第3話 ~よく見れば他の4人もかなり美人~
前回の予告で言っていたパロディー的な展開はちょっと長くなるので次回へ回します。
今回はその直前で一旦切りました。
あれから十数分後、愛沙や真桜、陽菜々の説得を受け、ようやくいつもの落ち着きを取り戻したリア。
落ち着きを取り戻す前、混乱している間、ずっと佐夜の身体を至る所まで弄っていて、ようやく落ち着く頃には、佐夜の男としての精神が限界ギリギリまで追いつめられていた。このまま犯られていたら、リオみたいになってしまうかもしれない。
「……なるほど。貴女方の事情は概ね理解しました。佐夜さんの性別については未だ納得はしていませんが」
「何でだよっ!?」
今まで黙っていた事に対してのお仕置きとして、リアに頬っぺたを『うにょ~ん』された佐夜が頬を擦りながら吠える。
「そこは大丈夫。本人以外みんな同じ気持ちだから」
「「うんうん」」
「だから何でだよっ!?」
愛沙達3人の同意に佐夜が以下同文。
「そもそも、佐夜さんだからこんな罰(頬っぺた『うにょ~ん』)許されてるんだよ? これがもし他の男性が女装したり、女の人に変身して(温泉に)入っていたりしていたらリアさんに殺されてるよっ」
「いやいや、流石に殺しはしないでしょ?」
「そうですね」
陽菜々の物騒な言い分に佐夜は勿論、リアも否定する。
「精々女装なら下の物を切り落とし、変身で女性に化けていたのならその場で拘束し、変身を解けせずに男共が大勢いる目の前に裸で放置するくらいでしょうか?」
「それはそれでもっと酷いっ!?」
それをされるくらいなら死んだ方がマシだ。
「普通の男達にそんな事をしたら、きっと新たな世界に目覚めさせるじゃろうな」
「どこからそんな知識を得たの真桜!?」
姉妹の2人は姉妹で漫才をやっていた。
「こほん。つまりそれだけ佐夜さんが女性らしかったという事です。勿論見た目だけではなく内面や匂い、気配など。……私が佐夜さんを男だと気付かなかったのにも理解はしますが納得は出来そうにないですね」
「「「うんうんうん」」」
「だから何でってばー!」
やはり佐夜がどう言ってもこの4人は佐夜を男として見てはいない様だ。
実際に旅館で借りた部屋も通常は男女同伴なら2つは借りる所なのだが、何故か今回一室だけしか借りなかったし。
「さ、みんな。早く夕飯を食べないと旅館の人も片付けられないから早く食べて寝るわよ」
愛沙がそう言って部屋に付いている時計を指差すと、時間はもう夜の11時を指していた。なのでみんなで早急に夕飯を頂く。
少し時間が経っていたが、海鮮と山の幸(松茸入り)の料理がとても美味しく、特にリアは『霜降り牛』なる物を(当然だけど)初めて食べ、超感動していた。思わず旅館の人を呼び出しておかわりを要求するくらい気に入ったらしい。その証拠にウサ耳が凄いうっさうっさしていて陽菜々に取り押さえられる。旅館の人に動いている所を見られるのはマズいからね。
そして食べ終わり、食器を下げて貰い、布団を引いて寝る頃にはもう夜中の1時を回っており、陽菜々が既に佐夜の膝で眠っている。
「……やっぱり佐夜。お姉さんっぽいよね」
「……ですね。とても男らしい行動とは思えません」
「じゃのう。魔王城でも妾、佐夜に甘えまくりじゃったからな。正直陽菜々が羨しいのぅ」
「あははは……お姉さんって………」
「ZZZzzz………」
愛沙がジト目で、リアが温かい目で、真桜が指を咥えて羨ましそうにしている。
そんなこんなで夜も更けていき、5人は久しぶりにゆっくり就寝した。
ちなみに早朝、旅館の女将が5人の様子を見に来た時、5人が寄り添って寝ていた(単に佐夜以外の4人の寝相が悪いだけ)のを見て「あらあら、仲良しですね~」と呟いてそっと襖を締めたそうだ。
そして翌日。
時刻は午前11時前後。
「う、うにゃああああ~~~~~~~~っ!!?」
突如として旅館内に佐夜の可愛らしい悲鳴が轟き、両隣の部屋の旅行客や廊下を偶然歩いていた仲居が「何事?」とばかりに部屋を覗きに来るが、愛沙が対応して事なきを得た。
