表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ツインソウル物語1』“そして同じ人に恋をする”  作者: 大輝
第6章《苦手な女性》
6/18

そして同じ人に恋をする6

結局朝までそのまま居た。


外は雨が降っているのに、日が差している。


「ごめんなさい」


「いや。今日休みで良かったね」


僕がそう言うと、彼女は安心したように微笑んだ。


「紅茶の用意をするから」


「私が…」


「良いよ。こう見えて、紅茶には少々うるさいんだ。ゴールデンルールとかね。と言うのは冗談だけど、僕がやるから休んでて」


「でも…」


「騎士道だよ。アーリーモーニングティー。ダージリンで良い?」


「騎士が、朝女性のベッドまで紅茶を運ぶというお話しね」


結局彼女もキッチンに来て、パンを焼いている。


冷蔵庫の中には、3日分くらいの食料を用意して京都に出かけたみたいだけど、僕が料理なんかするわけない。


ゆりさんが来てくれて、助かった。


「美貴ちゃんと一緒にお買い物したのよ。作るのは私だから」


彼女は一度家に帰って、また夕方来てくれた。


僕は、その間少し眠った。


「今日は、バッハね」


バッハのゴールドベルグ変奏曲。


グールドさんの演奏だ。


歌ってる…


ピアノも歌ってるけど、彼も歌ってる。


「食事の時は変えるから…何かバッハって食事しながら聞いてると、罰当たりな気がする」


彼女は少し笑って。


「宗教音楽が多いからかしら?」


「天上の音楽だよな」


食事の仕度がが出来た。


今日は、カキのトマトソースパスタに、チキンのクリーム煮、ミネストローネにサラダ。


「うーん、今日の料理だと、やっぱり、イタリアワインの白か」


アルゲロ・テッレ・ビアンケを開けた。



日曜日、美貴が帰って来た。


「ゆりちゃんありがとう。お兄ちゃんのお守り大変じゃなかった?」


彼女は、少し笑って、


「園児のお守りで慣れてるから」


コラコラ、何がお守りだ。


「美味しい物を食べさせておけばご機嫌なのよ。オムライスとか焼きそばとか、ハンバーグとか、子供みたいなのも好きよ」


「うちの園児達みたいね」


「2人っ切りでどうだったの?新婚さんみたいだった?」


「何言ってんだよ。何も聞いて無かったから、びっくりしただろ」


「だって、ゆりちゃんに来て貰う、なんて言ったら、良いよ、って言うに決まってるもの」


まあ、普通そう言うだろう。


妹の留守に女の子と2人っ切りなんて…


まだそんな関係じゃないし…


まだ?


どうも僕は、性的行為に罪悪感が有るみたいなんだ。


潜在意識に、何か有るらしい。


だからか、好意を持っていても、なかなかそういう関係にはならない。


普通の男なら、好意を持っていなくても、あんな状況ならなんとかなっているはずなんだけど…


ツインソウル…もう一人の自分のような相手。


考えている事が同じだったり、言わなくてもわかったり…


ツインソウルが結ばれると、本当に幸せだと言うけれど、別れるツインソウルだって居る。


課題が終われば別れたりもするんだ。


課題が結婚の場合も有るけど、離婚する場合も有る。


ツインソウル…究極の愛の学び…


僕達はお互い、過去世の記憶のせいで、相手を失う事を恐れているらしい。



今日美貴は、ゆりさんと彼女の友達と3人で食事だそうだ。


夕食の仕度はしておくから、温めて食べて、と言っていた。


僕が外出先から会社に戻ると、来客らしい。


「おい、待ってるよ。女の人」


「???」


「久しぶりね、洸貴」


麗華だ。


パリに留学してた時、一緒だった。


日本人同士という事で、すぐに仲良くなったんだ。


麗華は、自分のペースで強引にグイグイ引っ張るタイプで、気づいたら半同棲のようになっていた。


「久しぶりに会ったんだから、食事ぐらいご一緒できるわよね?」


「美貴が作ってくれてるからな…」


「また妹?!変わってないのね」


それでケンカして別れたんだった。


美貴が、美貴がって、妹と私とどっちが大事なのよ?!


