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『ツインソウル物語1』“そして同じ人に恋をする”  作者: 大輝
第10章《シンクロ》
10/18

そして同じ人に恋をする10

【ワイン専門店】


イタリアワインの白…そうだな…今日のメニューだと…


僕は、美貴から送られたメニューを片手にワインを探した。


コン・ヴェント、これか。


僕がそのワインに手を伸ばすと、同時にワインを取ろうとした女性の白い手と触れた。


一瞬時が止まったようになった。


何だろうこの感覚は…?


「ごめんなさい」


それは懐かしい声だった。


「え?洸貴さん?私…まさか、こんな風に会うなんて…」


「帰っていたのか」


シンクロ…


そう遠く無い所に住んでいるのだから、偶然と言えばそれまでだけど、ツインソウルには、こういうシンクロが良くあると言う。


美貴にワインを頼まれなければ…今日仕事が早く終わらなければ…このワイン専門店を選ばなければ、2人はすれ違っていたんだ。


偶然なんて一つも無い、全ては必然なのだと美貴は言う。


「ごめんなさい、私」


「謝ってばかりだな」


「だって、メールで酷い事言って、それっきりだったから」


「気にしてないよ」


「少しは、気にしてほしいのに」


「そりゃ、少しはへこんださ」


「少しだけなのね」


「いや、物凄くへこんだ」


「本当かしら?貴方の心の中には、私以外の人が」


そう言いかけた彼女の言葉を遮るように、僕の口をついて出た。


「離れて居る間、君を思わない日は一日も無かった」


「本当?」


「うん」


「初めてね、そんな風に言ってくれたの」


「そう…かな?」


もう、後は2人とも黙っていた。


黙っていても一緒に居られれば、だだそれだけで良かった


ゆりさんが日本に戻る事は、美貴にはメールで知らせたらしい。


いつもならうるさく言うはずなんだけど、あいつ…何も言ってなかった。


まるでこんなシンクロが有ると、知っていたみたいに…


「だからいつも言ってるでしょ。会う必要の有る相手とは、どうやっても会うようになってるのよ」


その時必要な相手と繋がり、必要の無い人とは自然と離れて行く物なのだと美貴は言う。


全て必要な事が起こっているたけなのだと…


天のシナリオ…


僕は、自由に選ぶ道が有っても良いと思うんだけどね…


ゲームみたいに、いくつか選択肢が有って選ぶんだけど、どの道を選んでも少し景色が違うだけで、結局一本の道に繋がっているのかも知れない。



【神緒家】


「美貴」


「ボージョレ・ヌーボー解禁ね」


「話しが有るんだ」


「買って来ちゃった。重かったんだからね」


「聞けよ」


う~ん、ワイン開けるのって、苦手だわ…


お兄ちゃんが代わって開けてくれた。


「呑も呑も」


お兄ちゃんがワインを注いでくれてる「ワインは、男が振る舞う物だよ」って、いつも言うの。


「結婚式延期になったって?どうしたんだ?」


ほら来た…その話しだと思った。


「12月の予定だったろ?今日拓真に聞いてびっくりしたよ。何で言ってくれなかったんだ?」


「マリッジ・ブルーってヤツ?もう少し時間が欲しかったのよ。彼とも相談して来年の6月にしたわ。ジューン・ブライド…やっぱり女の子は、そういうのに憧れるのよね~」


「マリッジ・ブルーだって?そんな風には見えないぞ…拓真とも上手く行ってると思ってた」


「女神ジュノーのお導きよ。6月が良いの」


「だって、式場も決めて、ドレス選んで、あんなに嬉しそうにしてたのに」


「そんなに早くお嫁に行って貰いたい?」


「そうじゃない、そうじゃないけど」


「今のお兄ちゃん置いてお嫁になんか行けないじゃない!」


あ…言っちゃった…


「僕の…為か…?」


「もう少し一緒に居たいのも本当、お兄ちゃんとゆりちゃんの事が心配なのも本当だけど…マリッジ・ブルーも本当」


男の人って、みんなお兄ちゃんみたいに誠実だ、って思ってたの…拓真君は良い人よ、お兄ちゃんの親友だし…


でも、世の中の男がみんなお兄ちゃんみたいに誠実だ、なんて思ってたら痛い目に遭うわね。


「美貴には幸せになってもらいたいんだ。拓真にも」



【美咲家】


11月も半ばになると、風邪が流行り始めているわ。


私は、少し風邪気味の母が心配で、お部屋にローズヒップのお茶を運んだの。


「ゆりには、ちゃんと恋をして結婚して欲しい、って前に話したわね」


