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異世界無双禁止規定(ステージ オブ グラウンド)『緩』 ~歌姫神と称された少年のあれこれ~  作者: 浅葱
第一章 ~次元迷子の少年(佐夜プロローグ)~
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第8話 ~模擬戦~

2日目の模擬戦。


 試験2日目の模擬戦。時刻は朝8時半


 模擬戦は全5戦あり、午前に2戦、午後に3戦ある。

 全校生徒は約300名弱在籍し、チームは全部で55チームに分かれている。1チーム大体6~7人で組むものだが、上位の頂点付近にいる人達に至ってはチームに1~2しかいなく、変に組むと逆に不利になるという事での特別な処置らしい。


 佐夜達は既に30分以上前に闘技場に来ていて待機し、対戦相手への対策を練っていた。ちなみに試合開始は9時から。


「俺達の対戦相手は【ナターレ】。リーダーの魔法剣士【マーロ】、弓使いの【アリーナ】に大剣士【ザード】と【ヴィレン】の前衛に」

「白魔導士の【レーシア】と人形師【ファナ】、そして魔導士【カーイ】の後衛組ね」

「まさか、いきなり上位チームと当たるとはね………」

「「ついてないよぅ~~」」

 タックとマナの情報にニケと双子ノンとロロが嘆く。


「けど、負ける訳にはいかない」

「……何でそんなに気合入ってるんだ?」

 そんな4人とは対称的に、やけにやる気を出しているイングに佐夜が首を傾げる。


「あ、ああサヤ。それはイングと【エミリア王女】との関係でな───────」

「タック。それ以上言うな(ギロ)」

「おおう、怖!」

 タックが説明しようとしたがイングに睨まれて、口を閉じる。


「エミリア王女って確かセルニア王国の第5王女……だったっけ?」

「ええ、そして私達と大体同い年で本校の上位チームに所属してる」

「上位というかトップ(第一位)なんだよね」

「そしてジャンルは『神聖騎士』!」

「同年代で一人いるか、いないかの存在で!」

「みんなの憧れなんだよ!」

「そ、そうか。そんなに凄い人なのか」

 マナとニケの口からさらっと出て来た凄い情報と、エミリア王女への憧れに興奮する双子の熱弁で佐夜はちょっと引いた。


 ちなみにイングも魔法剣士で、いかにもファンタジーに出てきそうなオーソドックスな騎士の恰好をしている。

 マナも魔法使い(ウィザード)らしく、長い杖とロープを着ている。マナは上位魔法を積極的に使うタイプ。少し発動までに時間が掛かるのが欠点。

 タックもどちらかというと魔法使いに当たるが、マナとは違い、短めの杖と盗賊シーフの様な恰好をしている。何故かというとタックは走り回りながら小魔法(ファイヤーボール、アイスニードルなど)をバンバン撃って相手を邪魔したり、体力を奪ったりするタイプだ。

 猫の亜人であるニケは拳闘士グラップラーらしく、物凄いラフな格好をしている。具体的には丈の短いタンクトップとジーンズのホットパンツを着用しているが、正直胸(アンダー部が少し見える程度)とか、お腹や太ももから下が丸ごと露出していて目のやり場に困る。一応指ぬきグローブ着用。

 双子の片割れノンは聖騎士っぽい恰好をしているが、剣の腕も魔法の熟練度も全然基準値に足りておらず、とてつもなく弱い。そのかわり盾を利用しての防御率が高く、後衛のちょっとした楯役を担っている。

 もう一方のロロは槍使で、イング達剣士とはまたちょっと違うデザインの鎧を纏っている。そしてロロの場合、槍使いとしての『突き』の威力は半端なく強いが、それ以外の攻撃は鍛錬が足りなくて全然威力が無い。要はこの双子は2人でワンセット。『矛と楯』みたいな感じだ。

