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037

 俺の日常は少しの変化があった。


 まず、クラスメイトが二人亡くなった。


 死亡原因は火事による焼死だという。

 俺達はクラス全員で、彼らの葬式に参加することになる。


 同時に、身近な人間の死を痛感することとなった。


 俺は彼らから罵倒を浴びせられたり、名前を盛大に間違えられるぐらいの関係性だったが、それでも心にくるものは人としてある。


 あいにく、両方の死体も見つからなかったのかーー二人の写真だけが並べられ、葬儀は行われた。


 天涯孤独な二人の親戚は殆ど現れず、志奈さんの親友である篠原凛花さんが喪主を務めることとなる。


 黒い喪服を着た彼女は、俺達の前で深々とお辞儀をする。


「本日は、お忙しいところを椎名由紀、椎名志奈の葬儀にご会葬くださいまして、誠にありがとうございます。

 このように大勢の方々にお見送りいただきさぞかし故人も喜んでおることと存じます。

 私が志奈と知り合ったのはーーーー」


 悲しさに耐え切れず、膝から崩れ落ちて目元を覆う手からは水滴がピタピタと音を立てて落ちていた。

 それにつられて泣き出す女子と天照。


 だがーー俺だけは涙を流すこともなく、今週はどんなエロ本が出てるのかと考えることもなく、見覚えがある光景に激しく動揺していた。


 その後、葬式を終えた俺はかつての習慣であったーーーー。


 千早ちゃんとの登下校を勝ち取るために直立不動の姿勢で待っていたりと、千早ちゃんのストーカー(仮)という不名誉な称号を得ていたのが、かつての俺であった。


 けれど、あれ以降ーーアリスと二人で登下校することが増えていた。

 毎日のようにアリスに対して天照は猛アピールをするが、生理的に無理だと断られ続けている。


 そんなアリスさえ、今日はいない。


 今日は用事があるそうだ。

 だから、俺は一人で登校している。

 いつも通りだった日常の一日を送ることになる。


 ふと、授業中に空を見る。


 ーー空に浮かぶ雲が雲であることを忘れたら、どうなるのだろうか。

 ーー雲は浮かび方が分からずに、落ちてくるのだろうか。

 ーーそれとも。現状を容易く受け入れて、雲は雲であり続けるのだろうか。


 普段ーー雲を見るときなんか、あの大きさならEカップだなとかと小学生みたいなことを考えたりするのだけれど。


 俺も少しは大人になったんだなと思い、推定CからFカップである新人教師の授業を真剣に受けることにした。


 内容は英語だろう。


 読めない文章ーーそれも当てつけのように途中で文が切れている。

 いやいや、こんなのは間違っている。


 ーーだって、世界が止まってるなんて、おかしいじゃないか。


 俺だけが、この世界に不釣り合いじゃないか。

 状況を認識できてない俺に対し、誰かが囁きかける。


「安心して、迎えに来ただけだから」


 遥と名乗っていた一人の少女と、俺はまた再開することとなった。

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