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021

 何事もなく妹と学校に着くと、クラスはある話題で盛り上がっていた。


 俺は昨日の件なのかと耳を傾けるがーーーー。


「ねぇ、新しい転校生来るだって。それも、このクラスに」

「聞いた聞いた。外国人でブロンドヘアーの美少女なんだろ?」

「あんたみたいな奴には見向きもしないだろうけどね」


 ーー今日もバカ達が騒いでいるだけか。


 ため息を吐き捨て、自分の席に座る。


 ーーくだらねーな、本当。


 バカみたいに騒ぐ男子や噂話をしながらも敵意や自分の彼氏が上の空なのに嫉妬している女子も、どうしてそんな楽しく笑っていられるのか奇怪にさえ思えてくる。


 ーー何のためにやるのか分からない授業。

 ーーバカが騒ぐための昼休み。


 学校のメインイベントなんて大体こんなもんで、それをただ毎日繰り返しているだけだ。


 別に、貰ってガッツポーズをする物を交換をするために学校に来ている訳ではない。

 こんな無駄な時間を過ごすくらいなら、さっさと飛び級して妹のために働きたいとさえ思っている。


 檻の中の猿が騒いている中、担任が入ってきた。


 顔はニヤけていて、


「お前ら喜べ、転校生は美少女だぞ!!」

「うっしゃーーーー!!!!」

「静かにせんか、鈴木!!」

「ひどいじゃないですか、先生」


 またも、バカが笑っている。


 こっちはそれどころじゃないんだ。気楽に笑えてるお前らの頭はミジンコ以下かよ。

 苛立ちから、奥歯はギシギシと音を立てる。


 だが、妹の手前ーー本性を見せる訳にもいかず、平然を装うことにした。


 教室の騒音を掻き消すかのようにガラガラと扉を開け、転校生がクラスに入って来る。


 彼女はあまりにも日本に不釣り合いな容姿で、中世の絵画に描かれているであろう女神そのものだった。


 歓喜の雄叫びを上げる男子と、歓迎はするが仲良くはしませんと他人行儀な女子達の歓迎ムードが早くも構成されていた。


 そんな歓声の中ーー教卓の前まで来ると、いやらしい目つきで肩を掴もうとした担任を、背負い投げで撃退していた。


「柔道部の顧問だけあって、受身はちゃんと取れるんですね」

「参りました、ごめんなさい……」


 クラスは騒然とした。


 だが、大半は呆気にとられて唖然としていた。

 一部を除いてだが。


「自己紹介ぐらい自分でします。薄氷アリスです。

 皆さんとは良好な関係を築いていきたいと思っているで、よろしくお願いします」


 ーーどこがだよ。


 拍手が起こる。


 大抵の奴は恐怖によるものだろう。あの柔道部の顧問のビビり方が尋常じゃない。


「私の席はどこですか? あの人の横ですね、わかりました」

「いやー、まだ何も……。ごめんなさい」


 教師は怯え、本来開けられていた天照の横には座らずーーーー。


「そこ、どいてくれませんか?」

「はいっ!! すみません!!!!」


 天照と行動を共にしている山刀伐の横に座っていた。


「よろしくお願いしますね、山刀伐さん」

「なんで、お前が……。いえ、なんでもないですアリス様」


 何かを悟ったのか、悟りを開いたかのような顔をして方針状態になっている。

 天照は天照で、羨ましそうな顔をしているのが俺には理解できなかった。

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