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プロローグ ~忍と戦乙女とエンターテイナー~

第三章のプロローグです。走り書きしたので誤字や説明不足などがあるやもしれません。

 ここは膨大な数がある物質界────のとある一つの世界。


 時刻は丁度お昼過ぎ頃、天候は快晴で絶好な洗濯日和────


 な、筈なのだが、何故か空が紫に染まり、まるで世界の終わりを示しているかの様になっていて、当然その世界に住む人達はパニックになり大混乱を引き起こしていた。


 そんな中、世界の中心といえる場所でこの災厄を引き起こした魔王らしき者と、それに立ち向かう4人の伝説の※戦乙女いくさおとめが対峙していた。

 ※:魔法少女とかプリ○ュアみたいな者と考えればおk。


「がーはっはっはァ─────っ! どうした伝説の戦乙女いくさおとめとやら。まるで歯が立たないではないか」

「「「「くっ………」」」」

 

 宙に浮かびながら嗤う魔王にボロボロの戦乙女達は歯を食いしばりながら何とか立ち上がる。


 これまでにも何度も窮地に立たされながら、何とか勝利を収めてきた戦乙女。


 けれど、こちらの攻撃を喰らっても相手はこの世界に充満した穢れた魔力(・・・・・)とやらで回復するのでこの相手には全く歯が立たない。まるで意味が無いのだ。

 逆にこちらは世界が闇に覆われている所為か普段の力が全く出せず、おまけに回復なんて出来ないのでどんどん疲弊するばっかりだ。

 

「………けど、私達は負けないっ」

「絶対に……みんなを…守るっ!」

「愛と正義は絶対、悪には屈しないんだからっ」

「みんな、行くよっ!」

 

 「やあああっ!」っと言いながら4人の戦乙女達は魔王に向かって行く。


「ふんっ!」

「「「「きゃああああああああ!!」」」」


 だがラスボス(?)の前では一体となって繰り出した攻撃も、軽くあしらわれて4人はふっ飛ばされてビルを突き破り地面に激突する。一応、変身の特典としてある程度の衝撃は軽減されているが、それでも大ダメージは免れなく、ついに4人中3人は立つ事が出来なくなった。


「ま、まだ……よ………。私達が負けたら…この世界は………」

「そうだ、我ら災魔が支配……いや、食いつくして滅ぼしてやろう」

「「「「っ!?」」」」

 一人だけ何とか立ち上がる事が出来た戦乙女に魔王が無慈悲で絶望的な事を言い、4人の顔が悲壮に染まる。


「そうだ、その顔が見たかったのだ。くくく、いい顔になった」

 そう言って魔王は更に右手を上に掲げそのまま振り下ろす。


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


 魔王が手を振り下ろした直後、街の学校や商店街当たりに特大の雷が落ち、遅れて轟音が4人の耳を叩く。


「あ……あああ、そんな………」

「街が……みんなが……」

「うそ、嘘よ……こんなの嘘よ!」

 へたり込んだまま燃え盛る街を見て悲壮が絶望の顔になる3人。


「………許さない。あんただけは……絶対に許さないっ!!」

 だがそれとは対照的に唯一立ち上がっている戦乙女が魔王の所業に怒り、全身から憎悪の炎が噴き出る。


「いいぞ。それだ、それも見たかったのだよ。愛と正義を語る者が憎悪を抱く、その姿がな」

 満足気な表情で頷く魔王。その間にも憎悪を纏った戦乙女が魔王に迫る。


 が、

「だが、まだ足りん」

「がっ!?」

 怒りで痛みが一時的に収まっている戦乙女がそこそこ魔王と対等(?)に戦っている様に4人は見えたが、それすら魔王にとって何の脅威にもなっておらず、1分も立たずに、また魔王にふっ飛ばされ他の3人の近くに落ちる。


「「「舞華!」」」

 すかさず少し体力が回復した3人が舞華と呼ばれる戦乙女に駆け寄る。


「いいぞ、泣け、叫べ、喚け、怒れ。我に憎悪を抱き、絶望せよ。その負の感情こそが我にとって最高の力となるのだ」

 そう言って嗤う魔王に、舞華がやられた他の3人の顔にも諦めの雰囲気が漂う。


「さて、このまま殺してやっても良いがどうだ? 我の配下になれば主らは助けてやっても良いぞ?」

「「「え……?」」」

 すると魔王の悪魔の囁きに3人の戦乙女達が動揺する。


 流石の今回ばかりは勝てる相手じゃない。確実に死が垣間見える状況だ。


 ならば偽りでも相手に服従する振りをした方が良いのではないか?


