人狩り行こうぜ
某大学ではあるゲームが流行っている。
「一狩り行こうぜ!」
CMでお馴染み、モンスターハンターという奴だ。俺は持っていない。そもそも、ゲームをする方ではない。
友達がいない、……というわけではないが。そーゆうことに興味が持てないだけだ。
しかし、その言葉を別のところで聞いている。
「”人狩り”?行く行く!場所はどこよ?うんうん。鯉川も来るんだー」
俺の彼女、山本灯がよく電話中に口にするのだ。相手は山寺沙耶という危険な女だ。
電話を切るとすぐに灯は俺に言う。
「藤砂ー。私はこれから港で”人狩り”してくるから、この辺でデートはおしまいね」
「これはデートというか、……組み手をしているだけだがな」
「私等はそーゆう仲でしょ!また明日、誘ってよ」
お互い、戦うことを生きる意味としている。あの時からほぼ毎日、組み手という名前の命を削る死闘をしている。灯は俺と同い年だが、随分と強くなった。”超人”の中の”超人”まで上り詰めたと認めている。
走って帰っていく灯がもう見えなくなって、ふと最近彼女が言っている”人狩り”がどんな意味か気になってみた。
「”人狩り”か、……ロクなことじゃなそうだ。心配だな」
某所の港。
ここでは悪の組織的な何かが、武器の密輸や麻薬取引が行われていた。日本という法が厳しい国ではとても大きな商売となっていた。
「へへへっ、んじゃいつものお金の方を……」
「またヨロシクな」
この取引に関わっている人数は30人以上。それも武装集団という、抗争と戦争を経験している連中であった。
闇取引にも精通している彼等に、ついに正義の光が放たれた。
カァッ
「だ、誰だ!?」
「眩しいな!」
激しいライト共に1人の、戦隊者のお面を被った婦警が現場に駆けつけた。ど派手な登場と共に決めの変身ポーズ!
「せーぎの、仮面婦警!カープちゃんレッド!登場!」
「な、なんだテメェ!?」
「鯉川友紀だよ!……あ、今はカープちゃんレッドっていう正義の仮面婦警!」
武装集団を相手に颯爽と現れた鯉川に、武装集団達は当然。ありったけの武器を彼女に向けて攻撃した。
「何者かしらねぇが!生きて帰れると思うなや!」
「やや!銃を向けるんだね!」
遠くで見ている藤砂にとって、この後の光景はまさにモンスターハンターだった。いや、ハンターモンスターと言葉を入れ替えた方が良い戦況。
「銃刀法違反!」
礼状を述べながら、神速の動きで銃弾を避けつつ一人の男に回し蹴りを叩き込む鯉川。あまりの速さに武装集団の1人が震えながら、彼女の異名を思い出した。
「ま、まさかお前!”スピード・ジャスティス・クイーン”、神速技を持つ格闘家にして”超人”!」
「あははは、結構長い異名だよね」
銃よりも速く動き、物理的に防御不能を行う鯉川に船や車を使って逃げ出したり、むやみに攻めるものと分かれていった。
「こ、この!たった一人で」
バギイイィッ
「ごめーん、話してる余裕ないから。全員、一発必勝するよ!」
モンスターその1.
鯉川友紀。職業、婦警。
”超人”、スピード・ジャスティス・クイーン。
驚異的なスピードを持っている”超人”。常人では反応できない速度で移動でき、高速道路を普通に走ったり、海の上を走ったりもする。
「船だ!船に乗って逃げるんだ」
間一髪、鯉川の攻撃から逃れた者達の一部分は船に乗り込んで海へと逃げるつもりだった。
だが、よもや海中から魚雷のような攻撃が襲ってくるとは思わなかっただろう。
ドゴオォォッ
「下から爆発が起きましたー!?」
「い、一体なんだー!?船が吹っ飛ばされたぞ」
この冷たい海の中、水着で待機していた人物が船底を殴って船をぶっ飛ばしたのであった。
「あーあ、冷たかった。それにしても、歯応えのない奴等」
モンスターその2.
山本灯。職業、大学生。
”超人”、拳女王
頂点に君臨する打撃を放てる”超人”。拳による攻撃は技も力も兼ね備えている。、
「や、山本灯!?なぜこんなところにいる!?」
「拳一つで山を平地に変え、殴られたら死ぬ。打撃天使!」
海に落ちた連中は次々に灯から逃げられず、殴り殺されるという悲惨な死に方。
そして、最後。車を持ち寄って逃げようとした連中にも最後のモンスターが立ちはだかった。暴走する車に飛び込んでくる、小柄な少女みたいだった。
「ひ、人が!」
「構うな!轢き殺せ!!」
しかし、轢くことは彼女の握力を持ってすれば叶わない願望だった。時速60キロの車を臆することなく、左手で握り止める女性。
運転手はその時、初めて女性の顔に火傷傷があることを知って泡を噴いて気絶してしまった。
「や、山寺……沙耶……」
モンスターその3.
山寺沙耶。職業、ヤクザとか暴力関係の仕事。
”超人”、死屍姫
驚異的な生命力と握力に特化している超人。不死身に近い頑強さを持っている。
「悪いけど、これも鵜飼組の仕事なの。死んでもらうよ」
たった3人の女性。いずれも、20そこらの女性でありながら、”超人”という異常な身体能力を備えている3人だ。
銃を手にし、数を用いたところで、彼女達から逃げることも勝つ事もありえなかった。それほど圧倒的な暴力を見せ付ける。現場は10分もしない内に静かになり、戦える男達は消え去った。
「あー!もう終わりー?」
「歯応えなくて悪かったな」
「まーいいよ!正義執行したし!」
楽しそうに一仕事を終えた三人の前に、遠くから眺めていた藤砂がやってきた。
「お前等の”人狩り”というのは、……こーゆうことだったのか」
「あ、藤砂!ずっと見てたの?」
「遠くから見ていて、……お前達がモンスターだということは分かった。なるほどまさに、……”人狩り”だったな」
……………静寂がまた、熱くなってきた。
「誰がモンスターだ!!」
「私達は女性だよ!」
「化け物扱いすんな!!お前も化け物だろうが!」
藤砂はこの後、3人から強烈な打撃をもらったのであった。モンスター相手に言ってはいけない言葉。それはモンスターだった……。