第2話 ~再び現れたアイツ~
もうお気付きの方もいるでしょうけど、佐夜の口調がまたおかしくなってます。
「死ね、このトカゲ野郎!」
ダダダダダダダ────
「グオオオオオオオ………っ」
アメリカの街中で突如現れた幻想界のリザードマンにガトリングガンを持った男が銃を乱射してハチの巣にして沈黙させる。
・・・・・・・・・・・・・・。
「やっ……ちょっと、このスライム服を溶かしてる!?」
「………(鼻血)」
「って! 呑気に眺めてないで助けなさいよ!」
「っ!」
イタリアでは大量発生した多種多様のスライムでの被害が多く出ていて、対処に手間取っていた。
・・・・・・・・・・・・・・。
「グアッ!」
「ムムッ!?」
中国の山奥では天龍(全長3メートルとやや小柄)とカンフー娘が対峙していた。
グゥゥゥゥゥゥ────
「グルルルルルルゥゥ………(バタリ)」
「ッ!?」
対峙……していたのだが、空腹状態で戦っていた天龍が腹ペコ限界で倒れ、カンフー娘が突然倒れる天龍にビックリ。
「アイヤー、腹減ってんのネ。ちょっと待つヨロシ」
そう言って娘は山小屋から保存食の燻製肉(大)を2つ持ってきて天龍の前に置く。
「グルゥ?」
「食べるヨロシ。腹減っている奴に勝っても嬉しくとも何ともないネ」
「……クワッ(ガブッ)」
既に敵意の無い相手に対し、天龍は少し躊躇うも、差し出された肉にかぶり付き、あっという間に平らげる。
そしてその恩義を感じ、その天龍はカンフー娘と友達になる。
──と、まあ、こんな感じで共存への道を取る奴も中にはいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔界からのやけに少なかった魔物を退け、追加で次元転移されてきた大量のモンスターに流石の軍やヒーロー達だけでは対応出来ない為、遂には唯の一般人までもが参戦するといった異常事態に各国の政府関係者達は皆頭を抱える。
とはいえ魔物と違い、一般人でも何とか倒せる程度のモンスターなので寧ろモン○ン的な感じで世界中でドンドン参加者達が増えていっているのはある意味危機を感じる。まぁ、その原因となったのは佐夜なんだけど……。
元々佐夜は戦う事の出来る人達相手(軍、ヒーロー)に送った歌なのだが、何故か歌の効果が強すぎて一般人までもが歌の影響を受け、魔物やモンスターに対する恐怖心が薄れ、やがて積極的に戦い始めてしまっていたのだ(勿論武器を所持して)。
学生で言えば野球部や、剣道部などの運動部。サバゲ部などの知略で戦う文化部。中には(弱者同士の)集団で敵を囲んでボコボコにするなど。
大人側なら銃の所持が認められている地域では銃で戦い、格闘家なら勿論その技で、最悪自分の車でメタ○ラアタックするなどといったアクション張りの行為をするサラリーマンなど、最早めちゃくちゃな事になっている。
「異世界の物が世界全体に関わると絶対毎回こうなるから密かに事を終わらせる様に言ったのに……」
『ミシバ・イクロ』&『魔界』そばの亜空間にある『サイエンGO』内のブリッジで薬の影響で未だ碌に身体が動かないゼロがモニターを見て黄昏た。
「ま、まあこうして起きてしまった事はどうしようもないですよゼロ殿。それに今回はユフィ殿が結界を張っているので事が終われば一般人達は元に戻ります」
「それは一部を除いて、だろ? 死んでしまった者や次元転移に巻き込まれた場合は元には戻らん」
「それはそうですが……」
「……ぶつくさ言っても何も解決はしないか。なら俺は俺の出来る事をするだけだ。君ももう戻っていいぞ」
「は」
そう言って楓の部下ツバキは忍らしくシュッと消え、ゼロは溜息をしながらようやく回復した腕の指先を操作し、『ミシバイクロ』の一般人達に出来るだけ被害が及ばない様に色々と裏で手を回した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
─────どこまでも、行けるはずさー
ビシッ!
ラスト12曲目の『∞に広がるユメ』を歌い切り、マイクを掴んだ右手を上げてフィニッシュ。
わあああああああああああ!!
