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異世界無双禁止規定(ステージ オブ グラウンド)『緩』 ~歌姫神と称された少年のあれこれ~  作者: 浅葱
第一章 ~次元迷子の少年(佐夜プロローグ)~
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第1話 ~普通の男子学生(?)の旅立ち~

第一章は美里佐夜のプロローグみたいな物だと思って下さい。

────ここは物質界。ヴァン達が幻想界【レニアナ】に潜る半年前の出来事。


「「「おつかれさまっしたー!」」」

 季節は5月のゴールデンウィーク。物流関係の日雇いバイトが終わりシャワーを借りた後、学校のブレザーに身を包む3人の男子生徒達。

「くーーっ! やっと終わったー!」

「腰痛てーわ」

「この後、どうする?飯行くか?」

「もち」

「マックか?ファミレスか?」

「「ファミレスドリホーで!(ドリンク飲み放題)」」

 友達とバイト終わりに飯食いに行くという、ごく普通の何の変哲もない学生の会話だ。それぞれ彼女はいないがそれなりに青春を送っていると言えるだろう。


「「じゃーな!」」

「また月曜なー」

 友人達と別れて帰宅へ向かう少年の名は【美里ミサト 佐夜サヤ】。男の名前らしくはなく『美里』と『佐夜』、どっちが名前だよ!とツッコミたくなる名前だ。

 それに加えて身長は161cmの小柄で女顔。髪はショートヘアー(男の髪型ではない方)。所謂かわいい系男子というやつだが、本人は納得してない。男子のブレザーを着ていなければまず間違いなく女の子に間違われるだろう(友人談)。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふあああ~~~~。眠……」

 ヤバイ、今、とてつもなく、眠い。日雇いのバイトをしているが、ここんところは毎日入れているので今日で8連勤だ。まあ、欲しいものがあるから無理矢理入れてもらったんだけどさすがにしんどい。


「歩いても眠い。今なら2秒で逝ける(寝れる)……っとと………ん?何だこれ?」 

 あまりの眠さから少しコケると、足元に何かが当たった。

 それは高級感溢れる銀色の腕時計。おまけに何か緑色に光っている。眠気から来る幻覚かと思って目を擦って再度見ても光っている。気になって拾ってみると光は収まった。

 百均やジョーク品かとも思ったがどう見ても偽物の類ではなく、ずっしりとした重量感。何を指しているのか分からない針を見る限り、少なくとも時計の類では無いみたいだ。

 普通ならこういうものはすぐ交番に届けるものなのだが、如何せん日雇いバイトの連勤疲れで眠い。凄く眠い。超眠い。

「明日新ゲー(新作ゲーム)買いに行く時に交番に持って行くか」

 といって拾った腕時計(?)をズボンのポケットに入れ帰宅する。


「ただいまー」

「お帰り佐夜。ご飯はどうするの?」

「友達とファミレスで食べたから明日食べるよ。風呂もバイト先で借りたから今、すっごい眠い……」

 時刻は現在午後11時。佐夜が帰宅すると母親が洗濯籠を持って現れた。夕飯はどうするか聞かれたが、先ほど友達と食べて来たので空いてない。それより今は眠気が半端ない。

「分かったわ。じゃあラップしとくから明日食べなさい」

「うん。分かった……」

 限界が近いのかフラフラ部屋に向かいながら答える佐夜。ぶっちゃけ上り階段があるのでちょっと危ない。


「おうっふ………ZZZzzz…………」

 部屋に着くなりベットに倒れ込む佐夜。そして5秒も経たないうちに眠った。

 謎の緑色に光る腕時計をズボンに入れたままで。

──────────この腕時計(?)を所持するという行為が、これから起きる異変の中、佐夜の身を救う事になろうとは、誰も思わなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「このクソ野郎!テメー、一体どこに『アレ』落としたんだ?」

