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最強聖母伝説  作者: 翡翠
21/23

溢れるくらい水をあげる

読みたい!と言って下さる方がいらっしゃったので、まだ頑張ろうと思います。

「マリア様ー!お歌うたってー!」

「リジーお姉さん、レオンが私のリボン取ったぁ!」

「おいデヴィット!勝負しろ!」

「カイル先生、解けたよー!」



創設から一年。

ここは、子供たちの笑顔で溢れていた。



「さぁさぁ、みんな!ご飯にしましょう♪」


マリアの一言で、騒がしかった子供たちは一斉に食堂に集まる。


「お野菜はすべて畑で採れたものですよ。みんな、よく頑張りましたね」


マリアがほわりと笑えば、子供たちは照れながら、誇らしげに笑い返した。


「「いただきまーす!!!」」


この時代の子供たちとは思えないほど幸せそうな光景。


でも、育てるだけではダメだとマリアは考え、

成長した子供達に様々な職場も準備している。


貴族の子息とまではいかないが

しっかりと教育を施した我が子達なら

このご時世、引く手あまただろう。


そして金銭的に自立した子供達に

施設の支援をしてもらうことによって、

次の子供達をまた育てて行ければと思っている。


マリアが死んでも永続的に運営できるように。

それが、いつかの王妃様との約束でもあったから。



「ああマリア、パンくずがついてるよ」


ふと、隣に座っていたカイルがマリアの頬に触れた。


「あらやだ、ほんとに?」


恥ずかしそうに頬を赤らめたマリアに、カイルが蕩けるような笑みを返す。


「ふふっ、もうとったよ」


出会って一年。

カイルは、まだ少年であるにも関わらず

どこか色気のある美少年へと成長していた。


「騙されてはいけません、マリア様。それは、ただあなたに触れたかっただけですわ」


なんて汚らわしい男……、と。

儚く透き通った美貌を歪ませたエリザベス。


彼女もまた美しく成長していた。

しかし、相変わらずカイルとは犬猿の仲だ。



「君ってほんと、男ってものを毛嫌いしてるよね」


早く適当な男にでも嫁いで、ここから消えればいいのに、とため息をつくカイル。


「いやよ、男に嫁ぐくらいなら神と結婚するわ。それから二代目マザーになって子供達を愛している方が、何倍も幸せよ」


「ずっとここにいる気?冗談じゃ…」


「まぁまぁまぁ!リジー、それ本当なの?」


「ちょっとマリア…!」


「どうなの、リジー!」


「は、はい。そうできれば、と思っていますが…」


「ぜひ二代目になってちょうだいな!」


子供のように無邪気に笑うマリア。


「なにそれ!断固反対する!僕だってこの施設の職員としてマリアのそばにいるんだよ!こいつはいらないだろう!?」


「でも、それぞれ役割が違うでしょう?」


困ったように微笑むマリアに、カイルはグッと不満を飲み込んだ。


「カイル、その辺にしておけ」


「デヴィット……」


食事をしながら静観していたデヴィットだったが、鋭くカイルを睨む。


「マリアをあまり困らせるな」


相変わらずのマリア至上主義である。

いや、正確にはここ1年で悪化していた。


「我が女神の言葉は絶対」と子供達に吹聴し

「女神に背くもの邪魔するものは排除せよ」という戒律を教え子たちに叩き込んだ。


おかげでデヴィットを師と仰ぐ少年達は

立派な忠犬騎士になりつつあった。



「マリアさま〜私もずっとここにいたい〜」


子供達が次々に甘え始める。


「ふふっ、夢が見つかれば、きっと旅立つでしょうね…」


たおやかに微笑むマリアに

「そんなことないもんー!ずっと一緒だよー!」と駆け寄る子供達。




「貴方達が幸せになってくれれば、いいの…それだけよ…」


子供達を抱きしめながら、マリアは祈った。


幼い命が犠牲になる暗黒時代。

せめて、この手の届く範囲だけでも、救いたい。


世界が変わる、その時まで。








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