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夜空

作者: 森野涼子

「花火?」


「そう!この近くの川の土手で打ち上げ花火やるんだって!」


お祭り好きのリリスさんが「重大トピックスよ!」と夏目先生がホームルームするのを無視して教卓の前に立って言った。

花火、打ち上げ花火なんて、一人でいつも自宅で見ていた記憶しかない。


「おい鈴森今ホームルーム……」


「ということでみんな、行くわよ!!」


「おーい、俺のことは無視かぁ」


「大丈夫ですよ先生、せんせーも一緒に行くんですから」


「おぉ、それならいい。ついでにホームルームもやっといてくれ」


「任せてください!だからせんせーは寝てていいですよ―!」


リリスさんがそういうと、夏目先生は「オーケー、後は任せた」と自分の定位置である寝どこへ向かってそのまま眠りについてしまった。担任なのに、果たしてこれでいいものなのか。というかこれ、学長に見つかったらただじゃ済まない気もするけど……


「と言うことで改めて、みんな行くこと決定だから!日時はね――――」


あんまりにもスイスイ進む(むしろ強引に決めて強制的に参加だから)リリスさんの話をまとめるとこうなる。

・日にちは8月15日

・待ち合わせは3時半

・変な交通費とか人だかり嫌い(リリスさんが)だから裏道行くわよ!(迷った保証ナシ)


ということ。


「あの、迷ったら――――」


「りののん、そんなの都会の勘と根性とその場の空気で何とかするものよ!」


そんなことを言われてしまったら返す言葉も見つからない(かけてもきっと結果変わらない)ということで、他のみんながやっているスルースキルを使って頷くことにした。


「他に質問は!」


「おねーさま、黒飴はおやつに入りますかー!」


どこからか取り出して黒飴を右手に握りしめている凛ちゃん。それをみたリリスさんは「入るわよ、ただし太るかもしれないから数は気をつけてね!」といつも通りの口調で言う。いい加減この二人のやり取りにも慣れてきた気がする。


「昼寝は?」


「花火するんだから関係ない!むしろしたら叩き起こす!」


「うえぇ……」


さも面倒そうにしながらも楽しみを隠しきれない様子の高崎君。リリスさんが高崎君にちょっかい出す理由もなんとなくわかってきた気もする。



「他はないわね!ということで、15日に駅前集合だから!」



ホームルームは特になさげだから、かいさーん! と言うリリスさんの合図を最後に、いつも通りのクラスの雰囲気になっていく。なにをするわけでもない、みんながそれぞれ思いのままに過ごす時間の始まりだ。


リリスさんと篠田さんと凛ちゃんはいつもどおりじゃれ合っているし、凛ちゃんは篠田さんに悪態をついて何度も「おねーさまはわたしのー!」という声もよく聞こえる。

高崎君は音楽を聴いてその音楽に合わせてバチ代わりに指で机を叩いている。何度も思うが痛くないの、それ。

火神君は学級委員の仕事、とあわただしくこのクラスをでて行くことが多い。このクラスで一番働いている姿をよく目にする。

巧真君は火の光に照らされて「む~♪」とお昼寝している(まだ朝9時)。

横峰さんはいつも通りのゲームの世界に夢中。


こう周りを見回すとやはり思うことが一つ。


「普通なクラスって、ホントに普通だったんだな……」


転校してくるまでは私の思う普通とは全くかけ離れた世界で暮らしてきたわけだけど、このクラスをみていると今まで外の世界で見てきた「普通」とは全く縁もゆかりもあったものじゃないと改めて思ってしまう。

