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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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水竜撃破

 水竜が新たに出現し――俺はふと疑問を感じた。水竜が二体。先ほどの一体と合わせ、戦力を一気に注げばよかったのでは……わざわざ逐次投入をしている。

 次いで二体目が姿を現すと、俺は湖周辺を眺める。サハギンは現れていない。竜がいるからという解釈もできるが……もしかして、


「一度に制御できる魔物の数や質に、限界があるのか?」


 水竜を二体同時に操ると、他の魔物の制御ができなくなるとか……そんな推測を行った直後、水竜二体がファラへ向け首を伸ばした。

 どう見ても同時攻撃を仕掛けようとしている……果たしてファラは耐えきれるのか?


 光弾が同じタイミングで発せられる。なおかつ水中からも光が……先ほどは回避できたファラだが、俺はなんとなく相手の目論見を読み取った。


 さっきファラが難なく避けたことから考えて、数で回避できる空間そのものを潰す……先ほどの水竜の戦法とは違う。二体同時に襲来したことからも戦術が変わっていると解釈できるが、確実にファラに対応している。

 とすると、考えられるのは……魔族がどこかでこの戦いを見ている。ただ俺の方には干渉してこない。俺を知らないのか? それとも――


 水中から光弾が襲来する。先ほど以上の数。もしあれを全てかわしたとしても、今度の雨は相当な規模だ。周辺の騎士や兵士もすかさず頭上からの攻撃に備えろと指示を出し始める。


