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漆黒の迷宮英雄  作者: 陽山純樹
第一話

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強襲の魔物

 その移動は、まさしく一瞬だった。


 跳躍したと思ったら、突如目の前にいた。右腕を振りかざし手の先にある爪? みたいな物を俺へ向けようとする。


 正直、何が起こっているかわからないレベルだった。こちらが構えようとする暇もなく、魔物は既に勝負を決めにきている。


 俺はただ呆然と立ち尽くし、その攻撃を――と、本来はなるはずだった。しかしこの体に眠っているよくわからない意思が働き、左腕が相手の動きに合わせ、体をかばい盾となる。


 ――って、大丈夫なのか!? 内心恐怖を抱いたが、次の瞬間魔物の攻撃が左腕にヒットした。

 途端、凄まじい衝撃が生まれる。寸前、全身に力を入れていなければ吹き飛ばされるところだった。


 結果、俺と魔物は……一瞬硬直する。それは数秒にも満たないわずかな時間。魔物は即座に新たな攻撃を振りかざすに違いない。

 だが、それよりも早く――俺の右手からビームが炸裂する!


 青い光が一瞬にして魔物を包む。雄叫びが上がり、後方へすっ飛んでいくが、それでも消滅には至らない。

 反射的に撃ったけど、結構出力はあったはず……ビームを放ち終わるとその姿が見えた。壁際まで引き戻され、魔物は警戒したか唸り声を上げた。


 ……今ので消滅しないか。しかしこっちの動向を気にして固まったぞ。よし、どうするか考えよう。

 後方にいるリーズを狙われることが一番の懸念なわけだが……少なくとも視線はこちらに向けられている。攻撃してきた俺を目標としているのは間違いないだろう。


 ならば、次は……俺は騎士との戦いを思い出す。フルパワーで相対し、一気に打ち砕く戦法でいこう。

 決断した矢先、魔物が動く。またも一歩、そしてまたも肉薄。


 動きが急すぎて俺の思考がついていかない――が、体はどうにか反応した。手をかざし、再度左腕で防御する――!

 ガアッ、と衝撃波のようなものが体に当たる。さっきのとは異なり直接攻撃だけではなく、何かしら効果を付与してきたか……けど、そんな小手先の攻撃は俺に通用しない!


 全部その身に受け平然とする俺は、反撃に移る。全身に力を入れてフルパワーになり……直後、魔物が威嚇するように吠えた。


「うおおおっ!」


 ならばこっちも絶叫だ! 相手に呼応し声を上げた俺は、右拳を振りかぶる。この右ストレートで一気に滅ぼしてやる!

 決意と共に放たれた俺の拳は、真っ直ぐ魔物へ向かい……敵は腕を交差させ、ガードする。俺の攻撃と相手の防御。どちらが上か――


 激突。衝撃波と共に旋風が舞う。一気に吹き飛ばそうとする勢いで放った俺の拳だが……止まった。

 というか、受けきった!?


 あ、魔物が動き出そうとしてる。このまま拳を振り払われて反撃に転じたら……まずいぞ。

 俺は咄嗟にさらに力を込め押し込もうとする。当然魔物は反応し、腕に力を入れはじき返そうとした。


 押し合いが始まる……というか、最初のインパクトで通じなかったんだから、本来はこんなやり方が通用するはずがない。が、俺はあきらめなかった。このまま、押し通る……!!


 全身に力を入れ、気付けば右腕に力が集中し始めている。魔物はどうにか俺の拳を弾いて反撃したい様子だったが、俺は構わず力を込め……一瞬、魔物の体勢が揺らいだ。


 ――ここしかない! そう直感したため、俺は絶叫と共に拳を振り抜く!