 そんな考えが3人によぎる。


「ば…かな事……言わない…でよ」

「「「舞華っ」」」

 すると目が覚めた舞華が魔王を睨みつける様に言う。


「例え死ぬとしても……私達は貴方の言いなりになんてなったりしないっ」

 まるでここから逆転するかの様なセリフを吐く舞華。まるでアニメの終盤を観ているかの様だ。


「ふっ、言うと思ったわ。ならばこれで死ぬがいい!」

 そういい、魔王が左手を上に掲げた。


 その時、


 シュルルルルルルルルルルr───────


「な、何だこれは!?」

 突如魔王の下から黒いリボンみたいな物が現れ、魔王に巻き付き、魔王は身動きが取れなくなった。



「負の感情が貴様の力を増幅させる、か」



 すると突然、何の脈絡もなくフッと戦乙女達の前に現れたのは一人の『しのび』。それも女の人なので言わば『くノいち』という奴だろう。


「貴様が何者か知らんが、こんなもの──────」

 と、魔王が力任せに引き千切ろうとするが、黒いリボンみたいな物は全くビクともしない。


「忍法『影縄縛り』。それは相手の魔力が強いほど強く巻き付く仕組みになっていて、無理に千切ろうとすれば」

「ぬががが……がが…ぁ………?」

「こうなるわけ」

 表れてからものの一瞬にして戦乙女達が大苦戦してきた相手の動きを封じてしまったくノ一に4人の戦乙女達の顔が引きつった。


「あ、貴女は一体────」

 舞華が謎のくノ一に訪ねようと近付いた時、


「あっ、みんな見てっ、空が────」

 戦乙女の一人が空を指差すとそこには、

「空が……晴れていく……?」

 先ほどまで紫の闇に覆われていた空が、これまたいつの間にか現れていた空間の裂け目から穢れた魔力が吸い込まれていき、どんどん空が透き通った青になる。


「ぎ…ざま……一体……何者…だ?」

 もがいていた魔王が苦しみながらも謎のくノ一に問う。


「貴様の様な外の世界から侵略しにくる者達を排除する者だ」


「ぎ、ぎやば……らぁ!!?」


 ブシャッ──────


 謎のくノ一【上条かみじょう かえで】が最後のセリフを吐くのと同時に魔王を縛っていた『影縄縛り』がその許容限界値を越え、いとも簡単に無残にも魔王をバラバラにした。


「私達があんなに苦労した相手を………」

 あれだけ苦戦を強いられてきたのにもかかわらず、現れてものの1~2分で魔王を倒した事に舞華はおろか、他の3人もorz。


「まだ終わってない」

「「「「え?」」」」


 楓がそう言うと、魔王の残骸から何やら煙の様な物が噴き出て上空に漂う。


「あ」

 魔王の魂(?)らしきものがいる場所(・・・・)を見て楓は短く言葉を切る。


「ふはははは。たとえ我の身体が使えなくとも、魔王は死なん! 残念だったな」

「「「「そ、そんな……」」」」

 魔王の不死身さに「やっぱり勝てないの?」と言わんばかりに黄昏が戦乙女達に降りる。



 しかし、

「そこ、危ないわよ」

「へ?」

 楓の発言に魔王が変な声を出す。


 そう、魔王(煙バージョン)がいる場所は、


 先ほど穢れた魔力を世界の外に出す為に開けた穴のすぐ近くだった。


「ぬ……ぬおおおおおおおおっ!!?」

 それに気付いた魔王だったが、それよりも早く穴が煙となった魔王を感知し、どんどん吸い込んでいく。


「ちなみに穴の行先は穢れた物(者)を浄化させる場所、『地獄』よ。そのまま逝きな」

 「アホだなぁ」と溜息を付きながら楓は口元を後輩が作ってくれたマフラーで隠し、腕を組んで言った。


「き……きさ…ま……覚えてろぉ────」

 断末魔を残し、この世界を闇に覆っていた魔王は完全にこの世界から消えた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あ、あの……助けてくれてありがとう……でいいんだよね?」

