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015

「ふぅ。盛りのついた猫の真似は疲れますね。

 あなたはあなたで、話を合わせることもできない唐変木ということがよく分かりました」


 耳に心地いいと感じてしまう程の毒舌ーーあぁ、やはり彼女と過ごした日々は本当だったようだ。


 天照から届いたメールの内容も分からなくないと思えてきている自分もいた。


「何、ボケっとしてるんですか? わざわざ出る時間までズラしたというのに……。

 今回の戦いで尊い犠牲が出たことの自覚を持って挑んで下さい」


 この状況を理解した俺は、彼女から作戦の概要を再度確認することにした。


 あのとき彼女が言った作戦の概要は以下の通りだった。


 写真に写った被害者の大半は金を稼ぐために躍起になり、犯罪行為や身売りに身を染めていたそうだ。


 なのに、彼らの生活と言えば一応に貧困に喘ぐものであり、目も当てられない現状であったという。


 まるで、金を誰かに貢ぐための奴隷となり果てたというのが最良の表現だろう。


 アリス曰く、犯罪者に標的を絞った何者かによる犯行が高いらしい。

 その方が警察に通報されるリスクが低いというのが理由なのだろう。


 だから、犯罪者達が出没する場所に出向き、自らがカモとなり、犯罪者達を捉えるのが今まで行っていた捜査方法らしい。


 そこまで体を張ってまで捜査をする必要性があるのは、ごく一部の限られた対象にのみ有効だと思うのだが…………。


 彼女がアニメ通であり、そこから捜査に繋げているのではないかという疑問も出ている訳なんだが。

 それを指摘するとチンピラAになり兼ねないので、触れないでおこう。


 そして、カラオケで淡々とアニソンーーそれもかなりマニアックな謎の曲選を一通り歌いきった彼女の作戦に苦言を呈することもできず、体当たりな捜査は再開されたのだがーーーー。


 出口を出た途端、誰かとぶつかる。


 ぶつかった相手は俺ではなく薄氷アリスなのだが、彼女は相手に救いの手を差し伸べると、


「どこか、お怪我とかされてませんか?」

「すみません、僕がよそ見していたばかりに……。

 左手が不自由なので、右手で起こしていただけると助かるのですが、よろしいですか?」

「はい、私でよければ」


 本当ーーどちらが彼女の本心か分からなくなる。


 異能力者と解れば容赦なく裁きを下す彼女と、困ってる人ならどんな人物であろうと分け隔てなく救いを施す彼女。


 どちらも彼女であり、どちらも彼女が掲げている正義や信念といった類のものだろう。


 ーーだからこそ、彼女のーーーー。


「あの人を尾行します。着いてきて下さい」


 俺が彼女を理解するのに、まだ時間と回数が必要なようだ。

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