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ことだま幸わうこの国で  作者: 桃々藤
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今日の日常〜筍〜1

ここは、とある山の中。今日も鶯がどこからでも聞こえてくるこの山に、一人の人と、三匹の狐がいました。


「いいですかお二方、何かに変幻する時は、きちんと頭の中で思い浮かべてください。例えば、妖艶なになりたければ……」


二匹の子狐の前で、白い狐が、ふわりと後ろに宙返りをしました。その時、白い狐は瞬く間に花魁の姿をした艶やかな女性に変身しました。横座りをし、キセルを持ち、その姿は、世の男性をいとも簡単に虜にしてしまいそうなほど、それはそれは美しい女性です。


「うわぁ」

「うわぁ」


二匹の子狐は、目を輝かせました。


「さぁ、ナツ、フユ、やってご覧なさい」


声まで艶やかでまろやかです。


ナツ、フユと言われた子狐は、白い狐と同じように宙返りをし、花魁の女性に変身しました。ですが、どうも違和感があります。


ナツが変身した花魁は、顔は花魁の艶やかな女性の顔です。しかし、首から下は狐の姿そのものです。


「ナツ、顔しか出来ていませんよ」

「えぇ〜?」

「ほら、そう言っているうちに顔が歪んで来ましたよ」


フユが変身した花魁は、狐の尻尾が付いており、それが左右に揺らめいています。


「フユ、声を出してごらんなさい」

「そこのおにいさぁん、わたしとあそびましょうよぉ〜」

「低い!とてつもない重低音ですね。その声では女の子とは言えません」

「えぇ〜?」

「ほら、そう言っているうちに、足元から獣になっていってますよ」


二匹の花魁は、すぐさま元の姿に戻りました。


「お二方、まだまだですね。これでは『白狐』にはなれませんよ。いいのですか?このまま『野狐』のままで?」

「いやです!」

「わたしたちも、りっぱな びゃっこ になりたいです!」

「では、ますます精進を怠らぬように」

「はい、ハルさま!」

「はい、ハルさま!」


これらを、一軒家の縁側に座って見ている人がいます。


「ナツ、フユ、だいぶ上手になったねぇ」

「え?ほんと?」

「わたしたち びゃっこ になれる?」

「えぇ、頑張ったらなれるよぉ」

「やったぁ!」

「やったぁ!」


浮かれているナツとフユに、ハルと呼ばれる白い狐が一喝しました。


「お前達、精進を怠らぬように!」

「はぁい」

「はぁい」

「ご主人、甘やかすことはなりません」

「ごめんなさ〜い」

「では、お二方!もう一度ですよ?」

「はい」

「はい」


狐の特訓がまた始まりました。


その時、一軒家の屋根の方から、「お取り込み中かな?」という声が聞こえました。ご主人と呼ばれるその人は、声のする方に顔を向けると、そこには、馴染みのある姿がありました。

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