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ことだま幸わうこの国で  作者: 桃々藤
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アキの風邪騒動2

さて、薬を飲みたくないがために、見事に寝室を抜け出したアキは、足元をもたつかせながら廊下を歩きました。


着いた先は、押入れの裏にある『秘密の階段』です。この先は真っ暗で、階段も急勾配です。アキはその階段をゆっくりと登って行きました。


階段を登り切ると、暗い屋根裏部屋にたどり着きました。その部屋の奥に、小さな小さな温かみのある光が一つあります。

アキは、それに向かってフラフラと歩きました。


すると、どこからともなく、ギシギシと歯ぎしりのような音と共に、声が聞こえてきました。


「ご主人、どうしたんだい?顔色が良くないねぇ」

家鳴やなりの『ヤナコ』かい?ちょっと、ゴホ、風邪をひいちゃって」

「風邪かいな、キツイなぁ」

「おやぁ?家鳴りの『イエナリ』も、ゴホゴホ、一緒かい?仲良しだねぇっ、ゴホゴホゴホ……」

「ご主人、あんたそんな体でここへ来て、何しに来たんだい?」

「じ、実は、ハルの作る、く、ゴホゴホ、薬を飲みたくないんだよぉ。ここにしばらく置かせ……ゴホゴホゴホゴホ、置かせておくれぇ」


ともし火の前に立っていたヤナコとイエナリは、小さな体をトコトコと動かし、アキのおでこに小さな小さな手を当てました。


「熱い!」

「なんじゃこの熱さは!」

「アンタ!急いで冷たい水を準備しておくれ!」

「あいさヤナコ!」


イエナリは、屋根裏部屋の隅に置いてある手桶を持ち上げ、部屋の隙間から屋根の上へ走って雨水を貯め始め、ヤナコは、アキが登ってきた階段を下りて、洗面所から綺麗な手ぬぐいを持ってきました。


アキはイエナリとヤナコに促され、埃まみれの屋根裏に横になりました。埃を吸ったアキは、咳が止まりません。


「ゴホゴホゴホゴホ……ゴホゴホ、ゲヒ、ゲヒ……」

「あんた大丈夫かい?変な咳が出てるよ」

「ご主人、死ぬんじゃねぇぞ!」

「う、うん、ゴホゴホ……、今度、ここを掃除、ゲヒ、するね……」


イエナリとヤナコは、アキのおでこに雨水で濡らした手ぬぐいを乗せ、アキを懸命に看病しました。


「あ、ありがとぉ。ゲヒ……、私、幸せぇ」


その時ーー。


「ぉおむぁぃえたぁちぃぃぃーー!」

「うぎゃぁぁぁぁぁぁーー!」

「うぎゃぁぁぁぁぁぁーー!」


家の中に、雷が落ちました。


「なんじゃ?」

「ずいぶんとハルはおかんむりのようだねぇ。あの子たち、次は何をやらかしたんだい?」

「おやぁ、ゴホ、ばれちゃったねぇ……ゴホ」


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