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第21話 ~佐夜の錬成術~

胸にビームを撃たれて重傷を負った佐夜が無茶します。

 ビ────、ビ────、ビ────、


「魔力値、世界耐久値をかなり大きく上まってます。このままでは……っ」

「爆発して世界にかなり大きな穴が開くか、魔力が捻じれてあの空間が潰れるか………か」

 亜空間内に漂う艦『ベルガイア』のブリッジで透が焦りながらパネルを操作し、薬の副作用でロクに身体が動かないゼロは背もたれにもたれながら、回らない頭で思考する。


「……透、あの空間内にいる陽菜々と連絡は取れるか?」

「少々お待ちを……はい、大丈夫です。直接転送による脱出は巨大で濃い魔力に干渉して出来そうにありませんが、通話は可能です」

「……ならすぐ繋げろ。早く」

「はい!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ─────────


 頭を抱えて絶叫する真桜。その途端に巨大で濃厚な魔力が溢れ出し、この場にいる4人を飲み込んだ。


「くっ……なんて濃い魔力………っ」

 『冷酷』の残骸がある場所から真桜の暴走した濃い魔力が身体全体に圧し掛かり、全く身動きが出来なくなったリアが何とか動こうとするが身体が重く感じて全然進めない。


「真桜っ! くっ……佐夜も大変な事になってるのに真桜まで……っ」

「キューン………」

 真桜の魔力にし掛かられて潰れている陽菜々、それと残り少ない魔力で佐夜に回復ヒールを掛ける愛沙が真桜を見て歯噛む。

 出来るならすぐに真桜の元に行きたいが、身動きが出来ない上に今、佐夜に掛けている回復をやめてしまうと今度は佐夜が危ない。


≪陽菜々聞こえるか、聞こえたらすぐ応答しろ!≫

「キュッ!? ま、マスター!?」

 その時陽菜々の持つスマホから緊急用の通信が入る。相手は勿論『ベルガイア』にいるゼロだ。


≪陽菜々、濃い魔力の所為でこちらからそちらの状況は詳しく確認出来ないが、今そちらはどんな状況だ?≫

「え? えっとね────」

 魔力の重圧に潰されながらも陽菜々は必死に状況を伝えた。緊急時だからなのか、陽菜々がいつもより饒舌だった事にゼロは一瞬「……こいつ誰だ?」と思いつつ陽菜々に指示を指す。


≪こちらからお前達を転送しようにも濃い魔力が干渉して出来そうにないから陽菜々、お前の転移テレポートで脱出するしかない。出来るか?≫

「む…無理です~!」

 さっきの爆発の抑え込みで体力は勿論、魔力も使い果たした陽菜々では転移テレポートはおろか走って逃げる事すらできない(魔力の重圧により)。


≪なら一か八かその濃い魔力に干渉し、その魔力を持って転移テレポートするしか他ないな≫

「え…でも……」

 ゼロの提案に陽菜々は戸惑う。

 何故ならそれを行うには魔力を持っている者、すなわち真桜に接触しなければならないのだが、現在真桜と陽菜々との距離は約4~5メートル。通常なら大した距離ではないが、今、この場は真桜の魔力暴走により重圧が凄く、陽菜々は地面に平伏している状況。立てる程の体力は無いので現状、真桜の元に行くには匍匐前進するしかない。

 それと陽菜々にはもう一つ懸念があった。それは相手の魔力が自分に適合するかどうかだ。勿論自分の魔力と合わなければ相手の魔力を受け取るどころか、その魔力が身体に悪い影響を与えダメージを受ける事になる。


「ひ……陽菜…々………」

「キュッ!?」

「佐夜!? 目が覚めたの!?」

 すると愛沙に回復ヒールを掛けられていた佐夜が震えた事を発しながら目を覚まし愛沙の回復ヒールが止まる。


「がはっ!?」

「ってああ佐夜!? 回復ヒール、ヒール!」

 胸に穴が開いた状態で回復を途中で止められた佐夜が吐血し、慌てて愛沙が回復ヒールを掛けなおす。


「はぁ、はぁ、陽菜々……ゼロ、話は……何となく聞いt……かはっ」

「佐夜、喋ったらダメ!」

 再び吐血した佐夜に愛沙が怒る。


「愛沙、いいから……っ。で、だ、陽菜々……俺にまで真桜の魔力を回せ……そうすれば……」

≪そうかっ。佐夜は錬成師……魔力が適合出来なくても佐夜を変換器に見立てて魔力を変換し、その魔力を陽菜々に回せば……≫

 佐夜が錬成師であることを思い出したゼロは佐夜の言葉を引き継いで陽菜々に説明する。


 ちなみに錬成師である佐夜は前にいた幻想界【レニアナ】でイングが魔力枯渇(1章・14話参照)したときに、自身の魔力をイングの魔力に合う様に練り(錬成し)、キスで魔力を譲渡していたのだ。ちなみにイングも佐夜も()同士であるが、あの時は緊急時だったのでしょうがない。人工呼吸みたいなものだ。


