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最強聖母伝説  作者: 翡翠
3/23

ゆめみたいにしあわせだった

今回は兄と姉が登場。




今回の講義で、わたしは自分の無知を痛感しました……。


「お兄さま、お姉さま」

「どうしたんだい?そんなに暗い顔をして」

「そうよ、マリア。お食事中にそんな顔をしてはいけません」

「だって、本当に悲しいのよ…」


兄さまは、おや?と首をかしげた。


「今日は、マリアの大好きな社会の講義じゃないか」

「もしかしてスタンリィ先生に怒られたの?」


姉さまは心配そうにこちらを見る。わたしはそれに、力なく首をふった。


「ううん。違うのよ。今日ね、魔物についてお話していただいたの」


ああ、と呟いて、兄さまも暗い表情になった。


「僕も小さい頃に習ったなあ。確かに楽しい内容じゃないね」

「あれでしょう?ここ10年で、魔物が急増しているという…」


おそろしいわよね、と姉さまがわたしの頭を優しく撫でた。


「今世界では、たくさんの人々が食い殺されていると聞きました。それによって両親をなくし、路頭に迷う子供たちで街は溢れていると……」


わたしは、今まで、なにも知らなかったの。


毎日毎日、

広いお屋敷にいて

メイドに朝の支度をしてもらって

美味しい食事をして

淑女としての勉強をして

キレイなドレスを着て

ティータイムをする






「世界は優しくて美しいのだと、信じて疑わなかったの」


だから当然、世界中の子供たちも、わたしと同じだと思っていた。

子供は大人に守られるものだと。でも違ったのだ。

大人たちは魔物と戦い、散っていく。魔物と、そんな大人たちへの対応で、国は手一杯なのだ。残された子供たちへの対応にまで手が届かない。となると、見捨てられた子供たちは路頭に迷い、ひとりで生きていかねばならない。


それが、マリアの知らなかった、マリアの時代の常識だった。



「マリア、我々には貴族としての生活がある。残念だけれど、僕たちには世間の状況を変えることはできないんだ」

「そうよ。私たち貴族の娘が、民のためにできることは、少しでも国にとって有益となる結婚をすることです」


「そう、なのでしょうか…」


わたしと同じような子供たちが、今この瞬間、どこかで泣いている。


わたしにも、全ての子供たちを救うなんて、不可能だとわかっているの。

でも、わが領地の民ぐらいは救いたい。


わたしは公爵家の娘。


地位と名誉と財力がある。しかし、今の偏った知識だけでは誰も救えない。もっと民の生活に実用的な知識を学ばなければ……


「わたし、もっともっと学びます。それから、わたしが民のために何ができるか考えます」


もちろん、有益な婚姻関係が「国」のためになることは分かっています。

しかし、それによって「民」の生活が変わることはあまりありません。


「もっと直接的に、民の役に立ちたいの。世界が、とても悲しいことを知ってしまったら、もう知らないふりはできないから」


「マリア……お前は変わってるね」


お兄さまは、困った令嬢だと言って、苦笑した。


「マリアの好きなようにしなさい」


お姉さまは私を抱きしめた。














この温もりを、たくさんの子供たちに知ってほしい。






まだまだ続きます、

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