 戦乙女の他の3人が寄り添って立ち上がる中、普通に歩けるまで回復した舞華が楓の元にやって来て感謝する。


 しかし、

「いや、まだ終わってないって」

「え?」

 楓の言葉に舞華が固まる。


「おかしら、逃走していた異形の者達を捉えました」

「きゃっ!?」

 すると突然舞華の背後から楓の部下らしき人が現れた事で舞華がビックリする。


「うむ、ご苦労さま。連れて来てくれ」

「はっ!」

 そんな舞華を放っておき、楓は部下に『捕らえた異形の者達』を連れてくるように言う。

 一体何だろうと舞華が楓の部下達が持つマスコットみたいな小動物に目がいった。


「ピックル!?」

 それは舞華達少女を、戦乙女へ変身させる一因となった異世界の住人で、

「魔界からの侵攻で自分達の世界が危険に冒されているから助けて!」

 と目をウルウルさせる事で舞華達の乙女心と母性本能を刺激し、『代理戦争』をさせていたのだ。


「何で!? 何でピックルを捕まえているの!? 離して!」

 当然舞華がそれを黙っている訳もなく楓に噛み付く。


「無理だ。というかあんたら、こいつに騙されている事に気付いてないのか?」 

「……どういう事? 『代理戦争』の事についてはちゃんと謝ってもらって──」

「そこじゃない」

「え………?」

 てっきり『代理戦争』の事を言っているのかと思っていたが楓に否定される舞華。


「こいつは『提供者エンターテイナー』といってな。所謂いわゆる視聴者を楽しませるのを生業なりわいとしている生き物だ」

「エンター……テイナー? それに視聴者って?」

 ピックルと他の3匹からそんな事を一切聞いていない舞華が視線をピックル達に向けるが、当の本人(?)は何の悪びれもなく無表情でこちらを見つめていた。


「この場合の視聴者と言うのは別の世界の人達の事。あんた達は今まで戦った経緯やその時の映像をこいつの目から別の世界に送っていた。つまりあんた等は別の世界の者達をまるで特撮を見ているかの様に楽しませていただけだ」

 そう言いながら楓は実際に放送されている別の世界から映像を引っ張り出し、デバイスに映して舞華達に見せる。

「そ、そんな……」

「私達、騙されていたの?」

「ひ、酷過ぎる……」

 それを見た3人は膝から崩れ落ち、虚ろな表情で契約した小動物を見つめる。


「で、でも実際にこの世界に災魔の魔王が来たじゃない! なら私は騙されたとはおもわな─────」

「あれは違うぞ」

「………え?」

 これまで経緯はともかく、今回魔王が来たゆえに自分の選択が間違ってない事を主張する舞華だったが、それすら否定される。


「この世界の『記録アカシックレコード』を見て何とか連勝を収めてきたあんた等に、これまた『関係ない世界から誘導された魔王』をあんた等にぶつけ、苦しませてこの後どうなるかを、この映像が流れている別の世界の住人達がこぞって『賭け事』をしていてもか?」

 更に楓はこの世界の記録アカシックレコードや別の世界の賭け場(トトカルチョ)の映像を見せる。



「つまりあんた等は最初から『戦う』義理も理由なんて無いんだよ」



 そう楓が言うのと同時にドサドサと他の3人が倒れ、元の学生服に戻る。

「みんなっ!?」

「大丈夫、このまま変身した状態でいられると色々危険だから気絶させただけ」

 舞華がショック状態からビックリするが楓が冷静に説明する。ちなみに他の3人の首に手刀を当てて気絶させたのは他でもない楓の部下達だ。


「実際にこいつらの世界が襲われていると言っていた場所せかいはその時用に作られたただの張りぼてで、そこに住む住人達も俳優とエキストラだ」

「え、ちょ、ちょっと待ってよ……訳わかんないよ……」

 次々と新事実を突きつけられてパニックになる舞華。


「ね、ねぇ、嘘だと、嘘だと言ってよ。ピックル!」

 遂に現実に耐え切れず、自分が信じてきた小動物に審議を問いた。


「嘘じゃないよ」

「え………?」

 するとこれまで黙って来たピックルが淡々と言う。


「僕たちは『提供者エンターテイナー』。この世界じゃない別の世界の視聴者を楽しませる為だけに作られた生き物なんだよ」

 

 自分が信じ続けたピックルから事実を告げられた舞華の世界が真っ白になった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「お? やっと戻ってきおったn……って何やそのコスプレ少女は?」

 亜空間に漂う艦『蒼天楼』に戻ってきた楓を出迎えたのは一人の剣士の恰好をしたやけに似非関西弁を話す少年。

 名前は【イオン・クルーバー】。名前の通り、日本人ではなく異世界出身の魔剣士なのだが、日本語の教材が悪かったのか、こんな喋りになってしまった残念な少年。


「これ? まぁ、地上で色々あって……」

「そ、そか……」

 舞華を背負う部下と共に歩いてくる楓に、珍しくダメージが入っているのが見えて、イオンは少し驚く。


「ブリッジにゼクターはんが居てるから報告はそっちになー」

「ええ」

 楓の姿を確認したイオンは手を振ってそのまま自分の部屋に戻って行った。


 ピックルから告げられた真実の後、闇落ちしそうになった舞華が変身状態のまま暴走し、楓は愚か、部下達も何人か軽傷を負っている。

 もし、楓達が舞華を取り押さえられずに逃げられてもしたら、『世界破壊者コードブレイカー』になっていたかもしれない。


「私もまだまだ修行が足りないな」

 そう言って楓は溜息を付きつつ、舞華を背負う部下を鍵付き部屋に舞華を連れて行く様に言い、自分はゼクターに報告の為、ブリッジへ向かった。



次回、次元転移した佐夜達のターンです。

ではまた。

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