世界は小さく呼吸する
しんどいな…いちぺーじ…
あれから4年。わたしは14歳になりました。
そしてたくさん勉強したの。
淑女としての教養、読み書きや音楽にダンス。
それ以外に経済学や経営学、植物学や歴史まで。
でも数学は苦手で、計算ぐらいしか出来ないの。
他にもたくさん勉強したけど、実はね?一番楽しかったのは民衆の生活なの!
まず、自分のことは自分で出来るようになったんだから。
朝は自分で起きてカーテンを開けて、顔を洗って髪を整えるの。
それぐらい…って思われるかもしれないけどね、私たち貴族の娘にとっては、メイドにしてもらうことが当たり前なのよ。わたしも、最初は大変だったわ。
出来るようになってからは、たまにしかしないようにしてるの。メイドたちのお仕事が無くなってしまうもの。
あとね、お料理もマスターしたのよ。うちのコックにお願いして、宮殿料理から家庭料理まで教えて頂いたの。包丁も火も使ったことがないけど、もともと料理の才能があったのかもしれないわ。今ではコックも唸るほどの腕よ。アップルパイはコック以上だと家族にも大好評♪
それから毎日、ティータイムのスイーツは自分で作ってるわ。
最後に、メイド長のマーサに頼んで家事を教えてもらったの。掃除、洗濯、皿洗いに庭そうじ、床磨きまで。
わたし、メイドたちを尊敬したわ。だって、あんなに重労働で、はっきり言って汚れ仕事だとは知らなかった…
でもね、どんなに手がボロボロになっても、諦めなかったわ。
今では次期メイド長と言われるほどの実力よ。
マーサも「あなたは町娘以上の根性です。公爵令嬢として育ちながら…町娘でさえ悲鳴をあげる仕事量でしたのに…ちっ」と、言ってくれたわ。
ふふっ。彼女が認めてくださったということだわ。ありがとう、と笑顔で伝えれば、彼女は悔しそうに去って行った。…なぜかしら?
こうして、淑女としての教養も男性としての知識も、一般女性としての生活力も身につけた。
あとは、外で実際に見て学ばなければならない。
わたしはこの4年間で、新たな目標ができたの。
今までの知識が役立つ素晴らしいアイデアだと思うわ。でも本当に、それでわが領地の子供たちを救えるのかわからない。それを確かめるためには、外に出なくちゃ。
もう14歳。そろそろ町に出歩いてもいい時よね?
自分の立場はわかっているので、もちろん、お忍びでだけど…
パタン、と日記を閉じて、後ろに控えていた騎士たちへ向き直る。
「領地を見て回りたいの。護衛、してくれるかしら?」
動き出します。