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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話
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能力を検証する

 水を何度もすくって喉を潤した後、俺はさっきのビームについて考える。

 死ぬ、と思った時に考えついた結果がビームであった。最後に見ていたアニメが頭に浮かんだので、宇宙空間に飛び交うビームを想像した。結果、ビームが出た。


 ……無茶苦茶である。


「これ、見てたアニメがファンタジーだったら、魔法っぽいものになってたのかな……」


 まあ答えは出ないんだけどね……えっと、これが魔法扱いなら詠唱とかが必要な気がするけど、そうした過程もなく出せた。ということは、俺が何か能力を使う際、詠唱とかはいらないってことじゃないか?


 よし、能力の検証だ。さっきのようにビームをイメージして……右手を突き出した瞬間、俺の想像通り先ほどのようなビームが出た。

 うおお、マジか。もしかして、俺がイメージしたものが自由に使えるのか?


 ならば、そうだな……炎を出そう。こう、手の先からゴオオ、と燃え上がるような感じで。

 右の手のひらを上にして強く念じていると、手のひらから火が出てくる。それが次第に大きくなって、天井へと勢いよく燃え上がり、


「――あちっ、あちちちっ!」


 顔が焼ける! 熱い!


 慌てて消した。間近で見る炎は迫力あるけど、熱が半端じゃないせいで顔が熱いどころか痛い。

 でも、炎を出した右手は何も感じない。魔法らしきものを使っている間は、保護でもされるのかな?


 なら、体全体もそういう保護ができるのでは……ちょっと念じてみると、体に一瞬だけ違和感が。それはすぐに消えたけど、体の表面に何かまとったような気がする。

 もう一度炎を出してみる。念じていると次第に燃え上がり……おお、今度は熱くないぞ。


「なるほど、これで攻撃を防御するわけだ」


 結界みたいなものかな? うん、敵の攻撃を防げるような手段を見つけたことはよしとしよう。

 次に右手を突き出し色々試してみると――風よ出ろ! と思うとその通り旋風が舞い、氷を! と体に指示すると目の前にパキパキと氷が生まれた。


 どうやらその氷、俺の考えた通りに形を変える様子……なんとなくさっきの虎をイメージしたのだが、それっぽい四本足の動物もどきはできたけど、原型はほとんどない。

 想像力が足りなかったか、単に俺のセンスの問題か……後者だな。俺、美術の成績なんて一と二しかとったことないし。


 ひとまず最後の氷像以外は大体イメージ通りに出すことができた。しかし、ここで新たな問題が発生する。


「イメージして使えるのはいいけど、最初のビームと比べて遅いなあ」


 念じて想像通りの形になるまで時間が掛かる。これでは戦闘に使えないのでは? うーん、最初の時は必死だったからすぐに使えたとかいう感じだろうか?


 もっと早く出すためには……呼吸を整えて手を突き出す!

 ビームが……出た! 洞窟の壁に直撃して岩を削る。


「ふむ、ちょっと意識すればいけるっぽいな」


 炎とかも……うん、こっちも同じだ。これなら大丈夫そうかな?

 けど、戦いになったら意識してとかキツイよな、たぶん……ん、待てよ。


 意識して出るということは……例えば声を出すとかでも大丈夫なのかな?


「炎よ!」


 試しにやってみたらすごい勢いで出た……うおお、声出しながらの方がいけるのか。

 それどころか声に出した方が明らかに威力がありそうだ……よし、とりあえずやばそうだったら絶叫しながら攻撃だな! 見てくれは死ぬほど悪いけど!


 戦い方はある程度決まったので、次はどうしようか……沈黙すると、ピンと張り詰めた静寂が洞窟内を支配する。


 ここまであたふたとしながら時間も結構経っているんだけど……例えば魔王がやってきて「私のために働いてもらおうか」などといった展開にならない。完全放置であり、こっちとしては何をしていいのかもわからない。


 まあ俺が魔族になってしまったのが誰かのせいでないとしたら、この状況にも納得いくんだけど……とりあえず、気の向くままに行動していいのかな?


 なら、俺がしたいこととしては――


「よし、迷宮を出よう」


 薄暗い雰囲気のこの空間では気が滅入ってしまいそうだ。とりあえず迷宮の外を目指そう。

 魔王とかにしてみたら完全に予想外の行動だろうけど……俺は今、太陽を欲している。日差しを浴びたい。魔族の使命? 目的? んなもん知るか!


 行動方針も決定したので、早速歩き出す。虎みたいな魔物以来敵もいないけど、できればこんな調子であってほしいなあ。


 洞窟を離れて迷宮へ逆戻り……そして周囲に響くのはひたすら俺の足音だけ。しかし本当に殺風景だな。お宝とかそういう物もないのか? 明かりがあるってことは探索済みで、ここに立ち寄る必要なしと捨て置かれたのか?


 うーん、現時点でわかっていることは俺は魔族で、ここは迷宮であることくらいか。情報なさ過ぎるな。


 もしこの迷宮を探索する冒険者とかに遭遇したら、話をするのも手かな……まあ俺のことを見ていきなり戦闘なんて可能性も否定できない。やる場合は慎重に、だな。


 俺がいた最初の部屋の扉を通り過ぎ、洞窟から反対方向の通路を進む。代わり映えのなさ過ぎる景色は正直この時点で飽きた。

 少しすると、下り階段を発見。お、ダンジョンっぽくなってきたな。左右を見回すとそれぞれに通路が。


「俺がほしいのは上り階段なんだよな」


 とにかく外に出たい。よって階段を進まず右の道へ。


 ……ふと思ったけど、外って俺が想像するような世界が広がっているんだろうか? この迷宮の外はキラキラと注がれる太陽光に、風になびく木々、青い空――みたいなイメージなんだけど、もし違ったらどうしよう。


 例えば……空はどす黒く、辺り一面黒く変色した地面に、草木など一片もない、とかだったら……テンションだだ下がりである。

 ま、まあここは俺のイメージを信じて進むしかないな――そんなことを考えながら、俺は通路を調べることにした。


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