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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話

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16/66

骸骨の光

 今だ、と心の中で呟くと同時、俺は右手から青いビームを発射する!

 リッチは攻撃態勢に入っていたためか、完全に虚を突かれた形。


「――ぐおおおおっ!?」


 光に飲み込まれリッチは叫ぶ……おし! 思いの外効いてるぞ!


 ビームが物理なのか魔法的な何かなのかは不明だが、とりあえずダメージを与えることには成功した。しかも今のは俺も意識を集中させたため全力に近かった。これなら――


 刹那、バアンと重い破裂音が響く。するとビームが突然消え失せ、リッチが姿を現した。


「……なかなか効いたぞ」


 正面から受けて耐えるか……ただダメージはしっかりとあったようで、リッチの動きは少しばかり鈍っていた。

 うん、このまま押し込むしかないな! 俺は容赦なくさらなるビームを放つ――が、


「同じ手は通用せんぞ!」


 吠えるとリッチが握る杖が発光した。それは白い光となり、ビームが直撃すると、吸い込まれていく……って、マジか!


 そして相手は杖をかざしながら断言する。


「相当な力を持った魔法のようだが、あいにくこの私にはもう通用せん」


 むう、さすがにこれで沈んでくれるほど甘くはないか。よくよく考えれば騎士と遭遇した際も一度目は直撃したけど二度目は回避された。つまり、ワンパターンな戦法は通用しないというわけだ。


 よって、目の前のリッチに対しては相応の戦術が必要になる……が、俺にそんなものを考えつくわけがない。

 ならどうするのか――とにかく、攻めるしか――


「いくぞ」


 リッチが告げる。直後杖が光り出し、それが先端部分で球体へと変化していく。

 しかもそれが際限なく膨らんでいく……って、ちょっと待てよ!


「覚悟はいいな?」


 よくない! リッチの頭上にはとんでもなく膨れあがった巨大な光球。それが放たれたら俺達は確実に……死ぬ。

 刹那、俺は背後にいるリーズとレトを意識した。二人がどんな様子で目の前の光景を眺めているのか……衝動的に振り返ろうとしたが、それよりも先にリッチが杖をかざした。


「終わりだ」


 宣告。それと共に光が俺へ向かってくる――


「――おおおっ!」


 次の瞬間、俺は体の内からあらん限り力を引き出そうと叫んだ。同時に全身に力を入れ、さらに右拳を強く握りしめ、そこに力を集中させる!

 それはあたかも、俺自身が光に対抗するための光弾になるような感覚。とにかくこいつを消し飛ばさないと、リーズ達が危ない!


 リッチの魔法が放たれる。巨大な力の塊は、下手するとこの室内を無茶苦茶に――いや、そんなものではすまず、この周囲の遺跡が崩れるかもしれない。


 そんな凄まじい力に対し、俺は拳を振るう――リーズ達の存在がいなければ逃げていたかもしれない。こうやって盾となりリッチと戦う……それが果たして良かったのか悪かったのか。


 拳が光に激突する。最初グニョリ、というクッションにでも手をめり込ませたかのような感覚が生まれた。次いで拳がどんどん突き進み――俺も力を解放する!

 刹那、起こったのは凄まじい爆発と光。クラクラしそうなほどまばゆい世界が目の前に現れ……ただ、リッチが放った攻撃を食らったはずなのに痛みはない。


 痛みなど感じるまもなく消されたのだろうか……などとちょっと怖い考えを抱いた直後、手の感覚が戻る。どうやら力を放出しきったようだ。


「――な」


 そして聞こえたのはリッチの驚愕。光が消え見えた先にいたのは、杖をかざしたまま硬直する相手の姿。


 ――どうやら相手の光を相殺することができたらしい。内心ほっとしながら、俺はリッチへさらに拳を叩き込むべく突き進む。


「くっ!」


 途端、相手は後退を始めた。逃がすか!