 そして本命の佐夜の衣装はというと、落ちて(次元転移して)来た時の制服ブレザーに、数ある錬成術師の衣装の要素を加えたどちらかというと現代寄りな衣装になっている。デザイン&衣装作りはアイナが行っているが衣装全体的に男でも女でもない中性的なこの衣装は佐夜にとっても似合っている。特に腰巻き&レギンスが結構シャレていて、佐夜のお気に入りだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「やあやあ、すまない。待ったか?」

「いや、それほど待ってないから大丈夫だ」

 9時ギリギリになってようやく【ナターレ】のメンバーがやってきた。中には欠伸やダルそうに歩いてくる人達もいるらしく、イング達【アルケシス】は相手に相当舐められているみたいだ。


「では、両チーム揃いましたので、各自配置に着いて下さい」

 審判の指示で【アルケシス】【ナターレ】両方の選手達がそれぞれ各場所に着いた。

 試合形式は模擬戦ではあるが、剣士はもちろん真剣を使用するし、魔法使い達も普通に魔法を使う。


 魔法はともかく真剣は普通に危ないと思うかもしれないが、これは模擬戦。特殊な魔法が掛かっているジュエル【宝石】を身体のどこかに付けておけば、ダメージを全てこのジュエルが吸収してくれるので真剣がまともに当たっても大丈夫。

 そのかわり、ダメージを食らうと宝石の色が変わっていき、最初は青だが緑に変わり、黄色、オレンジ、赤、黒と変わり、最終的にジュエルが割れると戦闘不能扱いになる。ちなみにヒール(回復呪文等)などでジュエルを回復させるのは禁止。


 戦闘時間は半刻(30分)。30分以内に相手を5人以上戦闘不能にすれば勝利。30分経って時間切れの場合、残った人数やジュエルの色の度合い判定になる。


「準備はよろしいですか? では─────────開始!」

 審判の合図で試合が始まった。


「役立たず(アルケシス)の相手なんぞ俺一人で十分」

 と言って【ナターレ】のリーダー【マーロ】が一人で突っ込んできた。すかさず先頭に居たニケとその後ろに居たイングが援護に回る。


 キキン!ガッ、ガッ、ギギ、ギン!ダァ────ン!

「くぅ!流石上位ランカー。全然隙が無いねぇ~」

「ニケ!油断すると抜かれるぞ!集中しろ!」

「分かってるよ。真面目クン!」

 二人掛かりとはいえ、上位ランカー相手では油断も隙も無い様だ。ジリジリと追い込まれているイングとニケ。


「はっはー!弱い、弱すぎるぞ役立たず共!いっその事全員で来いや!」

「くっ………そ、そっちこそ一人でいいのか?」

「良いんだよ。あいつらは残りの試合の為の力の温存だ。今回は出番ねーよ」

 こちらは余裕な感じでニケとイングを翻弄しているマーロ。イングの挑発にも乗らず、次の試合の事を考えていた。

 その後方で残りの6人も、最早勝負はついたとばかりに集まって談笑していた。


 ──────────その油断が敗北を招く事を知らずに…………


「えいや!」

「……?」「!?」「え?」「うを?」「は?」「へ?」

 【アルケシス】側の壁・妨害担当、佐夜が地面に手を付けた瞬間、【ナターレ】側の残りの6人がいる場所に大きな穴が開いた。


「「「「「「うわああぁぁぁぁ──────────!!!」」」」」」

「って、何ぃ────────!?」

 当然、いきなりの事だから6人は深い穴底に落ちて行ってマーロも思わず振り返ってビックリする。勿論、この6人も結構ランクが上位にあるので放っておけば直ぐに上がって来るだろう。