「ええ」


「お母様ね、あなたのお父様と結婚する前に、好きな人が居たの。でも…」


「でも?」


「お父様、あなたのお爺様の会社の資金繰りが上手く行かなくてね、その時融資してくれたのが、あなたのお父様の会社だったのよ。」


「お母様の恋のお話し…初めて聞くわね」


「お母様にだって、若い頃は有ったわよ」


「お父様と結婚してからは?」


「勿論、会う事も、連絡を取り合う事も許されなかったわね」


「その方、今はどうなさって居るのかしら?」


「誰とも結婚せずに…亡くなったと聞いたわ」


「聞いたって、そんな…」


「女はね、母親になると子供が一番大切になるのよ」


「……」


「ゆり。洸貴さんと結婚する気は無いの?」


「え?…私は…でも、彼が…」


「お父様が反対しているから、彼も躊躇しているのね」


「お父様にお話ししても、聞き入れて貰えないんだもの。親が居ない男はダメだとか、後ろ盾が無いからとか…」


「今ホテルの経営が大変みたいだけれど、ゆりにはお母様と同じ思いをして欲しくないのよ」


幼い頃からずっとシスターになるつもりでいたから、恋も結婚も考えていなかったわ…


あの人と会うまでは…


でも今は、恋する気持ちを知ってしまったの…もう、戻れない。


他の人と結婚するなんて嫌…彼が他の女の子となんて嫌!



12月に入ると、町のあちこちで飾り付けされて、華やいでいた。

いつもの並木道も、イルミネーションで夜は幻想的だ。


しかし、この店は、この時間になると殆ど売り切れてるな。

今日は、フルーツタルト…予約しておいて良かった。


【神緒家】


「はい、お土産」


「ありがとう。ねえ、お兄ちゃん達Xmasはどうするの?」


「どう、って…?」


「せっかくゆりちゃん帰って来たのに、Xmasの予定も考えて無いの?」


「いや、いつも通り美貴がケーキ作るの手伝うものだとばかり思ってた」


「私だって、今年は、拓真君と一緒に過ごすわよ」


「え?!」


「なんて顔してるのよ。まさか、ダメなんて言わないわよね?」


「……」


そう…だな…2人は、結婚するんだった。


結婚前の男女がXmasを一緒に過ごすなんて、この国では当たり前な事なんだ。


「本当はね、4人で一緒に、って思ったんだけど、それじゃあお兄ちゃん達、いつまでたっても進まないんだもの」


そういう事か…離れて居てわかった…今の僕が好きなのは、ゆりさんなのだと…でも、時々魂の記憶が邪魔をする…


「いつもお兄ちゃんと一緒だったから、私も少し寂しいけど…」


そうだな…留学してた時以外、いつも一緒だった。


「ゆりちゃんミサに行きたいって」


「え?」


メールしてる…やれやれ…


「今からじゃどこも予約取れないし…そうだ!別荘を使えば良いのよ。近くに教会有るし…お兄ちゃんは、シャンパーニュとプレゼントだけ用意すれば良いわ。後は私が手配するから」


「コラコラ、勝手に決めるな」


「ゆりちゃんOKだって」


「聞いてないし…」



【洸貴の会社】


「お前、ちゃんと用意して行けよ」


「ああ、プレゼントとシャンパーニュって、美貴に言われてる」


「そうじゃなくて、つまり、あれだ。出来婚なんて事になったら、向こうの親父さんに殺されそうだろ?」


「そういう事か…ああお前、美貴と?!…やめた!考えたくもない!」


ったく!本来Xmasは家族で祝う物だ。


「キリストの生誕を祝う日に、日本中のカップルが、オシャレなレストランを予約して、その後はホテルの部屋に向かうらしい」


「いやいや、日本中って」


「女の子が、この日の為に精一杯オシャレして来ても、男達には見えてないんだよな。どうやってメークラヴしようか?で頭が一杯なんだろう」


「洸貴。何か堅い考えで頭の中グルグルしてる?」


「……」


「ま、確かに着てる服は見えてないかも?どうやって脱がそうか…しか考えてないかな…いや、お、俺は違うぞ」


「うん?!」


「親友を信じろ」


【ワイン専門店】


シャンパーニュは買った…ヴーヴ・クリコにしたんだ。


後はプレゼントか…


女の子って、どんな物を喜んでくれるんだろう?


美貴にメールした…プレゼント買うの付き合ってくれ。


一人で行きなさいよ。これからは一人でやるようになるのよ…だって。


うーん…困ったぞ…



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