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そして同じ人に恋をする11

家まで迎えに行くと、色々と面倒なので、幼稚園の前で待ち合わせる事にした。


本当は迎えに行きたいんだけど、僕達の事理解してくれているのは、彼女のお母さんだけなんだ。


他の人に見つかると大変だからね。


彼女にしては珍しく、10分ぐらい遅れて来た…僕は車のドアを開けて乗せた。


「ごめんなさい遅くなって」


「いや。女の子がデートに遅れて来たら、男は喜ばないといけないんだよ」


「どうして?」


「着る物を迷ったり、僕の為に一生懸命オシャレして来てくれたんだろうな、って」


「確かに、何を着て来るか、迷ったわ」


「うん、良く似合ってる。その髪も素敵だね」


「こんな事言う人だったかしら?」


「え?思った通り言っただけだよ」


「何だか女の子の扱いに慣れてるみたい」


「そうでもないよ」


「そうかしら?麗華さんの他にも沢山居たのよね」


「本当の恋は…した事無い」


「…良いわ。信じてあげる」


【教会】


中に入ろうとした時、一瞬足が止まって動けなくなった。


過去世の修道院…マリアさん…ジャックの姿が次々と浮かんで来た…まるでスライドを見ているようだ。


「ミサに遅れるわ」


「え…?」


一瞬、ローラさんとゆりさんの姿が重なって見えた。


「あ、うん。行こう」


聖歌隊のハレルヤを聞いている間も、僕は、中世と今を行ったり来たりしていた。


これだから最近教会に足が向かなかったんだ。


マリア像を見たくて、以前は良く行ったけれど…


別荘に着くと暖炉に火が入っていた。


テーブルにはケーキや料理、フルーツなどが並べられて居た。


美貴が管理人さんに連絡しておいてくれたみたいだ。


「この時期ベートーヴェンの第九シンフォニーはお腹一杯な感じだし、モーツァルトのピアノコンチェルトで良い?」


「ええ良いわ」


「21番グルダさんの演奏で」


「アルヘリッチさんが好きなんですって?」


「美貴から聞いたの?」


「ええ。実は私も好きなの」


「初恋の人なんだ。ショパンの第一コンチェルト、彼女のコンクールの時の演奏を聞いて泣いた」


「本当の初恋は、いつ?」


「初めて彼女の演奏を聞いたのは、小学校四年生だったかな?生まれて初めてCDという物を買ったのが、ショパンのプレリュード」


「そうじゃなくて…」


「知りたいの?」


「少し…怖いけど…知っておきたいの」


「今だよ」


「嘘」


「嘘じゃない、今だよ」



暖炉の前のソファに座り、シャンパーニュをもう一本開けた。


彼女は、グラスにそっと指を乗せて…


「私は、もう…そんなに呑めないわ」


プレゼントを渡して、2人で一緒に開けた。


「え?」


「あら」


2人で顔を見合わせた…そして笑った。


「何が良いかわからなくて、自分の好きな物にしたんだ」


「私もよ」


似たような、ちょっとアンティークな感じの時計だった。


ツインソウルは、好みが似ていると聞いていたけど、本当にそうだ。


気がつくと12時を回っていた。


寝不足だと、明日の運転が危ないな。


「そろそろ寝ようか、あ、お風呂、温泉が引いて有るんだ。先に入ると良いよ」


彼女は少し驚いて…


「え?あ…ありがとう。そうさせて頂くわ」


待っている間少し片付けた…女性のお風呂は長い…ソファでバッハを聞いていたら眠くなってきた…


「洸貴さん…寝ちゃったの?」


「あ…居眠りしてた…僕も入って来る」


お風呂に入ったら目が覚めた…部屋に戻ると、彼女は起きて待っていてくれた。


CDの棚を見ている…


「ピアソラも聞くのね」


「クラシックの演奏家のはね」


「本当…クレーメルさんとヨーヨー・マさん」


「ピアソラ、チェロで聞いてみる?」


ヨーヨー・マさんのピアソラをかけた。


彼女はCDを眺めている。


後ろ姿…まだ少し濡れた長い髪…


背中からそっと抱き締めた。


「あ…」


「もう、何処へも行くな」


「ずっと、こうして居たい…」


優しく彼女の身体を自分の方に向けた。


「怖い」


彼女は、僕の腕をすり抜けた。


「怖い…私…男の人が怖いの」


震えている…


「大丈夫だから…何もしないから、もう寝よう。僕は隣の部屋で寝るから」


「側に…居て…欲しいの」



【ベッドルーム】


二人並んで寝て居る…眠っている洸貴の顔を見つめるゆり。


ベッドに入るとすぐに眠ってしまうなんて、疲れていたのね…


いつまでこうして居られるのかしら…?


