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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話

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フロア探索

 せめて手に入れた食料の作り方くらい見つけられればと思ったのだが……結局わからなかった。というか、冊数が多くて調べきれない。ヒントもないし。

 よって、リーズ達が起床しても成果がなかった俺は……小さくため息をついた。


「ゼノ、どうしたの?」

「あ、いや、何でもないよ。よく眠れたか?」

「うん、大丈夫」


 力強く頷く。時計が無いので確実なことは言えないが、リーズが二回目の就寝から四時間くらいかな。なんとなくだけど、朝になったような気がする。

 彼女も体力が完全回復した様子なので、レトの情報により作成した地図を頼りに動くとしよう。


 警戒しながら扉を開き、外に出る。周囲は俺達がここを訪れた時と何ら表情は変わっていない。


「えっと、まずは……」


 地図に目を落としつつ歩く。無論、周囲の警戒は怠らない。

 できれば足音とか以外で気配を感知できたらなあ……うーん、そういうのできないかな?


 意識してやればいいんだろうか……俺はなんとなく後方を意識してみる。背後にはリーズ達がいるのだが……ダメだ、足音が聞こえるだけ。

 ビームを撃てる俺なら探知くらいできると思うんだけど……と、そうだ。ビームを撃つように力を入れながらやってみよう。


 そう思い、なんとなく気配探知をイメージして力を入れ……あれ、なんか後ろを歩くリーズ達がどうなっているかわかるぞ。

 まずリーズは俺の真後ろを歩いている。一方レトはリーズの右横。何気なく振り返ってみると、俺が感知した通りの状況。


「……どうしたの?」


 小首を傾げるリーズ。俺は「何でもない」と答え前を向く。


 もう一度意識してみると……うん、感じることができる。ちょっと体に力を入れる必要があるけど、少し先まで何かいれば感知できそうな雰囲気だ。

 探索中はこうして気配を探るようにしよう……と、考える間に俺達は枝分かれした道に到着。数は三つ。右に向かう道が二つと、左が一つ。


 地図によれば、右二つは小部屋のようなものに繋がっている。左の方はレトも行ったことがないらしく、どこに向かうのかわからない。


「左へ」


 すぐさま指示を出し、先頭を歩く。気配を探りながら少しずつ進んでいくと……またも分かれ道。

 とりあえず、適当な道に入って……ここで、リーズが口を開いた。


「ねえゼノ。外に出たらどうするの?」


 どうするって……返答しようとして、言葉が止まった。

 よくよく考えてみると、確かに外に出てからのことを考えてなかったな。


 何気なくリーズを見ると、またも小首を傾げた。単に話題として振っただけみたいだな。


「……リーズとしては、記憶を取り戻すために動くよな?」


 問い掛けたが、彼女の反応はずいぶんと鈍い。


「どうなんだろう……?」


 なぜ疑問系。うーん、彼女は自分の状況があまりわかっていないのかな。

 記憶を失いいきなり戦いの渦中にいるのだから仕方の無い面もあるんだろうけどさ……こっちが何も言わないでいると、リーズも言葉が止まってしまった。


 ひたすら通路を進む俺達。なんだか気まずいが……。


「――俺は現在、ひとまず外に出ようとしているだけで、何か目的があるわけじゃない」


 そう口を開き、


「だからまあ……リーズの記憶探しを手伝うのもいいけど」


 視線を転じると、ちょっと戸惑った表情の彼女。立ち止まり俺のことを凝視する。


「……いいの? それで」


 確認のような問い。そこで俺はなんとなく彼女の心境を理解した。


 何事もないように振る舞っているけれど、やっぱり心細いみたいだ。頼れる人(正確に言うと魔族だけど)が俺しかいない以上、地上に出た後のことに漠然とした不安を抱えている。


 そうした不安は、取り除いた方がいいよな……そう思い、


「ああ、俺はどこまでも付き合うよ」


 言葉に、一転リーズは微笑。


「そっか。ありがと」


 どこか素っ気ない返事だったけど、照れ隠しのようなものだろうか? ちなみに微笑にちょっとドキッとしたのは内緒である。


「……というわけで、まずは外に出ないと」


 俺の言葉にリーズは小さく頷き移動を再開。そこから色々な道を調べるのだが……分岐が複雑で、目印でもつけていないと迷う。


 リーズやレトのフォローもあり、どうにか迷わずに探索することができたのだが……レトの知らない場所を調べ回っても結局このフロアから抜け出す道は見つからない。全てを調べたわけじゃ無いけど、この様子だと階段がないかもしれない……。


「魔物がいた場所まで戻らないといけないのか?」


 一定方向に進んでいた魔物達……あれはどう考えても上を進んでいた。もし地上に出るとしても、あいつらとの戦闘は避けられないのだろうか?


「どうしようか?」


 リーズが問う。そっちに意見はあるのか――と逆に尋ねようとして、彼女は首をすくめた。


「私はゼノの方針に従う気でいるけど……やっぱり、魔物達が何をしようとしているのかは気になるよ」


 うーん、やっぱりそこか。かといって密かに近づいて、といってもリスクがあるよな。一度見つかったり終わりと考えていいだろうから、細心の注意を払わなければならない。


 できれば退路を確保して実行に移したいよな……どうしようか悩んだが、結論が出ない。


「……ひとまず、書斎に戻ろう。休憩後、まだ確認していない場所を確かめよう」


 意見にリーズは「わかった」と返事をした。


 来た道を戻る……のだが、この間双方無言。

 な、なんだか気まずい……といっても話題なんて見つからないし。


「ゼノ」


 と、彼女から話し掛けてきた。


「ゼノは突然目覚めたって言っていたけど……その前の記憶は?」


 うーん、どうしようかなあ……転生した、なんてことを話すのはいいのか悪いのか。

 正直メリットデメリットがまったくわからない。ただ俺が転生したなんて事実が広まったりしたら面倒なことになりそうだよな。


「……あー、それについてはあやふやなんだ」


 そう答えておく。リーズは「わかった」とあっさり引き下がる。

 追及する気はならしい。まあ彼女としては立場的に俺より下だと考えて、詳しく訊こうとするつもりがないのかもしれない。


 ……リーズには申し訳ないけど、ひとまず何も話さないでおこう。さて、もうすぐ書斎だが――


 そこで、俺は立ち止まった。


「……ゼノ?」


 リーズが名を呼んだが、返答しなかった。気配探知――それにより、書斎前に何かいるとわかった。

 書斎自体は目の前にある角を曲がって少し先なのだが……俺はリーズに「静かに」と言いながら、角へゆっくり近づいていく。


 捉えた気配は一つ。ただそれは結構存在感がある……たぶん強いってことなんだろうな。まだ姿は見えていないけど、雰囲気的に俺よりもずっと大柄な体格を持っている気がする。


 ジリジリと角に近寄り、到達すると少しだけ首を伸ばし先を見る……いた。書斎の扉の前に、遠目からでもわかるほど大きい体格を持った存在が。


 全身漆黒で、背中に黒い翼が生えた悪魔のような見た目。背丈は迷宮の天井に頭をつけるんじゃないかと思うくらい。ミノタウロスもそのくらいの体格を所持していたが、ヤツらとは比べものにならないほど濃い力を感じる……リッチなどと同じく魔物を率いる存在だろうか。


 さて、どうしよう……首を引っ込め思案し始めた時、相手がこっちに近づいてきた。


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