何があったのかというと、1番最後に目が覚めた佐夜が目にしたのは、4人が丁度着替える所で、見た目が超美少女な佐夜だが中身は健全(?)な男の子。当然朝からそんな刺激が強い物をいきなり見せられれば、いくら佐夜だろうが錯乱するに決まっている。
と、いうわけでこんな事になった。
ちなみに何故眠っているとはいえ、男の佐夜の目の前で着替えをしていたのかというと、4人は揃いも揃ってこう言った。
「あー…そうだった。ゴメン(テヘペロ♪)」
と。つまり佐夜が男だというのをすっかり忘れていたらしい。後、昨日(?)の怪我のダメージと、服屋でのファッションショー(笑)で佐夜がかなり疲労しているだろうという事でギリギリまで寝かしてやろうと思っていたらしい。
その後、何故かぷんすかぷんすか怒る(可愛い)佐夜を宥めつつ旅館を退館した五人はまず、佐夜の希望で『うにクロ(某服屋)』に向かい、佐夜が男物の服を試着したのだが、それを見た4人の感想はどれも「似合わない」と言われ、佐夜は已む無く中性的な服をチョイスした。
が、それを着た佐夜を見た4人に結局「可愛いっ」と言われ、佐夜orz……。
その後、再びぷんすかする佐夜をあやしつつ、5人が向かったのは昨日【リ・アンフィル】の店員に教えてもらった美味しいと評判のクレープ屋。現在の時刻が3時なのでおやつの時間に丁度いい時間帯だろうという事でそれぞれが好きなクレープを食べ歩きしながら街を練り歩く。
「な、何かずっと凄い見られてるんだけど、気の所為か?」
「……気の所為じゃないわよ」
実は先ほど旅館を出て『うにクロ』に寄り、クレープ屋でクレープを買うまでの間、ずっと通行人達に見られていた佐夜達一行。大きな通行量がある交差点に差し掛かった時それまでより大量の視線を浴びた佐夜が不安でキョロキョロし、その視線が意味する理由を何となく理解している愛沙が溜息を付いた。ちなみにリアや陽菜々、真桜も視線がずっと気になっていたが、それがどういったものの類なのかは分かってはいないので気付かぬ振りをしていたのだ。
実はこれ佐夜達5人が美人過ぎるが故の視線なのだ。
今日は土曜日、平日よりも道路の通行量が格段に増える休日に目を見張るほどの美女が揃ってクレープなんぞ食べ歩きなんてしていたら注目されるのなんて当たり前の話である。………中に一人男が混じっているけど。
昨日もある程度注目はされてはいたが平日の金曜日な上、服屋という限定的な場所での注目だったので、ここまで大多数の視線を浴びるとは愛沙も思っていなかったのだ。なので、
「……鬱陶しいですですね。ならここは『威圧』で────」
「ちょ、ちょちょちょリアさん!?」
「ダメっ、交通事故が起きちゃう!」
「「あわわわわ」」
普通の人間より感覚が鋭い亜人のリアが険しい表情でスキルを使おうとするが間一髪で佐夜と愛沙に止められる。
ここは『幻想界』ではなく『物質界』なのだ。下手に魔法やスキルなんて使おうものなら何が起きるか分からない。
しかもここは交差点も多い大通り。リアが『威圧』を使っていたら、車を運転しているドライバー達が気絶して大惨事になるのが目に見える。
「しかし何で俺達こんなに注目されてるんだ?」
「ですね。実に不愉快です」
「おそらくリアの耳じゃないかのぅ?」
「あー確かに目立つもんねー」
「あ、あんたらね………」
何で目立っているのか分かっていない4人が的外れな事を言い、愛沙が呆れる。
まあ、リアのウサ耳は帽子で狐耳を隠している陽奈々みたいな事は出来ない為、確かに目立つ。念の為カチューシャを着けて『作り物』っぽくしている為、リアがウッサウッさと耳を動かさない限り誰も本物とは気付かないだろう。
このままだと物質界に慣れていないリアが暴走しそうなので愛沙がこの視線が意味する理由を佐夜を含め4人に話す。
「羨望の眼差し……ですか」
「そういう風に見られてるんだったら……」
「悪い気はせんのぅ」
美人だと評されている事で若干気を良くしたリアとちみっこ2人。
「いやいや、それだと俺も『美(少)女』だと思われているって事じゃん!?」
だが何故か佐夜が謎の抗議をする。だが、
「何を言ってるの? 当たり前じゃない」
「ですね。寧ろこの中じゃ佐夜さんがダントツで視線を集めている様ですし」
「ナンダッテ!?」
「……何でカタコトなのだ?」
