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ことだま幸わうこの国で  作者: 桃々藤
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今日の依頼人〜女優編〜1

ここは、新芽がほころぶ山の中。桜の花は終わりを告げ、これから緑が深まるこの山の獣道を、一人の大人の両脇を二人の子供が、それぞれ手をつなぎながら、何やら歌いながら歩いています。


♪め〜だ〜か〜のがっこうは〜 か〜わ〜の〜なか〜

そぉっとのぞいて みてごらん

そぉっとのぞいて みてごらん

みんなで おゆうぎしているよ〜♪


「ねぇごしゅじん、なにかの とりがないてるよ。『ホー ホッケキョ』って」

「ねぇごしゅじん、あのとりは なぁに?」

「そうだねナツ、フユ。あの鳥は、うぐいすって言うよぉ」

「へぇ〜」

「へぇ〜」


二人の子供は、面白そうに鶯の鳴き声を真似しました。


「ホッケキョ〜!」

「ホッケキョ〜!」


三人は、笑いながら歩き続けました。


この人たちが歩いている、獣道のその先に、一軒家があります。伝統的で懐かしく見える日本家屋です。

縁側のすぐ近くには、それは立派な藤棚があり、とても綺麗に咲き誇っています。


「ただいまかえりましたー!」

「ただいまかえりましたー!」

「おや?おかえりなさいご主人、ナツ、フユ。お散歩は楽しかったですか?」

「うん、楽しかったぁ」

「ハルさま きいて!めだかがいたよ!」

「めだかのがっこが おゆうぎしてたよ!」

「それはそれは、誰が生徒で先生か分からなかったでしょうねぇ。ほら、お上がりなさい。ご主人もご無事で何よりです」


「ハルさま きいて!ホッケキョがいたよ!」

「ちがうよナツ、あれは、うぐいすっていうとりさんだよ!」

「それはそれは、とても可愛らしく鳴いていらっしゃったでしょうねぇ」


子供のナツとフユは、履いていた下駄を脱ぎ捨てて縁側に上がって、お盆に置いてあった饅頭を手づかみで頬張りました。


「これお前達!きちんとご挨拶をしますよ!」

「ごめんなさいハルさま。いただきまーす!」

「ごめんなさいハルさま。いただきまーす!」


ご主人と言われるその人は、子供が脱ぎ捨てた下駄を丁寧に揃え、縁側に座りました。


ハルさまと言われるその人は、お茶を湯のみに注いで、ご主人のそばに置きました。


「今年も、美しい藤が咲きましたね」

「うん、そうだねぇ」


そう言ってご主人とハルは、湯のみお茶をすすり飲みました。


とてもゆったりとした時間です。



そんな時を割り込むように、先ほど三人が歩いてきた獣道から、一人の女が歩いてきました。


「おやぁ?お客様がいらしたねぇ」

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