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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話

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悪魔と情報

「封印を行っていた魔物がいる以上、それを利用しない手はない。再度魔物を封じるようなことはできないが、利用し結界内に閉じこもることは可能だろう」


 悪魔ドルアの語った内容は――ほう、なるほど。レトを利用して……か。

 けど、今のレトにそんな力がるように見えないが……。


「えっと、レト。例えば俺達が閉じこもるような結界を構築することは可能なのか?」


 ニャーと答えると、解説したのはリーズ。


「魔力が足りないから今は無理。でも、それを補う物があれば……」

「補う物?」

「このフロアには色々と道具が転がっている」


 ドルアが突如語り出す。


「その中には魔力が込められた物もあるだろう。それを利用すれば、封印されていた魔物も壊すことができない結界を構築することは可能だろう」


 ……なるほどね。よって俺達がやることは、まず魔力を含んだ道具探し。そしてほとぼりが冷めるまで結界の中にこもることか。

 ただ、この場合軍を成す魔物達については放置のまま。どうしようもないと言えばどうしようもないけど……。


「あなたにいくつか質問していい?」


 ここで発言したのはリーズ。その眼差しに、悪魔を怯む様子はまったくない。


「ああ、構わない」

「まず……あなた達の目的は何?」

「部外者に話すのはさすがに無理だな」


 まあ、これは当然だろうな。


「では……なぜこうまで話すの? 何か目的が?」

「ああ、それについてはこれから説明しよう。簡単に言えば探し物があるので、情報と引き替えに協力してほしいのだよ」


 探し物? さっき道具が転がっていると言っていたから、何かしらその中に目的の物があるってことか?


「同胞がやられ人員が足りず、しかも時間制限があるからな。封印されていたそこの獣は情報も持っているだろう? だからこそお願いしたい」


 ……時間制限、ねえ。もし目的を果たしたら本格的に地上へ侵攻、などということにならないだろうか。

 そうすると、俺達は戦争の手伝いをしていることに……と、ここでリーズがまた質問。


「もし断ったら?」

「話はこれで終わりだ。この迷宮が危険であることは認識しただろう? 自力で結界を構築するために動くのも手だが、おそらく封印獣だけでは構築は無理だぞ」


 つまり、安全を確保するなら悪魔の協力が必要だと。


「協力してもらえるのならば、多少なりとも結界作成について協力しようじゃないか」

 ……うーん、悪魔としては相当譲歩してるよな、これ。


 引っ掛かるものはあるけれど、俺達が安全に過ごせる場所を作ることについてはドルアの要求を受け入れれば可能みたいだ。しかし、本当にそれでいいのか……リーズはどこまでも複雑な顔。記憶を失う前は、お城で働き魔物と戦うような人だったのかもしれないな。


 ともあれ、俺としてはきちんと安全は確保したい。それにこうして友好的な相手と出会ったのだ。縁を作っておくのも悪くない。


「わかった、いいよ……あ、それと一つ質問が」

「構わない」

「封印されていた魔物……それはどういう理由で暴れ始めたんだ? 誰かが封印を解いたのか? それとも、あんた達がこのフロアに来たからなのか?」

「それもまた、答えられないな」


 肝心なところはだんまりか……ま、仕方がない。

 ただ、口ぶりからすると偶然封印が解けたというよりは、何かしら活動していたから解けたと解釈した方がよさそうだな。


「……なら、もう一つ。実を言うと目覚めたばかりでこの迷宮についても詳しく知らないんだ。その辺り、教えてもらえないか?」

「迷宮について、か」


 悪魔は考える。む、何かあるのか?


「……これについては、一つ問題があるな。人間に教えてはならない情報も存在している」

「何?」

「人間が知る迷宮の事情と、私達が知る迷宮の情報とでは大きく違う。見方が違えば迷宮のあり方も違う……地上に出るということは、彼女と共に町まで行くのだろう? だとしたら、説明は無理だな」


 くー、確信的な情報は得られずか……まあ仕方がない。この辺りが妥協点か。

 それに、協力すれば何かしら情報がもたらされるかもしれないし――


「わかったよ。なら質問は以上だ。何をすればいい?」

「探し物については、この近辺にあることはわかっている。封印の役割を担っていた獣の助言に従い、動くことにしよう」






 唐突に始まった悪魔との迷宮探索。先頭を歩くドルアは俺達に無警戒で、俺が今ビームを撃ったら間違いなく避けられないだろうな。


「……あんたらが何をやっているかは知らないが」


 歩いている途中で、俺は口を開く。


「こうやって部外者と共に行動するっていうのは……主に言い訳が立つのか?」

「その判断は一任されている……まあ、私としてもできるだけ速やかに目的を達成しなければならないからね」


 俺達をどうこうするより、目的を優先した結果ってことかな?


「人間を見たら、すぐにでも攻撃しそうな姿を想像していたんだけど」

「私達が、か? 確かにその杖の所持者は、やや好戦的で君達を見たならば襲いかかってもおかしくないな」


 一瞬首をリーズへ向けドルアは述べる――実際、襲われたんだけど……ただ、何かアイツも目的がありそうだったな。


「そういう存在がいることを否定はしない。だが私は違う」

「人間に対し友好的、って言いたいのか?」

「友好的……まあ確かに、君達から見れば私は友好的なのかもしれん」


 クックック、と笑うドルア。それは苦笑なのかもしれない。


「こちらにも色々と事情があるのだよ……詳しくは話せないが」


 なんだか人間味がある悪魔だなあ。元人間、もしくは人間と関わったことがある、とかなんだろうか?

 ふいにドルアが立ち止まる。左右に分かれた道だが……左を指差した。


「こっちに強い魔力がある」

「わかるのか?」

「同胞ならば探知くらいはできるだろう?」


 言われ、俺は体に力を入れてみる。これまでは単なる気配探知だったが……そこから迷宮内を探るように意識を向ける。

 すると、確かに左の道の先に濃い魔力が……ほう、こういう使い方もできるのか。


「ただし、気配探知はやり過ぎると相手に居所を知られてしまうため、魔力放出は必要最小限がいいぞ」


 ……あー、それってもしや。


「俺達が接近した時点で、気付いていたのか?」

「ああ」


 あっさりと返答。マジかー。ってか教えてくれるとは。


「その辺りは調整すればいい」


 そう助言をした後、ドルアは「話しすぎたか」と呟き沈黙する。

 うーん、やっぱり悪人(?)には思えないな。これまで遭遇した敵と比べてもずいぶん友好的だし。


 ただ人間に襲いかかる準備をしていると考えた場合、気分は複雑だが……やがて、辿り着いた先にあったのは一枚の扉。近づいた時点でわかったが、この奥に魔力があるな。


 しかし、一つ問題が。


「……気配がするな」


 ドルアが呟き、拳を構える。


「大きな魔力に隠れ、もう一つ……しかも動く魔力がある。どうやら件の魔物らしい」


 封印から解き放たれた、か。


「君達はそこで見ているといい」


 つまり、魔物を引き受けるというわけか。

 俺としては正直ありがたい……こちらが一歩後退すると、悪魔が吠え、拳を振りかざした。


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