出したかったが、そう上手くはいかないようだ」

「威力偵察って可能性もあるな」

「こちらの挑発に乗ってきたのだから、その可能性もゼロではないだろうな」


 言いながら彼女は兵士や騎士に指示を送る。


「で、これからどう動く?」

「……今回の戦いで、ゼノ殿はどの程度状況を把握した?」


 試されているのかな。俺は少し考え、


「まず、方法はわからないけど魔族が俺達を見ている。少なくとも戦況を把握するくらいには。それと同時にあの魔物達は魔族が操り、指示を出していた」

「根拠は?」

「水竜が一度目と二度目の戦いで戦法を発展させてきたからな。例えば水竜の判断に任せ動くのとは異なる、明らかに一体目の撃破方法や回避方法を考慮して、戦術を組み立てている節があった」

「うん、私もそう思う」

「あとは、そうだな……未確定だけど、魔族は一度に使役できる魔物の数に限界があるんじゃないか? 水竜を二体同時に使役した際、他の魔物がいなくなったからな」

「確かにそうだな」


 うんうんと頷くファラ。


「ゼノ殿は状況分析能力も確かだな」

「そこまで大したものじゃないと思うけどな……操っていた魔族を倒したいところだけど、さすがにそれは無理って感じなのか?」

「居所がわからないからな。水中にしろ島の中にしろ、手出しができない」


 ファラ自身は相当強いけど、さすがに魔物の巣に単独で足を踏み入れるのはリスクがありすぎるか……。


「よって、現段階で対応をこまねいているわけだ。時折今回のように魔族をけしかけ戦うのは、ゼノ殿が言ったように魔族は一度に使役できる数に限界があると推察してのこと。倒せばしばらく魔物が出現しなくなる。今回はやり方を変えてみたのだが……それでも魔族までは出てこなかったな」

「奇襲されるより、こっちから挑発してわざわざ戦うのか……そもそも魔族が挑発に乗るのは、理由があるのか?」

「わからない」


 肩をすくめるファラ。目的……がありそうな雰囲気でもないな。こっちをおちょくって楽しんでいるって感じだろうか。

 ファグラントのように明確な目的もなさそうだし、この魔族はある意味面倒そうだな。


「なあ、魔族の居所さえわかれば、状況が進展するのか?」


 なんとなく問い掛けてみる。すると、


「場所によるな。島の中にいれば私達も手が出しづらい。以前同じ見立てをして捜索してはみたが、見つからなかったことから島か水中だと思うのだが」


 俺はファグラントとの戦いを思い出す。最終決戦を前に大軍勢を突破したわけだが、迷宮の中にずいぶんとたくさんいた。距離があると操作できなくなるとか、そういうわけでもなさそう。よって島にいると考えるのが妥当か。

 ファグラントと同じような魔法を使っているのかわからないけど……ともあれまずは魔族の居所を見つけないといけない。


「ちなみに、捜索方法はあるのか?」

「あったらとっくに事態を進展させている」


 ごもっとも。とはいっても俺にできるのかわからないけど。


 試しに湖へ目を凝らしてみる。意識を集中させると湖の中にある魔力を薄いながら感知することができる。

 とはいえそれは魔物ではない。たぶんこの湖に元々存在しているものだろう。


「うーん、湖の中にはいない雰囲気だな」

「わかるのか?」

「なんとなくだけど……あ、俺の喋ったことは話半分に聞いてくれ。こっちも確証があるわけじゃないから」

「わかった」


 俺の言葉を真剣に聞く様子のファラ。さっきのビームを見て、色々思うところがあった様子。

 とはいえこちらに頼ってくるって雰囲気でもないな……俺は俺で独自に立ち回って色々やるべきか。


 とりあえず目標は決まった。まあ魔族を見つけるとか無理ゲーかもしれないけど。


「私は被害状況を確認してくる」


 ファラは告げ、この場を立ち去る。俺はそれを見送りながら、とりあえず調べてみるかと思い至った。






 その後、ファラの話によるとけが人はいたが死者はゼロだったらしい。最後の攻防で俺が介入しなければ下手すると被害が出ていた……そんな感じに説明された後に礼を言われ、俺は不思議な心境を抱きながら「どうも」とだけ返事をした。


 で、俺は湖岸周辺を歩き回りながら、魔族の動向を探る。魔物を操っていたのだから、近くにいてもおかしくないけど……まあ島にいたとしたらさすがに判断できないし、戦いが不調に終わって島にある迷宮の奥に引っ込んでいる可能性だってある……望み薄だが、念のためだ。


 かといって、この調子でいくといつまで経っても島に踏み込んで迷宮を封印とかは夢のまた夢だぞ……俺一人突っ込んで迷宮内を掃除するか? あ、でも封印処理には半日かかるって言っていたか。そこまで支えきれるかどうか……俺の能力ならと考えるけど、味方を守りながらだからな。あんまり良い賭けとは思わない。


 まあここを訪れて二日だし、もう少し様子を見てもいいか……目的はあるけど、特別急いでいるわけでもないからな。


「さて、どうしようか」


 俺は一つ呟きながらなおも歩き回る。戦闘は終わったことだし一度ログハウスへ帰ることにしようか。

 周辺を見回すと、騎士や兵士が話し合っている姿なども見受けられる。聞き耳を立てると連携とか戦い方とか、そんな声が聞こえてきた。魔物に対抗するため、兵士が騎士から教えを受けているのかな?


 その表情は結構明るい。犠牲者がいなかったから。雰囲気もずいぶん和やか。油断はできないしこういう勝った時にこそ気を引き締めるべきだと思うが、かといって肩に力が入ったままだと疲れるからな。あんな感じが丁度いいんだろう。


「ひとまず休ませてもらうか」


 俺はログハウスへ戻るべく歩き出す。その途中でファラの姿を見かける。どうやら騎士達と打ち合わせをしているらしい。その話を聞いてもよかったのだが……俺は近寄ることはせず、ログハウスへ入った。

 さすがに今日は食事の席を共にすることもないだろう。昼寝でもするか。


「敵襲があったらさすがに気付くだろうし……」


 そういうわけで横になる。なんだか緊張感無いけど、このくらいの贅沢はさせてもらおう。


 やがて俺はベッドに寝転がり、目を閉じる。心地よい気温だからなのか、あっさりと眠ることができた。


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