表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ことだま幸わうこの国で  作者: 桃々藤
5/46

ナツとフユの金稼ぎ1

ここはとある山の中。今日も何処かでさえずる鳥の声を聞きながら、小さな子供二人が、日本家屋の庭で焚き火をしていました。


♪も〜えろよもえろ〜よ〜

ほのおよも〜え〜ろ〜

ひ〜のこをまきあ〜げ

てんまでこ〜が〜せ〜♪


「ナツ、フユ、何をしているのです?この時期に焚き火とは、季節外れですね」


焚き火を目の前にして歌っていた二人の子供は、男性の声のする方を向いて言いました。


「ハルさま!」

「これをもやしています」


そう言って、ナツとフユは手元のを見せました。ハルはそれを見るやいなや、「ご主人」と叫びながら家の中に入って行きました。


「ご主人!ご主人!」

「どうしたのぉ、大きな声を出してぇ?」

「ご主人、申し訳ございません!ナツとフユが……」

「ナツとフユがどうしたのぉ?」


ハルは、ご主人のアキの手を引いて、焚き火のある庭まで向かいました。


「もえろ〜」

「もえろ〜」

「あらぁ、ナツ、フユ、何を燃やしてるのぉ?」

「ごしゅじん、これを もやしたよ」

「これ、よくもえるね〜」

「あらぁ、全部燃やしちゃったのぉ?」

「はい〜」

「はい〜」


ハルは、アキに深々と頭を下げながら謝りました。


「申し訳ございません!この二匹、お金を燃やしておりました……」


そうです。ナツとフユは、いつぞやの報酬でもらった1百万円を燃やしていたのです。


「いくら野狐こどもといえど、ここまで無知だったとは……この白狐、恥を忍ぶのみです」


頭を下げるハルに、ナツとフユは頭を傾げました。


「いいよいいよぉ、燃やしたものは仕方ないからぁ」

「しかし……」

「私も、きちんとしまわなかったのが悪いんだよぉ」


アキは、ハルの肩を優しく叩きました。ハルは頭を上げましたが、顔が青ざめていました。


アキは、ナツとフユに言いました。


「ナツ、フユ、これはね、『お金』って言うんだよぉ」

「おかね?」

「おかねってなに?」

「おかねがあるから、私たちは生きていけるんだよぉ。このお家も、あなたたちが履いている下駄も、その服も、あなたたちが好きな揚げ物も、全部お金を払って手に入れたものなんだよぉ」


二人の顔が青ざめていきました。


「わたしたちが おかね をもやしたから、わたしたち、もう てんぷら たべられないの?」

「もう からあげ たべられないの?」


二人の目に、涙が溜まりはじめました。


「またお金を稼がないと食べられないよぉ」


二人は泣き出してしまいました。自分たちが何をしたのか、分かったからです。


「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

「もう てんぷら たべられない」

「もう からあげ たべられない」

「もう かきあげ たべられない」

「燃やしたものは仕方ないよぉ、またがんばってお金を稼ごうよぉ、ねぇ」


アキは、二人の頭を撫でました。すると二人は泣きやんで、アキの顔を見上げました。


「ごしゅじん、おこってる?」


この問いに、アキは少し考えて言いました。


「……少しねぇ」


二人は衝撃を受けました。普段怒らないアキが、少し怒っているからです。


この時、二人の心に決意が生まれました。


『自分たちで、お金を稼ごう』という、せめてもの罪滅ぼしです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