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007

 そこに痺れも憧れもせず、ただ目の前の現実を現実として受け入れることができなかった。


 ーー今のはインチキだ!!


 と、世界のヒーローが右人差しを指差して抗議するのも無理はなく、目の前の真実をやはり許容することは困難なのだと、同時に痛感した。


「今の、どうやってやったんだよ……?」


 答えなんてないのを知っているのに、俺は聞かずにはいられなかった。


「原理や理屈は私にも分かりません。

 ただ、私には“これをできる力”があり、普通の人間とは違うということです」


 ーーようやく認識できた。


 俺は他の人間と異なりーー異能の力を有しており、怪物と言われても否定をすることができないという事実を突きつけれていることを。


 当惑する俺を見て、彼女は本来の目的を俺に語り始めた。


「先程も話しましたが、私達BKPの目的は異能力者がいないという概念を死守するのが第一であり、その一環として我々ーー執行者(レギオン)は異能の消去が主な任務となります。

 そして、私は物体の場所を自由に変更できる能力者で、そこで死んだフリをしているバカは体を硬質化できる能力です」


 なんの前置きもなく彼女は立ち上がり、ナイフを手元に出現させると。


 それをーー天井目掛けて再び投げ付けた。


 だが、ナイフは天井には当たらず、俺の顔面に向かって。

 それこそ光陰矢の如くーー勢いを増していく。


 近ずく、死の元凶ーーーー。


 化物という事実を突きつけられ、自分が何者かも知らず、己の能力を試す実験台として、俺はここで死ぬのか?


 訳のわからない現状を目を瞑って、走馬灯のように出た思い出の少なさを憂うことなく……?


 ーーナイフは天井に刺さっていた。


「はて?」と、首を傾げる他なかった。


 確かにナイフは俺の顔面目掛けて飛んできたはずだ。


 それこそ避けられる距離ではなく、獲物に飛び掛る野獣のように俺の額に向かって、 一直線にーーーー。


 だが、現にこうして俺の思考は平常運転であり、痛みで脳内の思春期という乗客達が非常口から避難することもなく、俺の脳内は快適な変態の旅を充実している。


 けれど、安心して胸を撫で下ろしている束の間のパラダイスは、

 さながら剛腕投手のようなフォームで投げられた顔面直球のストレートが右後頭部を強打して呆気なく終わりを告げた。


 彼女は九回裏を死守し、全てをやり遂げた投手のように再び席に着くと。


「今のが、あなたの能力です」


 ーーつまり、なんですか?


 俺はあなた様に、二度イジメられる異能なのでしょうか?

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