 魔物の体が浮いた。そして勢いよく魔物は後方へすっ飛び、壁に激突sする。

 俺は思い即座に地を蹴り、なおかつビームを発射! 魔物は体勢を整える前に直撃し、完全に動きが止まる。


 これで決めるとばかりに右腕に力を集める――気付けば、両腕に巻き付いた力は騎士と戦った時よりも遙かに力を蓄えているのがわかった。その威力はいかほどのものか。


 追撃の右ストレート。魔物は防御したのだが、平然とそれをぶち抜き、体に拳が突き刺さった!

 壁に衝撃が抜ける。ズグン、と大きな音が響き振動すら生じる。次いで魔物の後方の壁が衝撃によって大きく亀裂が走り、さらに表面部分が大きく弾け飛んだ。


 さらに壁奥に衝撃が食い込んだか、ガガガガ、という破砕音が……や、やり過ぎたか? 大丈夫か?


 不安に思っていると、魔物がうめき声を上げた。最後の一撃は防御してもまったく駄目だった様子。まさしくクリーンヒット。俺は魔物の腹をぶち抜くことに成功し……とうとう、魔物の体が消えた。


 倒したようだ……しかし、思ったよりも手強かったな。もしかして、騎士を倒したことでこの迷宮の主が俺を倒そうと派遣したのだろうか?


 まあそう考えるのが妥当か……息をつき、俺は振り向く。そういえばリーズは大丈夫か――


「あ、ゼノ」


 のんきに手を振るリーズ。見ればちょこんと姿勢正しく座り、リラックスしていた……ちょっと待て。


「リーズ、何座ってるんだよ?」

「戦いの最中は立っていたよ。魔物の姿がなくなったからこうして一休みを」


 いやそっちは何もしてないだろ……と思ったが、もし俺がやられたら次は自分の身だ。緊張くらいはあってもおかしくないか。


「えっと、怪我は?」

「平気だよ。そもそも余波も届かなかったから」


 それならよかった……さて、こうして無事魔物を倒すことに成功はしたけど、悠長にはできなくなったな。ここにいたらまた同じような魔物が押し寄せてもおかしくない。


 魔族の体が戦闘を体で記憶していたからか、あの無茶な動きにも反応できた。けど、こんな都合のいいことがまた起こるかなんてわからない。早めにこの体を扱えるようしないといけないな。


「リーズ、動けるか?」

「平気」

「なら早速移動を開始しよう。できるだけ魔物とは接触しないように動く」

「わかった」


 ……とにかく、警戒しないとまずいな。こうしている間にも次の魔物が向かっているなんて可能性が高い。


 いや、他の魔物を引き連れ行動していた、なんてことも考えられる。俺は部屋なんかを一応確認しようと思い、リーズと共に地底湖を抜け迷宮通路へ入った。


 そして最初にあった部屋の扉を開ける……ここはスタート地点だ。

 で、そこにあったのは――


「……え?」


 思わず呻いた。リーズが部屋を覗き見ると、


「壁が壊れてるね」


 ――彼女の言うとおり、壁に大穴他ができていた。最初はなかったので、当然何か起きてこうなったみたいだが……。


「……あー、そうか」


 俺の攻撃だ。方角的に地底湖の方向だし。ここまで影響が出たということか。


「どうしたの?」


 リーズが訊いてくる。俺は「何でもない」と答えながら、扉を閉めた。


 で、改めて考える……スケルトンやミノタウロスは一撃。喋る騎士もさっきのヤバい魔物も全て俺は実力でねじ伏せた。


 ……もしかして、俺って相当強いのではないか? 大抵はビームでなんとかなるし、このまま突き進んでもいけるのではないか?


「……いやいや、待て待て」


 俺はかぶり振った。敵を甘く見積もるのはまずい。それにこの迷宮がどのくらいの規模かわからないけど、凄まじい動きを行う騎士やさっきの魔物も普通にいるということは、敵のレベルだって相当高いと予想できる。


 考えを改めながら、このフロアを調べる。結果として魔物はいなかった。


「よし、それじゃあ改めて進むぞ」

「おー」


 のんきに告げるリーズ。記憶がないことであんまり状況理解できてないのかな、などと思いつつ、俺は彼女と共に階段を下りた。


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