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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第二話

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39/66

湖の戦い

 翌日、俺はログハウスの中で軽く準備運動をしてから外に出る。兵士が慌ただしく動いており、戦闘準備を進めていることが明瞭にわかる。


「ゼノ殿」


 ファラの声。視線を転じれば彼女が歩み寄ってくる姿。


「作戦を説明する……まずは相手の出方を窺う。ゼノ殿の出現は魔族にもバレているだろう。それを前提として話をさせてもらう」

「ああ」

「実はゼノ殿とは別に、湖の中に潜む魔物を討つために色々と準備をしていた。そのうちの一つが儀式系の魔法だ」


 そう告げたファラは指を差す。目を移すと、そこには魔術師数名が湖の方へ体を向け待機する様子が。


「彼らが魔法を行使し、湖の中にいるであろう魔物をけしかける。相手が動き出すかどうかは不明瞭だが……これで釣れたら作戦を始める」


 語るとファラは湖へ目を向ける。


「魔物は大別して二種類。人型の魔物と竜だ。竜は大きいため対処が非常に難しいが、ここについては私が対処する」

「複数現れた場合は?」

「それに対する対策も一応してある。完全とはいかないが、食い止める手段はある」

「えっと、もし複数現れた場合は兵士さんが食い止め、ファラさんが潰すと?」

「そういうことになる」


 竜がどんなものか判然としないが……少なくとも数が来ても切って捨てるだけの力を彼女が所持している、という解釈でいいのだろうか。


「ゼノ殿は人型の魔物の対処をお願いする」

「場所はここでいいのか?」

「ああ。前線基地の本陣だからな」


 ここを守らないとまずいってことか。俺が頷くとファラは「頼む」と告げ、


「では作戦開始を指示してくる……ゼノ殿はこの周辺でしばし待機していてくれ」


 指示により俺はひとまず立ったまま待つことに……やがて兵士達が動き始め、さらに魔術師も魔力を握りしめる杖に集め始めた。

 すると大きな変化が。魔術師は全部で三人であり、彼らの足下には魔法陣が刻まれている。そして三人が同時に杖を掲げると……頭上に大きな光弾が生まれた。


 それはどうやら湖周辺に存在する魔力などを吸収しているようで、どんどん大きくなっていく。なるほど、儀式系魔法っていうのはああして自然から魔力を抜き取ることを言うのか。

 魔術師達はしばし杖を掲げたまま硬直し……やがて光弾の巨大化も止まる。もしこれが地面に着弾したら、巨大なクレーターができそうだな。


 事の推移を見守っていると、魔術師達が光弾を――投げた。それはなかなかのスピードで水面を打ち、水中へ潜り込んだ。

 果たして――目を凝らすと水中で一際光弾が輝く。次の瞬間、


 盛大な爆音。そして水しぶきが発生。


「おっと……!」


 俺の所まで到達し、反射的に後退する。魔法によって湖面が波打ち……しかし、変化はない。

 すると魔術師達はさらなる魔法を行使しようと杖を掲げる。出るまでやるつもりか?


「敵にとっては明らかに挑発だけど……」


 どうなるのか。湖と魔術師達を交互に見ながら観察していた時、気配を感じた。

 それはあきらかに魔物……見れば湖の湖面から、顔を覗かせる魔物。それはファラが語ったように魚のような感じであり……前世のファンタジー用語で言えば、サハギンと呼べるものだった。


 そいつらは二足歩行であり、手にはモリ……うん、まさしく典型的な魔物達である。


「総員、迎撃開始!」


 ファラの声が聞こえた。いよいよ始まるか。


 俺は周囲を見回しながら静かにビームを撃つ準備を行う。まず槍を持った兵士がサハギンと交戦。長槍であるためモリを持つサハギンよりもリーチは長く、最初は押し留めることに成功する。

 とはいえそれだけでは突破されるし、何より耐久力があるのか槍に一度突かれても死なない。数度、あるいは頭部などを刺し貫かれない限り倒すのは難しいようだ。


 そこへ、騎士達が援護に入る。聖騎士団――彼らは一気に間合いを詰めたかと思うと、握る剣でサハギンを一閃。見事撃破に成功する。騎士達は十分な戦力となっている様子。さらに魔術師達も二発目の光弾を中止し、援護に。

 その中で、ファラは……見ると近づいてくるサハギンを蹴散らしながら湖を注視する。水竜の動向を窺っているのか。


 彼女は他の騎士とも異なり、サハギンを片手間に倒しながら湖を警戒。ふむ、この辺りはさすが隊長といったところか。

 この様子だと、竜が出るまで出番はなさそうかな――などと思っていた矢先、サハギンの一体が俺へ突っ込んできた。


 このくらいならビームを撃つ必要はないかな。そう判断した俺はとりあえず近づいてくるサハギンに対し構えた……といっても適当である。

 武術とか習った方がいいのかな……サハギンが突っ込んでくる。体当たり的なものらしく、俺はそれを見切って横に避けた。


 よし、と心の中で呟いてすれ違った魔物へ反転し背中へ拳で一突き。魔物は反応できぬままに背中を撃ち抜かれ……消え去った。

 うん、俺の攻撃は普通に通用しているな。さらに言えば魔物が振り返る前に勝負を決めることができたってことは、結構攻撃も速いのではないだろうか。


「見事だ」


 ファラが俺のことを見ていたか一言。こっちは「どうも」とだけ答え、さてどうするかと考える。

 もし水竜が出てきたら、俺は観戦していていいのだろうか。ファラの指示ではサハギンを倒してくれと言われているが、ビーム撃つだけだし危なくなったら援護だってできる。


 いや、さすがに隊長があれだけ言っている以上、変に援護したら面目丸つぶれかもしれない……うーん、面倒だな。


「まあいいや。とりあえず目の前の魔物を倒そう」


 たぶん攻撃を食らっても俺ならノーダメージだろう。というわけで少し気合いを入れて魔物と戦うことにする。

 近づくサハギンばかりでなく、近くで戦っている兵士の所へ行って倒す。それに兵士「ありがとうございます」と礼を言う。悪くないな。


 というわけで、俺は近くにいる魔物を適度に対していくわけだが……多い。いつまで経っても魔物の出現が途切れない。

 これだけの戦力を湖に隠していた……いつでも攻められたはずだけど、何か意図とかあるんだろうか?


 サハギンの一体を足蹴にしながら俺は考える。人間側が魔法によって挑発したから魔族が反撃に出た……と解釈するのが妥当なんだろうけど。

 情報も少ないし島にいるであろう魔族に尋ねてみないとわからないか……さらにサハギンが出現するのを目に留めながら、俺はそう結論を出した。


 と、その時、水面に大きな波が生まれる。それを見て、ファラは叫ぶ。


「来るぞ!」


 兵士や騎士がにわかに緊張し始める。水竜か。


 一応ビームを撃つ準備をするべきか……などと考えた矢先、湖面が大きく膨れあがり、姿を現した。

 体は緑色の鱗に覆われた、胴長の竜。真紅の瞳を持ち、体を直立させ威嚇するように俺達を見下ろし、雄叫びを上げた。


 オオオオオオ――動物とは異なる、どこか無機質な叫び。周囲の兵士の中には耳を塞ぐ者までいた。


「総員! 竜以外の魔物に集中しろ!」


 ファラが指示を飛ばすどうやらやる気らしいが……さて、彼女の実力、拝見させてもらうとしよう。


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