亀石くん(超短編)
となりの席の亀石くんが、授業中、唐突にひとりごとを言った。
「便座ブロックっていわずに、便座カバーって言えばよくね……?」
おいおい。
ベンザブロックは、かぜ薬だよ
……その翌日。
亀石くんは風邪をひいて休んだ。
いまごろ自分の間違いに気付いているだろう。
……さらに、その翌日。
亀石くんは座りながら腕を組んで「う~ん、う~ん」とうなっていた。
どうしたのか尋ねると、彼は言った。
「きのうさ、母ちゃんに変なもん飲まされたんだよ。まあそのおかげでかぜ治ったけどさ」
「変なもの?」
「うん。トイレで使うはずの、粒みたいなの」
「?」
意味が分からず首をひねっていると、彼はつづけてこう言った。
「たぶん、あれは便座を綺麗にする消臭剤だと思うんだよ」
おいおい。
だからベンザブロックは、かぜ薬だって。