美貴ちゃんは、先の事を心配しないで、今を楽しめば良い、って言うけれど…


怖いの…過去も、未来も…


過去世を思い出すのも怖いし、洸貴さんと離れるかも知れない未来も怖い。


朝…


微睡みの中手を伸ばすと、彼女は居ない。


起きて庭に出てみると、温室の中に居た。


【温室】


「ここだったのか」


「良く寝てたから、起こさなかったの」


「それ、原種の蘭」


「精霊達が踊ってるわ」


「ここには居るらしいね、僕には見えないけど」


嬉しそうに花を見ているな…昨日はあんなに怖がっていたのに…


久しぶりに笑顔を見た気がした。


出会った頃は良く笑っていたのに、いつも泣かせるのは僕だ…


美貴からメールが来た…


「昨日は、サロンで皆んなでワイワイ楽しんだのよ~お兄ちゃん心配してるだろうから、お知らせ~」だって…早く言えよな。


彼女に見せたら、笑っている。


「君は、笑顔の方が良い」


そう言うと、恥ずかしそうにうつむいた。



【公園】


いつものように、昼休みランチで来ている。


僕は、朝食の時、美貴と話した事を思い出していた…


ボルドーのホテルは、資金繰りが大変らしい。


「それぐらいのお金なら、パパが生きてたら融資出来たのに…お兄ちゃまが会社を継がないからいけないのよ」


お兄ちゃまになってる…小さい頃は、そう呼ばれていた。


昔の話しをすると、時々出るな。


大人になって、僕がやめてくれと言ったから、お兄ちゃんになったんだ。


「聞いてるの?」


「仕方ないよ、親父が亡くなった時、僕はまだ中学生だった」


いきなり社長になっても、会社を潰すだけだから、他で勉強してから会社に入れると言っていたな。


僕も、父の会社の人に、社長の息子という目で見られるのが嫌だった。


そして、突然倒れたんだ。


そのまま帰らぬ人となって、重役会議で今の社長が決まった。


「それでも親父が残してくれた物のおかげで、今もこうして2人で暮らせてるんだから…あ…もうすぐ2人じゃなくなるのか…」


「本当に、私、結婚して大丈夫?」


「お前には幸せになってほしい、って言ったろ」


もう桜が咲き始めた…6月なんてすぐだな…


いつものように、ゆりさんと他の2人の保育士さんが園児達を連れて来ている。


初めて彼女と会った時もああやって園児達と遊んでいたな…ちょうど去年の今頃だった。


美貴と同じ年だから、今年の9月で、23才だ…


僕は、4月で26才になる…そろそろ結婚を考えないといけないかな…


白い手袋をした、運転手らしい男の人が、彼女を迎えに来たようだ。


何か有ったんだろうか…?



ゆりさんのお父さんが倒れた。


心筋梗塞らしい。


「父の代わりにやらなければいけない事があるので、しばらく会えそうにありません(>_<)」とメールが来た。


「会えなくても、魂は寄り添っているから」と返信した。


「日本に居るんだから、会おうと思えば、寝る時間削ったって会えるだろうに」


「監視されてるみたいだ」


「なるほど…お父さんの代わりに動いてるなら、高見沢って男も一緒かもな」


「ああ…」


「お前、結婚は考えてないのか?」


「考えてるよ」


「だったら、向こうの親父さんに会えば良いじゃないか。もたもたしてたら取られるぞ」


「わかってるけど、会ってもらえないんだ」


【青山】


美容室を出て246に向かって歩いていると、黒い車とすれ違った。


え?今の車…後ろに彼女が乗っていた。


一瞬だったから、良くわからない…誰か…一緒だったのかな?


目が悪いので、良く見えなかった…


彼女からメールだ。


「今擦れ違ったわ」って…気づいていたのか。


「やっぱり君か」と返信した。


「この近くに会社が有るの」と返信が来た。


ツインソウルのシンクロ…


もう、このぐらいじゃ驚かなくなっているけど…


こんな所まで来て擦れ違うなんて、やっぱり普通じゃない…


本当に、偶然なんて一つも無いのかも知れない。


「私一人よ(^ ^)」とメールが来た。


ツインソウルは、相手の考えている事がわかると言う…


「良かった( ´▽`)」と返信した。


数日後、彼女のお父さんが退院した。


しばらく家で静養するらしい。


お父さんが家に居るので、外に出して貰えないらしい。


もう少し会えそうにないな…



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