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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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騎士の実力

 天へと伸びるように直立した水竜はまず、口を大きく開け息を吸い込んだ。

 ゲームで言うところの、ブレス系の攻撃か。単に息を飛ばすだけではないだろう――と思っていたら、口の中で何やら青いものが生じ始める。


 冷気? それともそういう色をしているだけか――次の瞬間それが勢いよく放たれる。見た目は青い光弾。それに対しファラは、水竜へ駆けた。

 刹那、彼女が立っていた場所に光弾が直撃する――炸裂音と地面が抉れる光景。土砂が舞い上がり、近くにあった木の一本は巻き込まれ根元が消失。横倒しとなった。


 ファラは怯む様子もなく突き進んでいく……その勢いは湖の中まで突っ走るくらいのもの。水竜は巨体であることに加え湖から出ていない。どうするのか。

 疑問に思った矢先、今度は水中から光が。まさか、と思った直後湖面にそれが上がってきて、地上へ飛び出した。


 それは水竜が口から放ったのと似たような青い光弾。いくつも水中を脱し、ファラに狙いを定め飛来する――!

 彼女は即座に反応し回避に転じる。だが足は止めない。彼女の横を光弾が抜け、地面に着弾。破裂し土砂を巻き上げる。


 威力は最初の光弾と比べれば低い。だが次々と地面を打つ光弾は、他の兵士や騎士の介入を妨げている。実質ファラと水竜の一騎打ちだ。

 とはいえ、湖に入るのは……考えた時、彼女は迷いなく水面に足を踏み出す。


 すると、水の中に入らないまま、足が水の上に乗っかった。魔法か何かで水の上を歩くことができるらしい。

 これなら近づくことは可能だが……と、さらに水竜が口を開けなおかつ水中に光が。光弾をかわし、水竜へさらに近づくことができるのか――


 そこでファラは跳躍した。さらに空中に足場があるかのように着地する。ほう、空中歩行もできるのか。

 ちょっと驚いた時、とうとう光弾が水中から脱する。だがファラはその動きを見極めているらしく、空中でさらに跳躍し、回避する。


 水竜は口から光弾を放ち――水中に当たることで爆ぜ、ど派手な音と水が大いに噴き上がる。それは空中にいるファラを一時見失うほどのもので……なおかつ水中から放たれた光弾は天へと上っていく。

 ファラは傷一つ負っていない。そして、


「はあっ!」


 掛け声と共に放たれた剣戟は、水竜の鱗を捉える。まともなダメージはあるのか……ファラはそのまま振り抜き、ザシュ、と乾いた音を立てた。

 斬撃はどうやら魔力を伴い威力を増加させていたようで、今度は彼女の剣により魔力が爆ぜる。鱗を吹き飛ばし、さらに水竜の胴体がグラリ、と揺れた。


 周囲の兵士から感嘆の声が上がる。だが水竜も黙ってはいない。即座に反撃しようと口を開け、


「食らえ!」


 そこへファラが左手をかざした。それと同時、手先から白い光が生まれ、光弾と化し水竜よりも早く射出する。

 それは竜にとってみれば極小の光……だが口の中に入った瞬間、水竜が集めようとしていた魔力を相殺し、爆音をもたらした。


 のけぞる水竜――直後、天へと上っていた水中からの光弾が、上空で爆発した。


「来るぞ! 回避に移れ!」


 騎士の一人が兵士へ指示する。サハギンはなおも出現していたが、兵士や騎士達は守勢に回り上空を警戒する。

 何事かと思っていると、騎士の一人がこちらへ叫んだ。


「光弾の魔力が針のようになって降り注ぎます! 回避を!」


 ああなるほど、二段構えの攻撃なのか。納得しながら空を見上げると――飛来してくる青い光。

 それはまさしく雨。少し体に力を入れて攻撃を防ぐように体を魔力で守る……と、降ってきた。


 青い雨は地面に突き刺さると少しの時間の後、消えて無くなる。騎士が語ったように地面に突き刺さる様は針のようであり、光弾が爆弾ならこの雨はさしずめナイフだろうか。

 兵士や騎士達はサハギンを警戒しながら魔法で回避している。一方水竜と交戦するファラは雨にも構わず竜へさらに一太刀入れる。さらに体が揺れる竜。そうした中で竜は反撃しようと口を開けた。