 再度右腕に力を込め、それが一挙に膨らんでいくような感覚。リッチはそれを見てさらに驚愕したか、骸骨の奥にある青い光が揺らいだ。

 いける――そう確信したので、渾身の右ストレートを見舞う!


 相手はそれに左手をかざした。すると、目の前に壁――といっても透明であり、視覚的には何もない――が生まれた。結界の類いか?

 けれど俺は構わず拳を放つ。そうして透明な結界に激突し、ガラスの割れるような音が響いて砕け散る。


 リッチはさらに退いた。そのまま逃げる勢いだったが、さすがに下がるだけでは追いつかれると悟ってか、杖を俺に向けまた新たな光が生まれた。

 このまま攻撃されたら危険だ――よし、一気に決着をつけよう。一息で結論を出すと、問答無用で三度目の右ストレートを放った。


 リッチは駆け引きもクソもないこの攻撃に明らかにたじろいでいる。そして大きな隙が生じ……拳が、体に触れた。

 杖先から魔法は結局発動しなかった。俺の攻撃速度が想定以上で対応できなかった、とかだろうか?


 そんな疑問に思うくらい余裕を持ちながら、俺はどこか他人事の気持ちで拳がリッチへ突き刺さる光景を眺める。右腕が骨に触れた瞬間、光が弾けリッチの体が包まれる。


「――お、おおおおおっ!!」


 雄叫び。抵抗するためかそれとも断末魔なのか……俺の攻撃はリッチを光で包む。これで決まったか?

 とはいえここで反撃など食らえばどうなるかわからない。俺は一度後退して、リーズ達の真正面まで戻った。


 そして光が消え、現れたのは先ほどと変わらぬ姿のリッチ。衣服などにダメージはないので、格好も全て魔法か何かで作られているのかもしれない。


「……ここまで、とはな」


 リッチが言う。どうやら俺の攻撃に参っている様子。

 おし、このままトドメを……と思った矢先、リッチは杖を掲げた。


「だが、終わりではないぞ!」


 杖先に力が集まり始める。それはさっきよりも大きい力……ただ、逆にリッチが存在感を無くしている気がする。


「……自分の命と引き替えに?」


 後方でリーズが呟いた。なるほど、捨て身の攻撃で俺を叩き潰すというわけか。

 そうまでして俺をどうにかしようとするのは、理由があるんだろうけど……考える暇はなかった。リッチは一挙に杖に光を収束させ――俺は駆けた。


 さっきと同じ、フルパワーで……そう考えながら四度目の右ストレートを決めるべくリッチへ近づく。相手は杖に集めた力を放つことなく、むしろその力を直接ぶつけるつもりで杖を振るった。


 そうして激突する拳と杖――わずかな時間、せめぎ合いが生じた。杖に凝縮された力はリッチの命を賭したものである以上、相当な量であることは間違いなく……むしろ俺がそれを真正面から受け止めているというのが、すごいことなのかもしれない。


 やがて、徐々に俺が押していく。リッチとしてはさらに力を注ぎたいところだったのかもしれないが、結局どうしようもないまま、俺の拳が杖を弾き、その体に再び突き刺さった。


 今度は光は発せず、渾身の一撃はリッチを吹き飛ばす。杖を取り落とし、身一つで地面に倒れ込んだ。


「……馬鹿、な」


 呟き。まさかこの私が敗れるとは――みたいな感じかな?


 少ししてその体が消えていく。俺は最後まで警戒を崩さずリッチを見守り……完全に消え去った後、大きく息を吐いた。


「どうにか倒したな……」

「ゼノ、お疲れ様」


 後方からリーズ。振り向くと、穏やかな顔の彼女が。正直、もうちょっと慌ててもバチは当たらないと思う。

 ともあれ、リッチは追い払った。なおかつ彼を取り巻いていた魔物の姿はない。よし、このまま移動を――そう思ったのだが、一つ気になることが。


 リッチは消えたが、杖だけは床に放置されたまま。よって、俺はそれに近づいていった。


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