それと同時に現場に残っていた度胸のあるスタッフや共演者達から拍手喝采され、満足気な佐夜の表情が凄くイイ!
ちなみに佐夜が12曲目を歌い終えるまでの間に既に武道館に転移してきた幻想界のモンスター達は正義達の手によって5分も掛からずに殲滅されている。まあ、勇者に魔王、世界破壊者の左腕(チャアの事)がいるから当然だ。
そして勿論フィニッシュと同時にネット上でも大騒ぎが確定し、あちこちのサーバーがダウンしまくってネット回線にも大きく影響し、その弊害で飛行機が離着陸出来ないというちょっとした災害が起きたが、それでも佐夜の歌による影響は凄まじく、歌の効果で『一般人でもモンスターに立ち向かわせる』といった普通では考えられない事が起きているとこの世界の専門家達は色んな意味で震えていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「な、何とか間に合ったけど流石に早すぎるわ!」
亜空間内の迷彩ボックスの中でBADEND大好きの提供者ノーンが焦っていた。
魔界の魔物が何故か少なすぎて物質界&協会機関相手では全く歯が立たず、それを補うために追加で投入した大量の幻想界のモンスター達は参加しない筈の一般人達が加わった為、戦力差が更に広がってしまい、一部を除き10分も掛からずに大量投入したモンスターの数がもう半分を切り、最早これでは惨劇など期待できない。
なのでその為に準備していた人形達を碌に点検もせずに急遽、別の世界から次元転移を用いて物質界、そして魔界へ転移させた。
「さぁ、あの時没になった悲劇を回収しようか舞華♪」
ノーンのこの急いだ行動が後々、自分の首を絞める事になろうとはこの時思いもしなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お疲れ佐夜」
「うん。みんなもお疲れー」
残ったスタッフや共演者達の絡みから解放された佐夜は舞台から降り、みんなの元に戻った。
ん? ……心なしか佐夜の口調がまた柔らかい様な気がする?
「それにしても本当にアンタは何でも出来るのねぇ」
「だな。これで男とかマジ詐欺だろ」
「もういっそ性転換すればいいと思うよ」
「良くないよっ」
愛沙や正義、チャアがそれぞれ好き勝手な事を言うので佐夜が吠える。特になんて事言うんだチャアは。
「うむむ……皆の者よ、ネットがエライ事になっとるぞい」
「あらあら……これは……っ」
真桜がリオから借りたタブレットを操作し、リアが覗き込むとそこには佐夜に関連する動画や掲示板で大荒れしている画面がそこに映っていた。
「おおう……見事に佐夜だらけじゃないコレ」
「って画面が動かない……フリーズしちゃってるじゃない」
「ダウンしてるんだな回線が……」
真桜に言われて覗き込んだロリ舞華と愛沙、そして画面が動かなくなったのを見て正義が言う。
「まるで私の世界であったネットクライシスじゃないの。こっちは原因が分かってるけど」
「実際あるんだそういうの……」
舞華が自分の世界で起こった事件を言い、佐夜がしみじみする。そもそもネットクライシスって確か何かの映画のタイトルやゲーム用語だった様な気がするんだけど……。
「ネットクライシスかー。いや懐かしいねぇー」
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
みんなでワイワイ騒いでいるといきなり聞こえてきた声に皆思わず声のする方を向くとそこには何やら可愛らしい謎生物がいた。
「あ、可愛い……」
「ストップですチャア。この生き物は危険ですっ」
「ぐえっ!?」
と、この可愛らしい生き物の事を知らないチャア(提供者の事は教えてはいる)がその可愛さに魅了され、不用意に近付くがリアがチャアの襟首を掴んで引き留め、チャアがカエルみたいな声を上げた。
「お前は提供者……だな?」
正義が鞘に手を掛けながら警戒する。
「うん。そうだよ。そしてそこにいる舞華の────」
「ピックル………」
「舞華? あ、お前……っ」
正義の問いに応えようとした提供者を見て舞華が呟き、無表情になった舞華を見て佐夜が心配し、再び提供者ノーンのアバター『ピックル』を見て絶句した。
実は佐夜が舞華の心の中に入った時、舞華が怒りあまり、このピックルを惨殺した光景が佐夜の頭に蘇り、舞華の闇落ちの原因となったピックルが再びこの場に現れた事で舞華の纏うオーラがドス黒い穢れとなり、舞華が一瞬にしてロリから年相応の魔法少女へと変身し、
「──元・あいぼ───っ!!」
ぶすっ!!!!
