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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話
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新たなフロア

 時間にして、およそ十五分くらいだろうか。調べ終わりました。


 結論、無い。

 上り階段が無い! それどころか最初に見つけた下り階段以外に進む道が無い!


「おい、嘘だろ……?」


 まさかの状況。ここが一番上ってどういうことだよ?


 口元に手を当て考える……下り階段以外に進む道がどこにもない。となると、ここは単なる行き止まりの空間で、迷宮の本筋は別にあるってことか?

 ゲームとかで言うなら、複数道がある中で、ここは宝箱とかがある行き止まりってことかな?


「そうすると、どうあがいても一度下に行かないといけないのか……」


 一瞬持てる力を振り絞って迷宮を破壊、無理矢理外に出るという選択肢も浮かんだ。でもここがどのくらい深い位置にあるのかわからないし、生き埋めになるのがオチだと思ってその案は却下した。


 そして俺は階段の前に立つ。不気味さに拍車が掛かっており、二の足を踏む。

 でも、道はここしかない……覚悟を決め歩き始める。


 もしさっきよりも強い魔物が出てきたらどうするか……出会い頭に遭遇するようなことさえなければ逃げの一手でもいいかなあ。

 無事に外に出られればいいんだけど……しかし、なんというか心安まる時がないなあ。気付いたらいきなり魔族になってるわけだし、仕方がないのかな。


「はあ……」


 ここでため息を吐く。次に思い浮かんだのは、前世のこと。


 改めて考えた瞬間、色々なことが頭の中を駆け巡る。例えば飼ってる犬の散歩誰がやるんだとか、学校ではどういう対応するんだとか……そういう日常生活的なことを考えた後、次に浮かんだのは見ているアニメとか買っている漫画とか小説のことだった。


「……あー、そうか。続き見れないのか」


 軽く絶望した。特に毎週楽しみにしていたアニメ……。


 基本的に王道展開が好きなので、見るのは俗に「熱い展開」があるものばかり。今のシチュエーションは見ようによっては実演できたりも……いや、そんなつもりはないけどね。無難に過ごせれば何よりだ。


 いざビーム出せるくらいの力を持っても、これを正義だとか人々のためとかに使う気はまったく起きない。俺が魔族だからと一度考えてはみたけど、違う気がする。


 それよりこの体、全然魔族らしくないんだよな。ビーム撃つとか魔法的なこと以外は、ごくごく普通の人間と同程度の身体能力しか持っていないみたいだし。


「というか、この体は何なんだ……?」


 それもまた疑問だ。俺がこの世界にやってきたことによって生み出された……とはなんとなく考えにくい。例えば封印されていた魔族に俺の人格が宿ったとか……?

 疑問はいくらでも出たけど、解決できないのでひとまず置いておこう。自分のことを調べるのは外に出てから――安全を確保してからでもいい。


 そうこうするうちに階段を下りきった。ふむ、正面と左右、三方向に道があるな。

 心なしか魔法の明かりの数が多くなり、明るくなった気がする。暗いと気が滅入るので俺としてはこっちの方がいいな。


 よし、右に行こう。少し慎重に、ちょっと忍び足で俺は進む。


 真正面に左へ曲がる角があるんだけど、魔物がそこから出てこないかちょっとドキドキする。なんとなく後ろを見てみるが、ひとまず動くものはない。


 なんだか心臓に悪いな……俺ホラーとか苦手なんだよな。特にビックリ系が一番無理。不気味な迷宮が平気になっても、これだけは変わらないようだ。

 小心者と言われようが無理なものは無理。なので、魔物が出てきませんよーに!


 心の中でひたすら祈りながら歩く。角が近づき体に力が入る。

 そして到達した。俺は大きく息を吸い込み、意を決して曲がる!


 ――まあ、足音もないし魔物はいないだろうとどこか高をくくっていた。ははは、いきなり遭遇して慌ててビーム撃つなんて真似にはならないさ。


 そして目の前に現れたのは……黒い壁。


「ん?」


 壁? と思ってよく見たら、それは黒々しい肌を持った魔物だった。


 筋骨隆々の上半身に、下半身は鎧か何かで覆われている。なんで上を着てないのとか思ったのは一瞬で、注目したのは頭部。

 えっと、牛の頭ですね。これ、ミノタウロスってやつですか?


