006
椅子に座らされた俺は大きく息を吸い込んで、気持ちを落ち着かせようとしたが、心の中が叫びたがっていたのを抑えることができなかった。
「なんでやねんーーーー!!!!」と。
全国の大阪出身者には悪いと思うが、この状況にこのツッコミをしないと俺が俺で無くなる気がしたので、我慢の限界だった。
その前に外見と内面について何か言われた事実があったのだがーーーー。
ショックが大き過ぎたのか、思い出してしまうと紙装甲のハートがバルカンで蜂の巣にされかねないのかーーどうにも思い出せない。
彼女ーー毒舌サディスト天使は遊園地の案内員のように、決まり切ったルールのように、この状況を端的に説明し始めた。
「この世界には異能の力を扱える異能力者がいます。
ですが、それによって齎される弊害を防ぐために異能力者がいないという認識のままにするのが、我々BKPの使命でありーー主な任務となっています」
駄目だーー全く以って理解できない。
ってきり、あの弾丸は鎮圧執行においての殺傷防止用に開発され、一般人を用いたテスト中に俺が遭遇して、消されるか金を積んでの口封じ。
あるいはーーこれは俺の脳内妄想が生み出した痛々しい創作物で、現実と二次元の区別が付かなくなっているのか。
どちらせよ、どう足掻いても俺の貧しい人生経験では、“異能力者がいる世界”なんてのは許容することができなかった。
それを見かねてなのか、はたまたサディストの本領発揮なのか。
彼女は得物を天井に目掛けて投げたが、それは天井に当たりはせずに、オブジェクトと化したやる気のない勇者の後頭部に直撃した。
「あっ、暴発するかもしれないのに投げてしまいました。今のは、うっかりミスです」
ーーお豆腐切らしてたの忘れてたわ。今日の夕食、麻婆豆腐にしようと思ってたのに、どうしましょう、お父さん。
なんていう、夫婦の会話のようにサラリと彼女は言ってのけた。