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Versus  作者: 沙流芭 凍裏
5/8

異端審問官

不動は、未知なる敵に対して、何も躊躇がなかった。

相手は、既にとうの昔に死んだ、魂のない亡者の群れである。

生身の敵よりも感情的にはやり易い。

徐々に周りを囲まれながらも六角棒のひと振りで、確実に一体の骸骨を

破壊していった。

弱点の無い敵に対しては、むしろ破壊することに長けた単純な武器は有利で

ある。相手は、恐怖を持たず、ただがむしゃらに突進してくるだけだ。

動きが直線的で単純であるがため、攻撃のスピードと数の多さだけ気をつけて

いればそれほどの難敵ではないように思える。


不動は10体目の亡者をバラバラに粉砕すると、前方の霞を心配そうに眺めた。


「お嬢、大丈夫か。」


前方にいる霞が亡者の群れに覆い尽くされたと見えた瞬間、錆び付いた剣が

手首ごと吹き飛んだ。どこから出したのか霞の左右の手に鋼鉄製のトンファー

が握られ、亡者の武器を持つ手に狙いを定めて攻撃が繰り出された。

まずは、相手の攻撃力を削いだ上で、下半身を狙い、動けない状態にする。

俊敏な体術で相手の単調な攻撃を避けると、確実に相手の武器を手首ごと叩き

落していく。


「こんな数だけの敵など、なんてことはないわ。それよりもそのお嬢っていう

 呼び方いい加減にやめてくれない。」


軽口を叩いたものの、二人の間には新たな亡者が割って入り、徐々に引き離され

ていく。


霞は、前方の亡者に踵落としを決めると、頭蓋骨ごと粉砕した。

周りを囲まれそうになると、腰を低く落とし、回し蹴りを一回転させ、相手を

転ばせると囲いから抜け出した。


「あとはよろしく、不動。」


「ちょ、ちょっとお嬢、油断するなよ。」


霞は、先行した璃人の後を追おうとしたが、背後に急に殺気を感じて飛び

退った。


「くっ。」


霞の口から大量の息が漏れた。

黒装束の背中部分が、ざっくりと刃物のようなもので切り裂かれている。

霞は辛うじて装束の布部分だけで、急に現れた敵の攻撃を躱していたのだ。


背後を振り返った霞の眼前に刃渡りが50センチ程の十字型の剣を左右に

握った長身の人物が佇んでいた。真白な詰襟の祭服を着た司祭に見えたが、

頭から真っ白いフードを被っており、その風貌は伺い知れなかった。


近づかれるまで全く気配を感じなかった…。


「何者。わざと殺気を送ったわね。」


霞は男を睨みつけた。


「異端審問官、アルマンド・カストロ司祭。異端の女よ、一刀を良く躱したな。」


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