第五章(8)
腰を落としてリフェが剣を構える。ジィーフェもまた、杖をしっかりと握りこんだ。
強い風が吹く中、互いの殺気が合図のように呪文を言って駆け出す。
「アングリフ・フォ・ベフライエン!」
「バイシュタント・ヴィ・ベフライエン!」
ジィーフェとて、リフェ相手に長い呪文を唱えている暇はない。一番簡単な炎の魔法を、最大級の魔力を練りこんで作り上げる。
物体どころか空気すら焼き焦がしそうなそれを、真っ直ぐにリフェに向かって放った。
だが、リフェが唱えたのは補助の風魔法。彼の十八番であるスピードとあの剣の強度を生かして、炎の中を突っ込んでくる気だ。
受け止めていては後ろに押され隙を作ってしまう。しかし、あの速さは尋常ではない。
つきすぎたスピードを殺すのは容易ではなく、一度目標を見失えば再度体制を直すのに時間がかかるはず。
つまり、上手く避けられれば後ろを取れる。
そう思った瞬間、ジィーフェは炎の中を突っ切ってくる物体を見つけた。タイミングを見計らい、最初に飛び出してくる物を避ける。予想通り、リフェの剣。
そうして、そのあとに続く彼の体を避け、背に攻撃を加えようと杖を――
(!? い、いない!)
目の前を横切るのはリフェの大剣のみ。同時に、炎の中からではなく、ジィーフェの横を駆け抜けた小さな風。
自然と、剣の軌道を目で追う。
炎から飛び出した、目の前を通り過ぎていく剣の柄。それを、ジィーフェの後ろに回りこんだリフェが、しっかりと掴んだ。
「っ……!」
言葉を発する間もない。
ズンッと強い衝撃を腹部に感じたまま、ジィーフェの体は宙に投げ出された。