「でもそれじゃあ佐夜さんの身体が持たないよ!?」

「いい…からっ。このままじゃ俺達だけじゃなく……外のみんなまで全滅してしまう……げほっ」

「「佐夜」さん!?」

「は、早く……っ」

 愛沙と陽菜々の掛け声に佐夜は2人を急かす。


≪桜井係長! 世界耐久限界まであと2分です!≫

≪……ちっ、この世界全域に限定封鎖を掛けて脱出までの時間を稼げ≫

≪りょ、了解!≫

 どうやら世界の外でもゴタゴタしている様で、ゼロが気怠そうな声で透に指示を出す。これでもう少し時間が稼げそうだ。


「くっ……佐夜さん。頑張ってっ」

 大人しくゼロと佐夜に従った陽菜々は匍匐前進で真桜の元に行く。

「佐夜、頑張って……っ」

 佐夜に真桜の魔力を回す為、佐夜の手と陽菜々の足を掴む愛沙。 


 ズリズリと真桜に近付く陽菜々。


「も、もう少しなのに…届かない……っ!?」

 だが、あと少し、届かない。丁度手を広げて一人分くらいの距離だ。


 こうなったら多少佐夜を引き摺って無理をさせてでもして近付くしかないのか。


 そう思った時、忘れていたもう一人の人物が真桜に伸ばしていた陽菜々の手を掴む。

「全く貴方達は……見ていられませんねっ」

「貴女……」

「お姉さん……」

 勿論言うまでもなくリアの事だ。『冷酷』を始末し、真桜の魔力が暴走し始めた直後、真桜を殺す(・・)事だけを頭に入れていたが、そんなことをして佐夜達がそれを許すはずもなく、尚且つ佐夜達がまだ諦めていない事でリアは溜息をしつつ渋々手伝う事にしたのだ。

 再び進んで協力しに来てくれたリアに愛沙と陽菜々は一瞬きょとんとする。


「何やってるのですか。しっかりして下さい!」

「え、あ、うんっ」

 リアに掴まれた手を掴みなおす陽菜々。


 これで後はリアが真桜に触れればOKだが、問題は触れたが最後ダメージを受ける事だ。佐夜が上手く変換できなければ一気に全滅する恐れがある。


「ああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」


 が、怖いものなどないのかリアが絶叫する真桜の肩を掴んだ。


 バババババババババババババババババババb───────


「がああああああああああああっ!!?」


 まず真っ先に真桜の黒く濃い魔力がリアに流れ込み、圧倒的な魔力が流れ込んだ事と真桜の魔力の波長が合わない事でダメージを受けたリアが絶叫するが、その手を離さない。


「にゃあああああああああああっ!!?」


 次にリアの手を掴んでいた陽菜々も叫ぶ。……鳴き声が猫みたいだ。


「やああああああああああああっ!!?」


 次に陽菜々の足を掴んでいた愛沙も叫ぶ。けど決して掴んだ手は離さない。


「んんん~~~~~~~~~~っ!!」


 最後に真桜の魔力が流れ込んだ佐夜にもダメージが入る。胸に穴が開いている為、物凄い激痛が走っているのが歯を食いしばって我慢する。


「ま、だ……ですか………っ!?」

「にゅあああ~~~!」

「佐夜……早く……っ」

 まだ1分も経っていないが、3人の身体はガクガクと震えている。そんな長くは持たない様だ。


「んんん──────っ」 

 一方の佐夜も必死で真桜から流れ込んで来る魔力を練成し直し、




「はぁああああああっ!!!」

 

 ズアアアアアアアア───────────


 

 佐夜達を覆っていた黒い魔力が晴れて、淡い青色の魔力が皆を包む。

「っ!? これって……」

「身体が……痛くない?」

「あんなに膨大で激しかった魔力がこんなに……」

 と、同時に皆の身体の痛みも収まった様だ。


「ぁ…………」

「あ、しっかりして下さいっ」

 佐夜の方から真桜の魔力を(意図せず)制御した事で真桜の暴走が収まり、真桜は気絶しリアに抱え込まれる。


「かはっ、かはっ!」

「あ、佐夜っ!?」

「俺に構うな……」

「え、でも……」

 無理に錬成した事で吐血した佐夜に回復ヒールを掛けようとする愛沙だったが佐夜が制止させる。


「ゼロが言うには……俺達の周りを覆っているこの空間が何時どうなるか分からない……そうだから陽菜々、俺達に纏っているこの魔力を使って早く……次元転移トランスポートするんだ」

「でも座標はどうするの?」

「適当でいいさ……とりあえずここから出る事だけ考えて転移してくれ」

「……うん、分かったよっ」

 息を荒くして言う佐夜に応える様に陽菜々は承諾し、




「どこに転移(飛ぶ)かは分かんないけど……『次元転移トランスポート』!!」


 キュイイイイイイイ────────


 ───────シュン……………


 こうして佐夜達はこの空間…というより【アルフィーニ】から脱出した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


「次元転移反応! おそらく陽菜々のものだと思われます」

「そうか、無事脱出できたか。とりあえずどこに飛ばされたのか追跡してくれ」

「分かりました。それより限定封鎖がそろそろ解かれます」

「そうか……。……………。って、ちょっと待て、今開放したら……」

「はい、保っていた魔力空間が捻じれて爆発します」

「………今すぐ近くにいる奴等を回収し、住人達を遠くへ転送してくれ」

「は、はい……。仲間の方を優先して行います!」

 手をコキコキを鳴らした後、透は残像すら見えない程の速度でパネルを操作し始めた。


「結局最後は爆破オチ……か」

 ゼロは脱力し、ブリッジの背もたれに沈んだ。




次回は【アルフィーニ】に残ったユフィ達がどうなったかの話です。

次回は割と早めに投稿できると思います。では。

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