そうなふうに言われて…


僕は、比較の対象にならないと思うけど、彼女はそれが許せないらしい。


「なんなら、俺と行く?」


「良いわよ。3人でも」


結局3人でフレンチレストランに来ている。


「92年のシャトーマルゴーの赤にするわ」


「俺、ワインはわかんないけどさ…うわっ、高っ」


「何ですって?このくらいのワインご馳走しなさいよ。経済力の無い男はダメよ」


そう、いつもこんな感じなんだ麗華は。


「え?洸貴と寄りを戻す気だって?」


「あれから、色々な人と付き合ったけど、洸貴が一番良かったのよ」


「良かったって、H?」


「この人下品ね」


「そんな言い方良くないぞ。ごめん拓真。まあ、お前もストレート過ぎだけどな」


そう、パリでも、僕がなかなかその気にならないので、麗華はイライラしていた。


彼女は、パリのカフェで働いていて、そこで日本人の僕に声をかけて来たんだ。



「洸貴、送ってくれる?」


「悪いけど、それは出来ないよ」


「どうしてよ?良いじゃない」


「もう、そんな関係じゃないだろ」


「もう一度やり直したいのよ」


「洸貴彼女居るもんな」


「へー、彼女ね…この人自分からは行かないから、女の子の方から強引に行かないとダメなのよ」


「そういうタイプじゃなさそうだぞ。まあ、俺は一回会っただけだから、良くわかんないけどさ」


「どんなタイプよ」


「ちょっと品の良い、おっとりした感じかな。昔からそういうタイプが好きだったもんな」


麗華とは全く違うタイプだ。


なのに、何故かこういうタイプの女性に好かれる事が多いんだよな。


僕がパリから帰国すると、麗華も追って来た。


日本に帰ってからも、しばらく付き合っていたけど、僕が逃げ出したんだ。


美貴とも仲良くしてくれる人じゃないと…


結婚を考えるような相手なら、尚更だよな。


まあ、まだ結婚なんて考えてないけどね。


うーん…


結婚したいと思う相手が現れたら考えるのかな?


今は、まだ考えられない。


美貴の方が先かも知れない。


そしたら僕は、どうするんだろう?


「お前も、いい加減妹離れしないとな」


「そうよ、妹と結婚出来ないんだから」


帰り道、麗華は少し酔っているようで、僕にもたれ掛かってきた。


「大丈夫か?俺が送って行こうか?」


「結構よ」


しつこく言い寄る麗華を、タクシーに乗せて帰した。


「なかなかの美人だけどな、性格キツイな麗華さん。ありゃ、お前とは合わないよ」



やれやれ…麗華のやつ、何で今頃現れたんだ?


寄りを戻したい、だなんて…


だいたいパリに居た時だって、相手の気持ちは関係なくて、自分一人突っ走るから、勝手に僕の部屋で暮らし始めたんだ。


ま、優柔不断な僕が悪かったんだけどね。


家に帰ると、もう12時を回っていた。


美貴は、まだ起きているようだ。


灯りが付いている。


「お帰りなさい」


「ただいま。まだ起きてたのか?」


「ゆりちゃんと一緒に瞑想してたのよ」


「お帰りなさい」


「ああ、お兄ちゃん…」


「どうした?」


「女の人の匂いがする」


そう、美貴は異常に嗅覚が良い。


「何処行ってたの?まさか、キャバクラとか?」


「まさか…会社に麗華が来たんだ」


「麗華さん?」


ゆりさんが不安そうな顔をしている。


「えっ?…こんな事言ったら悪いけど、私あの人苦手だわ」


まあ、僕も苦手なタイプだけど…


「で、どうして麗華さんの匂いがするのよ」


「拓真も一緒だったんだ」


「麗華さんの事、ゆりちゃんに話して良いのね」


「昔の話しだし、別に良いよ。僕はお風呂に入って寝る。二人とも早く寝ろよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