 だが、そんなチャンス、佐夜達が逃すはずがなく、次の行動に移る。


 落とし穴に6人が落ちるちょっと前にマナがニケの元に走り出す。

 6人が落ち、マーロに隙が出来た瞬間、ニケが下がりマナを脇に抱えて6人が落ちた穴へ向かう。タックや双子のノンとロロも走り出す。

 マーロがすぐに意識を戻した時にはイングの他に佐夜、タック、双子のノンとロロが周りを囲っていて、すぐ横を抜けて行ったニケ達の妨害が出来ない。


 落ちた6人がすぐに上がろうとする前にマナを抱えたニケが穴の前に着き、マナを下ろす。そして、

「遅動魔法【ディレイスペル】解除。『エクスプロージョン』!!」

 実は試合の前から詠唱を終えて『ストック』していたマナ。通常なら5分はかかる大魔法を遅動詠唱によるストックで既に詠唱を終えていた為、試合直後にも関わらず、最初から使うことが出来た。実はこれ、佐夜の提案で開発した新魔法。


「っ!?」「げ!?」「え、何!?」「う、うわ!」「嘘だろ、おい!?」

「っくぅぅ!!」

 突如穴目掛けて放った上位火炎魔法『エクスプロージョン』に落ちた6人は回避が出来ない。一応白魔導士【レーシア】が障壁を張るが、深い穴の中にいる環境とマナの魔法の掛かる圧力が大きすぎる為、その障壁の意味が全く無く、


「「「「「「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ──────────!!!」」」」」」

 パパパパパパリンッ!!

 その一瞬にして穴に落ちた6人のジュエルが破壊され、戦闘不能となった。


「っ!?はあああっ!!」

 流石にヤバい状況に陥ったと悟ったマーロが魔力開放&自分に補助魔法(加速、筋力UP)を掛ける。

 しかし、状況は時既に遅し、


「うっ…………!」

「悪いなマーロ。俺達の勝ちだ」

「イング。まだ終わってないよ」

「でももう決着は着くよね」

「まあ、1対7じゃあ流石に勝てないだろうし」

 マーロの周りに【アルケシス】の全員が囲う。いくらマーロが強かろうがこの人数じゃ多勢に無勢。それに先ほどマーロも「全員で来い!」と言っていたので、そのお言葉に甘える。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「く……くそぉ………(バタリ)」

「はぁ、はぁ、はぁ………」

「や、やっと倒れた……」

「い、意外と、しぶと、かったね……」

「さ、流石上位ランカー……」

 6人を戦闘不能にして25分。制限時間ギリギリでようやくマーロを倒した。倒したけどマーロもかなり強く、タック、マナ、ロロが戦闘不能になった。残った4人もジュエルが赤とか黒になっている。かなりのギリギリな状態だったのだ。


 ちなみに5人以上を戦闘不能にした時点でイング達の勝利が確定していたが、マーロが「俺一人でこいつ等全員を倒すことが出来たら俺達の勝ちにしてくれ!」とお願いしてきてイングがそれを承認し、審判から続行の合図が出て、試合が続いた。

 イング達も余裕で勝てるだろうと高を括っていた結果。ギリギリで勝利した結果となった。今ではもの凄く後悔してる。

 とはいえ勝ちは勝ち。大金星だ。これで【アルケシス】は一勝。


 次の第2戦の【ノーク】戦と第3戦の【サレッド】戦では運良く(?)、イング達とそんなにチームランクの差が離れてなかった為(一応イング達よりはランクが上)、普通に頑張った結果何とか辛勝で連勝を飾る。

 その後の第4戦目の【クフィン】戦では、また上位チームと当たってしまい、みんなで相談して策を練ったのだが、第1戦目を見ていた仲間がいたらしく対策を立てられてしまい惜敗した。

 最後の第5戦なのだが、何故か相手チーム【ベルベル】の何人かが体調不良で【アルケシス】の不戦勝。


 その結果、4勝1敗で模擬戦は終了。なかなかの結果ではないかと思うがイングは何故か不満げな表情をしていた。

 筆記試験と魔法技能検定。そして模擬戦の全試合の結果は明後日発表予定。



次回はイングとエミリア王女のお話しです。

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