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最強聖母伝説  作者: 翡翠
19/23

奇跡だから美しい

続きが読みたい!とたくさん言ってくださったので頑張りましたー。あけましておめでとうございます。ことよろです。



肺が、焼けるように熱かった。


「はぁっ…はっ…!」


それでも死ぬ気で走る。捕まるわけにはいかない。

もつれそうになる足を懸命に動かした。

後ろから、奴隷商人達が何か叫びながら追ってくる。



「ああっ!」


こんなときに、つまずくなんて!

いそいで体を起こす。



「っ、たあ…」


しかし足に激痛がはしる。挫いてしまったみたいだ。



「せっかく、逃げ出したのに…!」


もう、逃げられない。

奴隷商人達に再び捕まれば、ただではすまないだろう。

彼等の荒い声が近づいてきた。



「ああ…神様…」


捕まるのは、もう時間の問題だった。

奴隷市場に戻れば何をされるかわからない。きっと、死より恐ろしいことが待っているのだろう。



「だれか…だれかっ…、」


望みなど、なにもなかった。


「わたしをころしてええええええ」


生など、望めなかった。



















「それはできないわね」


この場に相応しくない、やわらかな声がした。





***********




「ねえマリア、これくらいでいいんじゃない?」


カイルは薬草の入った籠を、軽く揺らしてみせた。

こぼれそうなくらいたっぷりと摘まれているのを見て、マリアはきょとりと首をかしげた。



「あらあら。もう摘み終わったの?」


まだ森に来て1時間しかたってないわよ、と驚く。


「うんまあ、薬草の本はぜんぶ暗記していたからね」


あとは必要そうな薬草を摘むだけだった、と何でもないように言うカイル。


「カイルは本当に優秀ね」

「そうかな?」


少し照れて、カイルはマリアから目をそらした。


「ええ。だって私はこの本を見ながらじゃないと出来ないもの」

「?いいじゃないか」


それの何がいけないのか。


「だってお母さんなのに、しっかりしなきゃ…」

「僕は子供じゃなくて右腕だから、頼って良いんだよ」


もっと頼って、依存して、僕なしでは生きられなくなるくらいに……


「あら、だめよ。お母さんを甘やかさないで」

「マリア、僕の生き甲斐を取らないでよ」

「もうっ、お母さんって呼びなさいって何度も……、」

「……マリア?」





「ねえカイル。あっち、なにか騒がしくない?」











**************




リジーは、いま、夢を見ているのかしら。


「助けに来たのに、殺してなんて言わないで?」


天使が、私の目の前にいた。

とろけるような蜂蜜色の髪が、きらきらと彼女を包みこむ。わたしと同じ菫色の瞳は、慈愛に満ちていて……見るものすべてを恍惚とさせる。


「たすけ、る…?」


天使様が?わたしを?


「ええ。正確には彼が、だけど」


そこではじめて、少年の存在に気づいた。


「ひぃっ」


赤い、瞳!!!!

お父様とお母様を殺した魔物と、同じ、恐ろしい色……


「大丈夫。彼はとても優しい子よ」


嘘だ、嘘だ!

私を見る瞳が、あんなに冷たくて、無機質なのに……



「カイル、彼らを追い払えるわね?」

「はい。あなたが望むなら」


同じ人とは思えないほど、優しい笑顔だった。

魔物のような赤い瞳は、焦がれるように彼女だけを見つめている。


少年が剣を抜く。

それと同時に奴等がこちらに来た。


「クソガキが!!そこをどけ!!」

「邪魔をするなら殺すぞ!」

「おいっ、あの女…」

「ああ、ありゃ高く売れるぜ…」


商人のひとりが厭らしく笑った。


「見るな。彼女が穢れるだろう」


一瞬の出来事だった。

少年がそいつの左目を切り裂いたのだ。


「あ"ぁあぁあ!!!」


赤い瞳が、ぎらりと光った。


「君たちの目も潰してあげようか?」


美しくも冷徹な笑みを、浮かべた……


「おいっ、逃げるぞ!」

「ま、待ってくれよ!」


商人達は恐れおののき、慌ただしく逃げ帰る。

天使様が彼に微笑みかけた。


「カイル、ありがとう」

「大したことないよ。デヴィットに比べれば」


先程の冷酷な瞳は、甘く彼女だけをうつしだす。


「あ、あの、ありがとう……」

「気にしないで。それじゃあマリア、そろそろ帰ろうか」


私を視界にも入れず、彼女の肩にそっと手を添えた。


「そうね、帰りましょうか。あなた立てる?」

「え……」

「まずはうちへいらっしゃい。手当てをしなくちゃ」

「あ、でも、私……」

「ご自宅は遠いでしょう?彼らに浚われたのだし…」

「帰る場所なんて、ありません。両親は魔物に…だから、あの、お返しができないんです」


そういうと、彼女は私の頭をやさしく撫でた。







「なら、私の子になりなさい」


女神のように、清廉な笑みだった。

この日、私は唯一の主と出逢ったのだ。








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