 硬直していると、首が動く。あ、こっち見た。


 ――ウオオオオオオオ!


「――うわああああああっ!?」


 ビーム! ビーム! とりあえずビーム!!


 右手を出してビームを放つ! 炎とか出して練習したのに意味ないじゃないか!

 だがこのビームは威力があり、光に飲み込まれたミノタウロスは叫び声を残しあっさりと消滅した。


「……あー、ビックリした」


 魔物が現れたことにちょっとばかり動揺したら、絶叫で威嚇してくるんだもんな。まさか二段構えとは。


 心臓がドクンドクンと速くなっている。静まれと心の中で念じながら、どうしようか考えて、


「……これ、倒してよかったのか?」


 なんか嫌な予感がする。あの魔物を倒すだけなら誤魔化せたかもしれないけど、絶叫に加えビーム発射だからな。もし他に魔物がいたらこっちに来るのでは――


 そう思った時だった。どこからか足音が聞こえてくる。ただ、さっきのミノタウロスが発するような音じゃない。あいつの場合、それこそ地響き立てながら進んでくるだろう。


 それよりもずっと軽い……方向は俺が通ってきた場所。確認すると……いた。

 全身骨だけで構成されている……えっと、スケルトンかな?


 で、それが一体、二体――どころの騒ぎではなく、目算することができないくらい、こっちに向かってくる!


「だああああっ!」


 全力疾走! ビームでどうにかできそうだけど、とりあえずあれ倒しても続き来るだろうから、一度逃げよう!

 先へ進むことにしたが……前からも同じような敵が! って、囲まれた!?


 カチャカチャと音を立て迫り来るスケルトン達。手に持っているのは剣と盾。動きはややヨタヨタしているけど、とりあえず大の大人が早歩きするくらいの速度で一斉に迫る様子は、見ていて結構気持ち悪い。


 しかもそれが通路いっぱいに並んで迫ってくる。怖いわ!


「あー、くそ!」


 もうこうなったら全滅させるしかない! ビーム発射!


 右手から出た青い光がスケルトンを襲う! 飲み込まれた敵達は一切合切消滅し……が、後続からまだ来る!

 しかも後方からも――即座に振り返って一発。で、また前方に向かって発射! まだ来るから以後繰り返し!


 変なテンションでビームを撃ちまくる俺。しかし改めて思うけど、このビーム洞窟にあまりにも似合わないぞ!


 延々来るスケルトンを倒しながら、俺は一つ思った……どうでもいいけど魔物倒しすぎだ。これ、魔王とかいたら確実に殺されるんじゃないか、と。






 それから程なくして、スケルトン達は俺のビームの前に敗れ去った。


 これが広い空間だったらビームで捉えきれないはずだったので、場所が通路で本当によかった。


「はあ……」


 大きく息を吐いて周囲を見る。ビームのせいなのかそれとも魔物が消えるとそういう仕様なのかわからないが、倒したら塵みたいに細かくなって消滅するみたいだ。よって、全て滅した結果先ほどの襲撃がまるで嘘であったかのように通路は静かになった。


 ついでに言うと、あれだけ撃っていたのに壁や床は損傷していない。地底湖の岩肌は壊れたのだが、どうやら迷宮は魔法的な何かで守られているらしい。ふむ、無理矢理破壊して地上へって、最初から無理だったな。


 俺はスケルトンが消えた通路を見返し……思う。マジでビーム強いな。今のところ出会った敵全部一撃で倒しているぞ。


「でもまあ、通用しなかった時の対策考えないといけないよな……」


 迷宮なんだからボスとかいるよな。なら、それに対しさらに威力のある技を開発した方がいいだろう。


「よし、それじゃあ――」


 戻ろう。ここにいたらさらに魔物が来そうなので、全力で戻ろう。

 というわけで、一度引き返すことにした。


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