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Versus  作者: 沙流芭 凍裏
3/8

船上

巨大な船影は、防波堤に設置されている古タイヤの緩衝材にめり込む形で停泊

していた。

小さな古タイヤが緩衝材になるわけがなく、この船の操舵士が防波堤すれすれ

でこの豪華客船を止めたことが容易に想像できた。

巨大な客船は、穂先を正面に向けたまま停泊しており、当然橋桁などは下ろさ

れていない。


お嬢と呼ばれた女がその不気味な客船に近づき見上げると、その船は少なく

とも百年以上は昔の豪華客船であることが見てとれた。一切明かりがついて

いないが、その船からは無数の気配が漂っていた。


黒装束の女は、一瞬躊躇したように思えたが、息を止めると客船の正面から

船壁を一気に駆け上がった。

途中一度だけ船壁の鉄板の繋ぎ目に足をかけたかと思うと、次の瞬間地上から

5メートルはある客船の舳先まで飛び上がっている。


女は、客船の穂先に降り立つと闇に包まれる船上を見渡した。


「招きもしないのにわざわざ侵入してくるとは、そんなに死に急ぐこともある

 まいに…。」


しっとりとした若い女の声が暗闇の中から湧き出てきた。


「私は、日本国外務警備局 特殊偵察班 桐生 霞。お主の所属と目的を

 伝えよ。」


「同じく、璃人。」


黒装束の女の背後から遅れて仲間の一人が名乗る。


「そして、不動だ。」


船がきしみをあげたかと思うと小山のような大男が、履い登ってきた。


「ふふっ。自ら名乗るとは日本人は、噂に違わぬ馬鹿どもだね。

 まあ、日本侵攻部隊の総責任者 マリアンナとでも名乗っておこうかね。」


闇の中から腰まである黒髪の若い女が浮き出てきた。


「どこの国か知らんが、この日本国侵攻を語るとは、恐れ知らずのやつよ。

 俺が捕らえて全て吐かせてやるよ。」


璃人と名乗った男が、先頭にいた霞を越えて、突進しようとした瞬間、無数の

殺気があたりに充満した。


ぬぅっ。璃人は、マリアンナの周りから溢れ出した殺気に圧倒され、一瞬足を

止めた。


気づけば、マリアンナの周辺には何やらばらばらの瓦礫のようなものが多く

体積している。

その無数の瓦礫が、自らの意思で動き出したように日本国の3人には見えた。


「ほう。いち早く気がついて足を止めたか。命が少し長引いたな。

 まずは、我が下僕を全て処分してから話を聞こうではないか。」


無数の瓦礫は、自ら骸骨を形作ると、頭蓋には鬼火のように爛々とした赤い光

が宿り始めた。その数は、少なく見積もっても30体ほどである。





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