かく言う私は――――――



「早くしあげないとなぁ……」



ある“モノ”とにらめっこしながら、それでもやる気がおきなくて家から持ち出してきた一冊の本の世界に没頭する。

今読んでいる本は学園物の日常を描いた物語で、ちょうど夏真っ盛りのところだった。

お祭り、縁日、海、花火―――――



「花火かぁ……」



15日まであと2日。初めて見る友達との打ち上げ花火に、心のどこかでウキウキしている気持ちを抑えきれず、クスっと笑っていた。

明後日。本当に楽しみだ。




______________________________________


「あの……」


そして私は今、とてつもない光景が目の前に広がっていて言葉に表すことすらできないでいた。



「ヒャッホー!!」


「ほらほらりのっち、早くくるです!」


「いやその……」


「細かいところは気にしないの!みんなではしゃぐもんなんだから!」



私が一番楽しみなもんだと思っていた。

今まで体験したことのないようなものが待っていると思うと、ウキウキするのは性分ゆえに仕方ない。

だけど―――――



「全力で野球してたら他の人に危害行くよ!?」


しかも外野なしでやってるから万が一飛んで言ったら長打コースどころじゃない、満塁ホームランがホイホイ出るどころの問題ではない、そもそも野球と呼べないようなものになっている。しかもピッチャーの凛ちゃんが投げるボールは目にもとまらないようなものすごいスピードで、キャッチャーのリリスさんが時々手をフラフラとさせている。あれ滅茶苦茶痛いだろ間違いなく。ゴムボールとはとても思えない速度に、私は目を見張ってしまう。


――― というかあれ他の人に当たったら怪我じゃ済まない!! ―――


いや、確かに土手には早くついた。時間もまだ5時前で日もまだ沈んでいない。いやしかし他の人がいる中で堂々と野球って―――――



「ほらりのっち、そっちとんでったー!!」



そんなことを考えているうちに高崎君が打ってきたボールがものすごい勢いで私の方に飛んでくる。ゴムボールとはいえど、当たったらそれなりには痛いんだろう。


「っ!!」


すると自分でも気付かないうちにぱっと目の前に手を出していたらしく、そこに強い衝撃が来るのをしっかりと感じた。しばらくその衝撃に耐えていると、どこからかパチパチ、と拍手される音が聞こえた。



「ナイスキャッチりののん……」


「何の魔法!?どうやったんですかー!?」


「いやぁ、俺も飛ばし過ぎたとは思っていたんだが……」


「すげーな大崎!!」


「びっくりだな俺も」


「すごい梨乃……」


「りのっちすごーい!!」


「大崎、お前に野球のセンスがあったなんて、先生知らなかったぞ」


他のクラスのみんなも「大崎さんすごい」とか「そんな特技あったんだ!」など多種多様な歓声が聞こえてくる。

何が起きたのかよくわからなかったので、自分の手に怒った衝撃が止んだのを確認してみると、あの速度で来ていたボールが綺麗に私の左手に収まっていた。



「いやぁ、ハハハ……」



自分でも考えられなかった事態に、正直驚きを隠せなかったがあそこまで褒められて少し嬉しくなった。


「それじゃありのっちキャッチャーで!私の剛速球、とるです!」


おねーさましかとれる人いなくて、ものすごい勢いでこちらに向かってくる凛ちゃんに連れられながらバッターボックスの少し後ろ、さっきまでリリスさんがいたところにポジションをとった(むしろとらされた)。


「それじゃあいくですよりの―っち!!」


「お、おー!」




_____________________________________



「まさかりのっちがあんなにキャッチャーできるとか知らなかったです……」


「は、はは……」



そりゃ取ってるだけだもの、なんて言葉はこの際飲み込んでおくことにする。正直グローブ着けてるのに凛ちゃんの全力投球が痛かったし、多分なかったら今ごろ私の手は再起不能になっていただろう。周りの人に危害を及ぼさないようにこっちも凄い必死だった。

時間はすぎるのは本当に速くて、あっという間に日が暮れてしまっていた。それに気がつかないで、ただひたすらに凛ちゃんのボールに必死になっていた自分を思い出すだけでどうも笑ってしまう。

