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ことだま幸わうこの国で  作者: 桃々藤
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アキの風邪騒動1

ここは、とある山の中。木の葉が雨に当たってピョコピョコ揺れる様子を、家の縁側から見ている一人の女性と、彼女の両脇を二人の子供がいました。


「ハルさま、このはが おどってます」

「そうですねナツ、可愛らしいですね」

「ハルさま、なんで てんから おみずが おちてきてるのですか?」

「フユ、これは雨と言います。神様があの雲の上から、この大地にジョウロで水をあげてるのです」

「へぇ〜」

「へぇ〜」


さらに、ナツとフユの質問は続きます。


「ハルさま、なんで ちきゅうは まるいのですか?」

「ハルさま、ちきゅうって ひらたく ないのですか?」

「そうですねナツ、フユ、それは、神様が隅っこを作らないようにしたのです」

「なんで?」

「なんで?」

「地上を平たくすると、隅っこでひとりぼっちになる人が出てくるからです。だから神様は、地球を丸くして、ひとりぼっちをいなくしたのです」

「へぇ〜」

「へぇ〜」


二人の目は輝いていました。


ちょうど話が終わった頃、三人が座る縁側に向かって、家の中から歩いてくる者がいました。


「お、おはよう」

「おはようございます。どうしましたご主人?」

「ごしゅじん、かお あかい」

「どうしたの?かお あついの?」

「だ、大丈夫だよぉ」


そう言って、アキは咳をひとつしました。


すると、三人はアキを、どこから持ってきたのか、縄でぐるぐると縛り、大急ぎで寝室に持ち上げて行きました。

そして寝室の布団に寝かせ、毛布に羽毛布団を掛け、おでこに濡れた手ぬぐいを置きました。


「ご主人、今日はここから出てはなりません」

「ごしゅじん、こんこん」

「ごしゅじん、きょうは おやすみ」

「で、でも、ゴホ、薬、嫌だ……ゴホゴホゴホ……」

「なりません!今日は一日、お粥です」

「おかゆ、たべたい」

「おかゆ、いいなぁ」

「かぜひくと おかゆ たべれる?」

「かぜひく どうやって?」


ハルは、ナツとフユの頭を叩きました。


「馬鹿なことをおっしゃいな。あなた方は人間ではないのですよ」

「いた〜い」

「いた〜い」


ナツとフユは、叩かれた頭をさすりながら顔を見合わせました。ハルは立ち上がり、ナツとフユに言いました。


「お二方、ご主人が布団から出ないように見張ってておくれ」

「は〜い」

「は〜い」


ナツとフユの返事を聞いたハルは、台所へ向かいました。


ナツとフユは、アキの顔が見える所に並んで座りました。


「おるすばん」

「おるすばん」

「ごしゅじん こんこん」

「ごしゅじん おねんね」

「おかゆ たべて おねんね」

「おかゆ たべたい」

「たべたい……」

「たべたい……」


しばらく沈黙が続きました。外は雨脚が強くなり、日本家屋の壁に打ち付けます。


「ゴホゴホ、ゴホゴホゴホ……」

「ごしゅじん こんこん だいじょうぶ?」

「う、うん、大丈夫だよぉ、ゴホ。それよりナツ、フユ、ゴホ……、お粥、食べたくなぁい?」

「え?」

「たべたい!」

「私ね、ゴホ、いい事思いつい、ゴホゴホ、ついたんだよねぇ」

「なぁに?」

「なぁに?」


二人の目が輝きを放ち始めました。アキは二人に顔を近づけて、ごにょごにょと言いました。


「そっかぁ!」

「そのて が あったぁ!」

「いい考えでしょ?ゴホ」

「うん!」

「うん!」


二人はさっそく、後ろに宙返りをして変幻しました。


「ごしゅじん なった!」

「ごしゅじん なった!あ、でも、ごしゅじんは ひとりだよ?」

「そうだねぇ、最初はナツが、ゴホ、お粥を食べて、おか、ゴホゴホ……、おかわりしたら、フユが食べるといいよぉ。ゴホ、その間、布団の中で隠れて、ゴホ、隠れているといいよぉ」

「そっかぁ!」

「ごしゅじん、あたま いい!」


ナツとフユは、アキの体に縛られている縄を解きました。そして、アキの代わりにナツとフユは布団の中に入りました。


アキはふらふらと歩き、寝室を出て、何処かへ行ってしまいました。


「おかゆ、たのしみ」

「おかゆ、たのしみ」


二人の頭の中は、お粥の事でいっぱいの様ですーー。

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