「ひぃ! すみません先輩!」

 時刻は深夜。闇に潜む謎の二人組が住宅街を徘徊していた。どうやら何かを探しているみたいだ。


「ったく、せっかく手に入れた『アイテム』をまさかぶちまけるとかありえんわ」

「うう……すんませんっす」

 どうやら後輩が何やらへまをして先輩に怒られているみたいだ。


「傍から見られたら俺達、職質確定もんだぞ」

「まあ、オイラ達達カタギ(一般人)じゃないですしね」

 この二人の恰好は何かのコスプレっぽい感じで、今は10月でもない上、おまけに警察に何かを探している所を見られると二重の意味でツッコまれるだろう。


「魔力反応が何もない所を見ると、どうやらこの辺には無いm………」

「? 先輩、どうしたんすか?」

 この辺りに落とした物が無いと分かり、引き上げようとした先輩のセリフが途中で止まる。後輩が心配して声をかける。


 グヲォォォォン、グヲォォォォン、グヲォォォォン────────


「え? 何この音? どこからなってるんすk────────」

「マズイ! おい、急いでこの世界から脱出するぞ!」

「え? 何故です? それにこの音は一体───────」

「この音は『終末現象』の時に起きる音だ!つまり今、この世界は────」

 

 パリ…パリパリ……パリパリパリパリ────────────


「ちょ、超展開キター!?」

 突然起きた現象に後輩がメタなセリフを言った。そう言いたくなるのも当然だろう。

 何故なら『世界がどんどん白くなっていく』からだ。『人』も『建物』も『空』までもだ。

「馬鹿、何やってんだ!さっさと出ろ!」

 と、先輩が異変緊急用ファスナー『世界脱出君』をまだ『白く』なってない壁に貼り付け後輩の襟を掴み一緒に物質界から脱出し、


 そして世界は唐突に終焉を迎えた─────────────


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ZZZzzz………っ……ックシュン!………??」

 再度言うが、今の季節は5月だ。寒くは無い筈、なのにやけに寒い。クーラー付けてたっけ?

「?? 何か……ベットがザラザラしてる?何だこれ?」

 謎のザラザラを顔に付着したまま身体を起こす佐夜、すると手にも謎のザラザラした粉が付く。

「…………………え?」

 佐夜が視線を手から部屋の周りへと向けると、そこは一面、真っ白の世界だった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・ 

 ・・・・・


「一体何がどうなってるんだよ、これ………」

─────佐夜はどこに向かうでもなく、真っ白になった世界を走っていた。

 

 くしゃみで目が覚めた佐夜は虚ろな表情で、視界に移る全ての物が真っ白になったのを見て「ああ、これは夢か……」とベタな事を言い、再びベットに倒れ込み、ベットを陥没破壊した事で完全に目が覚めた。

 「は?」っと思った佐夜は真っ白になったベットを掴むとベットだった物は簡単に砕け、砂になった。

 夢か現実かどうかの定番、頬を抓る佐夜だが当然頬は痛かった。 

 段々頭も冴えてきた佐夜はとりあえず周りの物を掴んでみた。そうしたら枕も机も本もドアは勿論、食べ物や生き物も全て粉々になった。両親や妹も真っ白な剥製状態になってたが、触った瞬間粉々になるのは目に見えているのでさすがに触れなかった。

 現段階で真っ白になってないのは佐夜自身と、佐夜が身に纏っている制服とポケットに入っている昨日拾った『謎の腕時計』だけだ。


 佐夜はスマホで警察に電話しようとしたがスマホすら真っ白になっているので使えなく、テレビも真っ白になっている為、世界がどうなっているかなんて分からない。

 この段階になってようやく佐夜は自分の置かれている状況に恐怖した。そして思わず家を飛び出した。勿論玄関のドアも真っ白になっていた為、タックルで破壊。

 その後、靴を履き忘れて佐夜は一度家に戻ったが、靴も真っ白になってたので仕方なく、靴下のまま住宅街を徘徊する。

 自分以外が真っ白になっているので謎の圧迫感が半端ないこの状況。真っ白の状況に気がおかしくなりそうだった佐夜だったが、スマホの音楽で何とか持ちこたえている。


 ガサガサガサ………………


 しばらくスマホの音楽以外の音を聞きながら歩いていた佐夜はそれ以外の音を聞いて足を止めた。何の音かと思った佐夜だったが、直感的に嫌な予感を感じたので急いでスマホの音楽を止め、自分も身を隠した。