「死ねーっっっ!!!」
ブスブスブスブスブススススススススススs─────
変身したかと思った瞬間、舞華は佐夜達が瞬きする一瞬でピックルを斜め下ろしに突き刺し、叫びながら、何度も何度もピックルを滅多刺しにしていた。
「え、ちょっ、ちょちょちょちょっ!?」
「ま、舞華ストップストップ!!」
「お、落ち着いて下さい!」
まさかいきなりの展開に驚いたが、我に返った佐夜達は全員で舞華を取り押さえる。
「はァーっ、ハァーっ、はぁーっ………!!」
「どうどう、なのじゃっ!」
「な、何この娘……私ほどじゃないけど凄い力……っ」
「んぐぐぐぐ……っ」
今の舞華に近寄ったら一緒に殺されるかとも思ったが意外と敵味方の判断は付くらしく、取り押さえても攻撃はされない、されないけど舞華の目がかなりヤバく、まるで最初に出会った時の様な表情をしている。力自慢のチャアでさえ少し気を抜いたらまた突貫しそうなので気が抜けない。
「あははははははっ。流石僕の最高傑作ぅーっ」
「っ! お前ーっ!」
頭部だけ残ったピックルがその口で嗤うとまた舞華が逆上する。
「あ、ちなみにいくらこのボディを殺しても僕は死ななよー。僕は今『魔界』にいるからねっ」
「何だと!?」
「だから僕を、僕の本体を殺したかったら魔界まで来るんだね」
そう言って頭部だけ残ったアバターのピックルは事切れる。
「これはどう考えても罠だろ」
「そうですね、提供者の狙いは明らかに舞華さんでしょうし」
「というかどうやって魔界に行くんじゃろうか?」
「飛べば行けるのかな?」
「……………」
事切れたピックルの言葉にみんなが相談する。舞華は未だ発狂状態にあり、目が虚ろだ。怖すぎる。
「あ、そうそう!」
「「「「きゃっ!?」」」」
「「うわぁっ!?」」
「………っ!」
すると突然また事切れた筈のピックルの頭部が動き、話しかけてきてみんなビックリ。
「魔界の魔物。幻想界のモンスターだけじゃ物足りないよね。だから今度はもっと『抵抗』のある生き物を用意したよっ」
頭部だけになったピックルはケタケタと嗤いながら言う。正直この光景は正気を疑うね。さっきの舞華の状態もだけど。
「『抵抗』のある」
「生き物?」
そしてリアと愛沙が呟いた時、それは現れる。
シュン、シュシュシュシュシュシュン─────
「「「「「「「……………」」」」」」」
「え? これ…人間?」
チャアがそう言って見たのは人型の生き物。それも何やら全身タイツや、被り物、フリルなどが付いた服を着ている女達。
「あ、ああ……それもヒーローと呼ばれる連中だ。でも何か様子がおかしい。みんな、気を付けろ」
そう言う正義も剣を構えて襲撃に備える。
「この気配……舞華と同じ穢れ、かの?」
「え? ………という事はこの人達って────」
「闇落ち、ヒーロー?」
すると襲撃者をジッと見ていた真桜が舞華と同じ穢れを纏っていると感じ、佐夜と愛沙の顔に冷汗が垂れる。
「今までは魔物だったりモンスターだったりと異形の者だったから何の『抵抗』も無く殺せたんだろうけど、これだったらどうかなー?」
「抵抗ってそういう意味か!?」
頭だけピックルがケタケタと嗤いながら言い、正義がツッコむ。
「抵抗? 何の抵抗でしょうか?」
「寧ろ今までの雑魚よりは強いわけでしょ? ならチャアは大歓迎!」
「──って、ええっ!?」
ケタケタと嗤っていたピックルだったが、ここには殺人を容易に出来る人材が2人(リアとチャア)ほどいた事に驚愕した。まあ、世界破壊者の部下だしね。
「あーもういいや。じゃあ『落ちた英雄』達、派手に暴れちゃいな!」
をおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!