至極当然の事を言う愛沙とリアに何故か驚愕した佐夜がカタコトになり真桜が眉を顰める。
結局何を着ても佐夜は男には見られない様だ。
「あ、あのっ!」
「え?」
5人がなんやかんやしてると突然、一人の少女が佐夜の元へやって来た。
「昨日の【リ・アンフィル】でのファッションショー。凄く綺麗で可愛かったです!」
「あ、ああ…そう………」
少女の興奮に引き攣った顔になる佐夜。
「今日これから彼氏とデートなんですけど、ほらこれ、昨日貴女が着ていた物と同じ物なんだけど、気に入っちゃいました」
「そ、そっか。それはヨカッタネー」
「はいっ」
よく見ればこの少女が着ている服は昨日、佐夜が着た服の一着で、それを客観的に少女を見た佐夜は似合うなーと思いながらも棒読みでしか返せなかった。昨日自分がこれを着ていたかと思うと凄く微妙な気分になるからだ。
「よ、良かったじゃない佐夜。可愛いって褒められたじゃない」
「嬉しくないよっ」
愛沙がフォローを掛けるが全く嬉しくない。
その後も5人が街を歩いていると、佐夜が昨日着ていた服と同じ物を着用する少女や女性達に佐夜が呼び止められて嬉しくもない称賛をされたり──
佐夜ほどではないが少女モデルにされた陽菜々や真桜も同じく声を掛けられたり──
リアの(自然と動いてしまう)ウサ耳に目を引かれた男性達が無謀にもリアに声を掛け、不機嫌になったリアが平手打ちで男性達を黙らせるその姿に女性達の尊敬の眼差しが向けられてギョッとなる。
ちなみに愛沙はずっと佐夜の側でフォローを掛け続けている為、あまり声を掛けられずに済んだ。
そして午後4時、街に居ると声を掛けまくられるので大きな公園に避難した5人。既に愛沙以外ぐったりしていてベンチで飲み物を飲んでいる。
「俺ってもう男じゃないのかなー? あははは……」
「佐夜、しっかりするのじゃー!」
男としてのプライドを木っ端微塵にされた佐夜がリストラされたリーマンの様な虚ろな目で黄昏れて真桜に肩を揺さぶられる。
「それにしても全く現状が掴めないわね」
「うん。分かっているのは……」
「アレですね」
愛沙と陽菜々、リアが空を見上げる。
そこには空に大きな穴がポッカリ開いていて3人の不安を駆り立てる。
最初この地に不時着した時からあった穴なのだが、実はアレ、協会が言っていた『次元の裂け目(穴)』なのだが、色んな人に聞いてもみんなあの穴が見えない様だ。5人に見えてこの世界の人達に見えないという事は5人がこの世界の人じゃないからなのか、普通の人には見えない『異能』持ちだからなのかは分からない。
分からないがあの穴を見ると何か良くない事が起きると5人の直感がそう言っている。……今の佐夜はそれどころじゃないけども。
5人が居るこの公園は過酷な某アトラクション番組をモチーフにした遊具が所すましに存在し、午後5時前だというのに結構な家族連れや、次回番組に向けて特訓中の筋肉自慢達が遊具で遊んでいる(?)。
「何だかアレ、楽しそうですね」
「……リアさんやってみます?」
「ええ、どうやるのか教えてもらえますか?」
「分かったわ。じゃあ、陽菜々ちゃん、真桜、佐夜をお願いね」
「はーい」「うむ」
死んでいる佐夜(笑)をちみっこに任せ、愛沙はリアを連れて1stステージをモチーフにした遊具へ連れて行った。
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~SS~
リオ「にゃ~ん」
ヴァン「いやリオ。ウサ耳着けて『にゃ~ん』は違うだろ」
リオ「わお~ん」
ヴァン「それは犬だな」
リオ「ウサウサ」
ヴァン「ウサギは鳴かない」
リオ「ぎゃお?」
ヴァン「……怪獣か? つか何でお前はそんな物着けてるんだ?」
リオ「いやー、剛ぽんの部下にウサ耳の人が居るって聞いてね、せっかくだからこの前【レニアナ】で買ったウサ耳を着けてみたの。do?」
ヴァン「いや、せっかくの意味が分からん。つか世界破壊者をあだ名で呼ぶとか度胸凄いな」
リオ「えへへ~」
ヴァン「褒めてねーよ」
はい、お疲れさまでした(?)
次回は予告通りパロディー的な展開です。
ネタバレとしまして具体的には『ニチアサ』です。
ではまた。