 すると遠くの方で巨大な赤いミミズ(?)っぽい何かが蠢きながら街を徘徊していた。隠れて音を消していなかったら佐夜はすぐに見つかっていただろう。とはいえここにじっとしていてもしょうがないのでこっそり移動しようとした時、何かを踏んだ。


 それは深夜に謎の二人組が使用した『緊急用脱出ファスナー』だった。

 通常なら「何だ、ただのファスナーか」で終わるのだが、現状全てが真っ白なこの世界で、自分の持ち物と赤ミミズ(?)以外に色が付い(・・・・)ている物(・・・・)は無い筈だが、このファスナーには色(黒)が付いていた。

 このファスナーに色が付いているその意味を佐夜は知らないが、少なくとも『普通の物』ではない事だけは何となく分かったのでファスナーを拾った。

 拾ったファスナーを見ると何故か2mもあり、おまけにファスナーを開けた状態だった。もしかして布団用?と佐夜は思ったが、布団用にしてはファスナー部の金属が大きいのですぐに違うと気付き、首を傾げる。


「わっ!?」

 すると手に持って広げていたファスナーが黒光りしだし、佐夜はびっくりしてファスナーを落とす。

 びっくりして一瞬ポカンとなる佐夜だが、その時昨日ズボンのポケットに入れていた腕時計(?)も緑色に光っている事に気付き、ポケットから出した。

 ポケットから出した腕時計(?)を手に持つと、ファスナーと腕時計が互いに共鳴しあう様に光り出す。

 すると地面に落ちて広がっているファスナーの内側の色が歪み、桃色になった。佐夜は何が起きているのかは分かっていないが、このファスナーの向こう側にある桃色空間は『亜空間』と呼ばれるものであり、深夜に居た二人組もこのファスナーを使いこの世界から脱出したのだ。

 が、実はこのファスナー、一回限りの『使い捨て』のファスナーなのだ。使い捨てゆえに、深夜に居た二人もファスナーを回収に来る必要が無く、実際に来ない。

 では何故一回限りの使い捨てである筈のファスナーが再び使用出来たかというと、佐夜が拾った腕時計(?)が大いに関係しているのだが、今はそれどころではない。


「………どうなってるんだこれ?」

 佐夜はファスナーで開いた『亜空間』に手や足を突っ込んでみたり、頭を入れて覗き込んだりした結果、どうやらこの中に入っても問題は無い事が分かった。

 ……しかし問題がある。それはこの中に入ったら最後、『二度とこの世界に戻って来れないかもしれない』と言う事だ。

 だが悩んでいる時間は佐夜には残されてはいなかった。何故なら先ほどのミミズ(?)が佐夜の存在に気付き猛烈な勢いで背後に迫っていたからだ。

 佐夜がミミズ(?)の気配に気付いた時にはもう2~3m目前にまで迫っていた。佐夜は腕時計をまたポケットに入れ、

「ええい、なすがままよ!」

 と、定番なセリフを言いつつ佐夜はいつかこの世界に戻って来る事を誓った。


 ヒュッ───ドゴッ!!


「っが!!?」

 だが、そんな感動的な終わり方は問屋(ミミズ?)が卸さない。頭なのか尻尾なのかが分からない触手みたいな物が『亜空間』に飛び込もうとしている佐夜の肩を上から叩きつけた。

 その結果、無事(?)この物質界からの脱出に成功した佐夜だが、ミミズ(?)の攻撃の衝撃で意識を失い、おまけに物凄い勢いで亜空間内を回転しながらどこかにふっ飛んで行った。


 そしてこの世界には(ミミズ?以外)誰もいなくなった───────


大回転しながら佐夜が飛んで行く……

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