「っち、来るぞ!」
「あわ、あわわわわわ(汗)」
正義の声に我に返った佐夜が慌てテンパる。
ガキィン! ドォン、ドォン! ゴオオオオー!
「っ、確かに今までの数の多い雑魚と比べれば明らかに強いですね。しかし、」
「チャア達の敵じゃない、ね!」
ズバババッ───
ドドッッ!!
「「「「「「ガはっ!?」」」」」」
少しだけ本気を出したリアとチャアの前では闇落ちした程度の敵など2人には何の問題も無かった。
「まあ、舞華さんの時は抱えてしまった闇が深すぎる故に全力を出すのを躊躇ったというものありますけどね……」
対舞華戦ではいい様にやられていたリアが反省して、今回は全力ではないが、やや本気で対人戦に挑む。
正義や愛沙、佐夜や真桜といった物質界出身の人間には殺人にはピックルが言っていた様に抵抗がある。ましてや相手は闇落ちして自分の意志があるのかどうかも分からない。なので正当防衛で殺してもいいのかとも考えてしまう。
「あ、そうそう。これも言い忘れていたよ」
「っ!? 何なのさ、さっきから!」
すると三度動いた頭部のみのピックルにビクッとした佐夜がやや涙目で怒る。
「舞華ー。君の『仲間だった娘』達も僕と一緒に魔界にいるから。来るなら来てね~」
「───っ!?」
そう言ったピックルの言葉に反応した舞華がその殺意と共に残ったピックルの頭部を踏み砕いた。
「ま、舞華?」
背後ではやや無双状態の2人が闇落ち英雄達相手に大立ち合いしているので若干余裕があるためこうして舞華に近寄った佐夜。
「佐夜」
「は、ふぁい!?」
すると闇落ち状態にも関わらず自我がある舞華が言葉を発したのに佐夜がビックリして噛んだ。
「ワタシはこレからマ階にイッテ、奴を……滅ぼす!」
ドンッ!
「あ、舞華っ! 舞華ー!」
そう言い放った舞華はそのまま一直線に飛んで行った。おそらく最初に魔族が通って来たであろう空の裂け目から魔界に行くに違いない。佐夜が舞華を呼んでも舞華はそのまま佐夜の視界からいなくなった。
「どうしよう…このままだと舞華が……っ」
舞華が再び闇落ちし、提供者を追い詰める為に魔界に行ってしまった。
舞華の心の中で佐夜は舞華に『納得のいく結末』を約束していた。しかし今、舞華は暴走状態だ。このままだとどう考えてもバッドエンド一直線に進む道しか見えない。佐夜は途方に暮れる。
「佐夜! 今ならまだ間に合う! 俺に掴まれ!」
「え?」
すると突然正義が鞘に向かって手を差し伸べる。
「俺は『勇者』で『飛行』が使えるんだ。だから俺に捕まれば舞華を追いかけられる。だから早く掴まれ!」
「正義……。ああ、分かった、お願い!」
ぎゅっと差し伸べた正義の手を佐夜は掴み、ゆっくりと浮かび上がる。
「む~~」
「お、お姉ちゃん。佐夜に嫉妬してもしょうがあるまいに……」
「だ、だって~~」
「あーよしよしなのじゃ」
まるで主人公とヒロインみたいな感じの2人に嫉妬した愛沙が真桜によしよしされる。何この光景……。
「じゃあ、早く追いかけるぞ。しっかり掴まれっ」
「うん!」
「……後、言い忘れてたけど、お前、また口調が『僕っ子』になってるぞ」
「っ!? ぜ、善処する………」
そう言って2人は飛んで行った舞華を追いかけて魔界へ向かった。
「じゃじゃーん! リオちゃん参上! さやや、みんな、助けに来たよ。ってアレ? さややは?」
「佐夜ならお兄ちゃんと一緒に魔界に行ったのじゃ」
「はぁ!?」
入れ違いになったリオが叫んだ。
次回は『対・闇落ち英雄』です。