 だが、それは杞憂だった。


 ファラはそれでも身をひねり、見切って光弾を避けた――次の瞬間、凄まじい爆音と閃光が生じた。

 目をしかめるほどの光に加え、耳を塞ぎたくなる轟音。さらに爆風すら生じ、周辺の砂塵を巻き上げ兵士に悲鳴を上げさせる。


 何が起こったのかは即座に理解した。ファラが回避したとわかった瞬間、水竜が光弾を爆発させたのだ。

 雨は彼女に通用しない。となれば爆発による衝撃で彼女を倒そうと……元々これが狙いだったのかもしれない。


「大丈夫なのか……?」


 呟きながら俺は神経を研ぎ澄ませる。彼女がどこにいるか、探知できないかと思ったのだ。

 まだ光が生じているため、目を凝らしても見えないが……意識を集中させてみると、彼女の存在を空中に感じた。まだ存在感もある。彼女は無事だ。


 やがて視界が晴れる。そこにいたのは、なおも水竜と対峙するファラの姿。彼女は剣を構え、次の攻撃準備をしていた。


「甘いな、竜よ……いや、こいつを操っている魔族、貴様が甘いと言うべきか?」


 挑発的な言動と共に、彼女は剣を振る。先ほどと同様の巨大な剣。それを容赦なく水竜へ放った。

 片方にそれは直撃し、体を傾けさせる。だがもう一方が黙っていない。頭部を動かし、牙をむき、彼女へ迫る。


 喰らおうとしているのか……ビームで援護しようと手をかざした瞬間、彼女は剣を引き戻し真正面から頭部の突撃を、受けた。

 空中で押し戻される彼女の姿。そして次なる攻撃のために、さらに魔力を体の奥底から発する。


 どうする気なのか――事の推移を見守っていると、頭部を受ける剣を、無理矢理振り抜いた。斬撃により動きが止まる水竜。だがもう片方がそこへ狙いを定め同じく牙をむく。

 これでは防戦一方……そう思った矢先、彼女が動く。押し戻したことによりわずかに水竜の圧力が緩んだ。その隙を突いて彼女は一気にその場から離脱する。


 だが後退したわけではない。一気に横に回る。水竜はその動きについていけなかったようで、彼女を一時見失った。

 それを、ファラは見逃さなかった。横からの剣戟。それを直撃した水竜は、大きくグラリと傾く。


 とはいえ、決定打にはならない。魔力を噴出して威力を底上げしているみたいだけど、ファラ自身水竜を一撃で倒すほどの力は持っていないか――


「ふっ!」


 しかしファラは構わず攻勢を続ける。今度はラッシュ。怒濤の攻めで水竜の一体を確実に傷つけ、大いに動きを鈍らせる。

 これならどうにか……考える間に水竜が仕掛ける。口を大きく開け、今度は光弾を放とうとする。


 それは二体のうち、ファラから見て後方の水竜。前方は彼女の攻撃を一身に受け続ける……水竜が自然とやったのか、それとも魔族が操作しているのか。

 まあどこかで魔族が水竜を操っているのはほぼ確定だろう。問題はそれをどうやって見つけるのか……水中とかにいるんだろうか?


 水竜の一体を剣戟で横倒しにしたファラを見ながら、俺は水中に視線を送る。例えば水竜の光弾を光ではなく魔力的なもので感知できるのだから、もし魔族がいたら発見できる……かもしれない。

 じーっと目を湖へ向ける。水竜の体からどうやら魔力が発せられているようで、それを感じることはできる。けれど、気配はそれ以外にない。


 とすると、湖の中ではなく島にいてそこから指示出してるってことかな? そうなると例えば魔族を倒して水竜の動きを止めるとかできないから、面倒だな。

 まあ構造的に魔族が籠城しているようなものだから、厄介なのは至極当然なんだけど……と、色々考えていた時、ファラの斬撃がさらに水竜へ決まった。


 攻撃を一身に受ける水竜がとうとう限界を迎える。いくら耐久力があっても立て続けに何度も剣を食らい続ければこうなるか。

 で、当然片方が潰れればもう片方も……そこで、水中から新たな気配を感じ取る。また水竜っぽいな。何体いるんだ。


 俺はどうしようかな……静観しててもいいけど、ここいらで少しは活躍しないと何しに来たんだって言われそうだ。

 とりあえず水中にいるらしい水竜に狙いを定めるか。ファラはここで湖面を一瞥。たぶん気付いているな。


 迫ろうとしている一体とは別に後衛の役割を果たしていた水竜がファラへ仕掛ける。だが彼女は即応し、大きく横へ跳んで突撃をかわしてみせる。

 彼女の動作についていけない水竜は、またも彼女の剣を受ける……ここでいよいよ三体目の水竜が迫ってくる。おそらく水中から脱した途端ファラを食らおうと襲い掛かるだろう。


 魔族が操っているなら、その狙いは正確なはず。彼女もすぐに反応して避けると思うけど……よし、ならば。


 俺は右手をかざす。静かに力を溜め始め、攻撃準備を整える。

 まあビームを当てたとしても一撃で倒さなければいけないってわけでもないだろう。水竜の頭にでも浴びせて動きを止めればファラが動ける時間を稼げる。よし、それでいこう。


 準備を終え、しばし。ファラが二体目の水竜と決着をつけようかという時に――三体目が水中から脱した。

 兵士が叫ぶ。狙いは予想通り正確で、空中に立つファラの真下から現れた。


 そこへ、俺がビームを放つ――!!


「食らえ!」


 ちょっと気合いを入れてみたりして――真っ直ぐ放たれたそれを見て、兵士や騎士が驚くのがわかる。

 ファラは読んでいたのかすぐさま回避に転じ――そこへ俺のビームが到達。ファラがいた場所に到達しようとした寸前、ビームに水竜の頭部が飲み込まれ、消滅した。


 あ、加減を間違って仕留めてしまったか――まあいいや。


 そして彼女は剣を振り、最後に残った水竜を撃破する……俺が出しゃばらなくとも問題なかっただろう。

 聖騎士団の隊長の実力は間違いなく本物だろう……前線指揮官でこれなのだから、彼女より上の聖騎士はどれほど強いのか。


「……あのギルフォードって人も相当強いのかな」


 その実力を確認できる日は来るのかどうか……考えても仕方がないかと思い、俺は消えゆく水竜をじっと眺めた。


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