039
ーー僕は異能によって勝ち組になった。
文句を言って歯向かう奴も、見せしめに他人を殺して見せれば泣いて許しを請う。
傲慢で高尚であった女でさえ、体をよがらせて僕に媚びようとしてくる。
僕はそれを従僕のように扱う。
恐怖によって、支配された人間は実に面白い。
何もかも手に入れてしまった僕は気晴らしに、他人で殺し合いをさせてみた。
幼馴染、恋人同士、女同士とーーどいつもこいつも泣いて叫んで、罵り合う。
最初は話し合いをしよう、こんなことやって何になると正論を言う。
だが、死の危険を感じた直後に豹変する。
暴言と侮辱、罵り合いで凶器を振り回す。決まって、この繰り返しである。
かつてのコロシアムを連想する。
昔の人は遊戯的な目的で作ったのだろうが、正直いうと飽きてきた。
女を浴びる程はべらせ、この世の大概の快楽を享受しただろう。
顔だって整形して、原型がなくなるくらいに改造し尽くした。
汚れた面のせいで散々な人生を送り、酷い目に何度もあったが、今ではあちらから行為を示してくる。
所詮、この世は顔と金が全てなのだろう。 なんとも薄汚れた世界である。
そして僕は、退屈を口にする。
「あぁー、あ。面白いことはないかな。僕を笑わせてくれるような」
「無様な死顔をみんなに笑われる良いチャンスですよ」
赤いソファーに体重を任せた瞬間、銃声の音がした。
だが、僕はゆっくりと立ち上がって、先勝の笑みを浮かべる。
護衛として雇っていたバリアを張る能力者によって、僕の安全は保障されている。
アークに多額の融資をしていたことが役に立ったようだ。
「僕に勝てるわけないんだよ。お前は一度僕に触れたからな」
僕は動かなくなった左手で空を切る。
右手に触れた対象の心臓は破裂し、どんな相手でも生物なら確実に殺せる。
それに制限や際限はなく、対象を定めるだけで相手は死亡する。
死体となった屍を蹴ろうと、脚を振り上げて足先を脇腹に向けてぶつける。
「僕に逆らう奴はみんなこうなるんだよ!!」
僕は反応を示さない屍に対し、高笑いをする。
全く、圧倒的な蹂躙ほど面白いものはない。
「えぇ。立派な生ゴミが一つ出来上がりましたね」
「はぁ?」
死体となったそれを平然と踏みつけるとーー屍だった人物に彼女に話しかける。
「千早さん。お疲れ様です。これで社会の害でしかない廃棄物がまた一つ無くなりました」
「いえ、アリス様の采配があってこそです。
それにしても対象者の能力の隙がどうして分かったんですか?」
「えぇ、今回の仕事を私達に任せたニートからの情報です。
あそこで怯えているバリア野郎も、バリアを再び張るのに時間がかかるらしいので、すぐに確保しますよ。千早さん」
「はい、アリス様。了解しました!」
怯える青年は彼女に対し、問いかける。
「待って、待ってくれよ。オレはただ頼まれただけだって……。
だから、な? 頼むから見逃してくれよ」
「そんな言い分が通用すると思ってるんですか? 化物のくせに」
「化物はお前らの方だろ……? なぁ、頼むって」
少しの沈黙の後にーーーー。
「はい、わかりました」
男の願いを了承し、何者との会話を終えると、アリスは拳銃を消してーー彼に告げる。
「あなたを見逃してあげます。
ですが、手錠はさせて頂くので警察にでも自首して下さい」
「話せばわかってくれるんだな。あぁ、そうする。オレは罪を償うよ」
男は安堵する。
千早もアリスの決定に逆らうことなく、その場を後にする。
血なまぐさい死体を手前にケタケタと高笑いする。
「バカだなー、あいつら。
ちゃっかり爆弾なんか置いてきやがって。それで仕留めたつもりかよ」
雄弁な啓蒙活動家のように、既にいない人物に対して語りかける。
「オレの異能はバリアを張ることなんだぜ?
バリアさえ張れれば、こんな爆弾なんか何ともねーよ。
それに、守りに特化してるから待機時間なんかねーっての。
ったく、アークの使いだからってーーこんな奴に付くんじゃなかったぜ。
あー、あ。可愛い女の子と遊びに行こうかな」
「それはダメだよ。君は幼女を弄んだからね」
次の瞬間ーー二人の姿は消えていた。