 だが今度は先ほどと異なり、体全体も光り輝く。何をする気なのかと思った直後、ファラの気配が強くなった。


「させるか!」


 声が聞こえる。そして彼女は剣を大きく振りかぶると、その刀身が、伸びた。

 いや、それは魔法で剣を包み巨大化させたと言うべきか。わずかに溜めの時間が生じた後、水竜が仕掛ける前に横薙ぎを放ち――それが、竜へ直撃する!


 今度の衝撃は大きかった。水竜は吠え姿勢を維持しようとしたが、それも叶わず。さらに傾き始めた竜の胴体へ向け追撃をファラは加える。上段からの振り降ろし――


 それもまた抵抗できない竜へ当たる。竜はとうとう体勢を崩し、湖へ横倒しとなった。

 盛大に水しぶきが上がる。なおかつ先ほどまで発光していた体も収まり、大きな隙が生じた。


 ファラがさらに仕掛けるべく突き進む。だが水竜も黙っていない。首を動かし彼女を食らおうと、口を大きく開ける。

 そこへ目掛けファラの剣戟が炸裂した。頭部に振り下ろされた剣。水竜はそれをまともに受け、一瞬両者の動きが完全に止まる。


 彼女が勝つか、竜がはね除けるか――結果は、ファラの勝利。振り下ろした斬撃により水竜の首は大きく曲がり、さらに彼女は横一閃に剣を決める。


 巨大な相手ではあるが、ファラはノーダメージであり一方的な展開。これが最前線で隊長をやっている騎士か、とどこか感心する中で、彼女の刃が竜の口の中を貫いた。

 竜がか細い雄叫びを上げる。いや、それは悲鳴かもしれないが……ともかく彼女の剣により、とうとう水竜が消滅し始めた。


 ――その実力は、間違いなく本物だ。無傷で切り抜けると共に圧倒的な存在を倒せるだけの力。さらにこの結果により周囲の兵士達が歓声を上げる。

 と、さらにサハギンが出現。雨もなくなり士気も上がった兵士と騎士は、連携で確実に潰していく。


 一方でファラは空中に立ち湖面を見据える。まだ水竜が来ると踏んでいるんだろう。

 彼女が警戒役なわけだが、佇む彼女を見て兵士達も奮起する。サハギンを倒す速度が増し、やがて波打ち際に存在していた魔物の姿が、消えた。


「……終わったのか?」


 兵士の一人が声を上げる。だがそれに答える者はいない。しかし以降もサハギンが出ないことを理解すると……勝ったのだと、兵士が声を上げた。

 俺は、湖を見ながら考える……これで終わりか?


「まだ何かありそうにも思えるけど……」


 呟いた直後、湖が若干波打つ。それに気付いたか兵士達の声も止まる。


「――総員! 退避を開始!」


 そこでファラが叫んだ。


「もう一度来るぞ!」


 それにより兵士や騎士が動き始める。俺はなおも湖を見つめるファラの姿を眺めながら、湖へ目を凝らし魔物を捕捉できないか試してみる。

 普段、水竜は湖の奥底で眠っているのだろう。そこまで俺も気配を探ることはできないみたいだが、徐々に気配を感じ始める。


「来ているな……しかも」


 一つ確信する――間違いなく一体じゃない。二体だ。

 ファラはどうする気だ? 疑問に感じ視線を送ると、彼女は俺へ首を向けていた。


「兵士や騎士の護衛を」

「……そっちはわかっているのか?」


 疑問に対しファラは頷いた。


「ああ。私がやる」


 宣言した直後、水竜の一体がとうとう姿を現した。


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