でも、あんなに必死になってスポーツを「みんな」としたのは初めての経験で、その初めてがこの人たちでよかった。



「ねぇ、梨乃」


「どうしたの、横峰さん」


「楽しい?」


「へ?」


「みんなといて」


「あ、うん!」


「そう、それはよかった」



なにやら意味深な笑顔を見せた横峰さんに首をかしげながらみんなの作っている輪に戻ると、なにやら花火の話をしているようだった。




「ねぇりののん、りののんはどんな花火が好き?」


「どんな花火?」


「ほら、あるだろ?打ち上げ花火とか、線香花火とかネズミ花火とか」



リリスさんの言葉に補足してくれた篠田さんにありがとうございます、と一言添えて考えてみる。

どんな花火が好きか。そんなの考えたこともなかった。それよりも、私の中の花火は一人で見て一人でやる、そんな小さな思い出の一ページにも満たないものだから。

そんな中でも好きなもの。それは――――――



「私は、打ち上げ花火が好きです」


「おーりのっちオーソドックスだねー!」


「でも」


「ん?」



「ドーンって大きく咲く花火じゃなくて、その下でパチパチなってる小さな花火が好きです」



「「「へ?」」」




そこにいたクラスの全員になんで?みたいな顔をされる。普通打ち上げ花火って言ったら大きいほうだろ、という固定概念は私の中では存在しなかった。それよりも、私は下の花火が好きだから。



「だって、あれがあるから上が映えるじゃないですか。

私はあんな大きな花みたいに目立てないから、小さな花火みたいに大きな花火を映えさせるような、そんな縁の下の力持ちみたいなところが、私は好きです」



やっぱり変ですかね?とおどけて笑ってみせると、一斉に私に飛びかからんばかりの勢いでリリスさんと凛ちゃんがやってきて抱きついてきた。それに驚いて一瞬よろめきそうになるが、なんとか立った状態を維持することができた。


「ど、どうしたんですか!?」


「りののん、やっぱり好きー!!」


「私もそう言うところ好きです―!おねーさまの次くらいに!」



えっと……と周りに救助を要請しようと目配せしてみるが、満場一致で首を振られる始末。むしろ「すまん大崎、俺らにはどうしようもない」みたいなそんなあきらめにも似たような表情をされるもんだから、困り切ってしまう。

どうしようかと考えていると、一気に目の前に一輪の大輪が夜空いっぱいに咲かせるのが見えた。




「あ、花火―――――」






「「「花火だああああああ」」」



一気に上がった花火に気がついた二人と、それを暖かい眼で見ていたみんながいっせいに空に目を奪われる。私も例外ではなくて、息をのんで空を見上げる。

大小様々の花が空を埋め尽くすように、私たちの目の前を染め上げて行く。



「綺麗―――――」



綺麗なその花たちは何度も何度も、間隔を変えて、私たちにたくさんの花を見せてくれる。

今まではずっと一人で見ていたそれを、今日はたくさんの「友達」と見ている―――――



「大崎、どうして泣いてんだ?」


「え?え??」



気がついたら流れていた涙に、驚いて流れてきたものをぬぐう。気がついたのが火神君で「黙っとくよ、みんなみてるから気付いてないさ」と言ってくれたのが本当にありがたいと思った。





ずっといじめられて、こんなところきたくなかったこともあった。

ここに来ればいじめてる人が誰かはいて、からかわれるのがオチだったから。

だから、知り合いも誰もいないこの土地にやってきて、ここにいるみんなと出会って。




「私、ここでみんなを支えるからね―――――」












空に輝く、小さく咲き誇る花火に誓って。

いかがでしたか?

あまり考えて書いていないのでかなり拙文でありますが、なんとなくわかっていただけたら幸いです。


花火あったんですよ、私見に行ったんですよ!←

野球のくだりはなんかいつも通りのあのドダバタ勘が欲しかっただけなんです、ただの好奇心からだったんです許してくださいっ!←←


ということで今回はあんまり言うことないです、ただひたすらに「ごめんなさい」の一言に尽きますごめんなさいm(_ _)m


ということで、今日は失礼します(`・ω・´)

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