角砂糖の危険性について
デヴィット番外編
見事な青空だ。
騎士たちの、剣を打ち合う音を聞きながら
デヴィットはひとり木陰に座っていた。
地面を、優しく木漏れ日が照らす。
「マリア……」
この光のようにあたたかな俺の女神。
騎士団に入ってから、もう一年が過ぎた。
彼女の甘い声、とろけるような笑顔に触れられず過ごすことは、想像以上に苦しかった。
焦がれた俺は、ほぼ毎日のように手紙を書いてしまった。
そんな俺を厭わしく思うことなく、マリアは返事をくれた。
体は大丈夫?
怪我はない?
貴方がいなのは寂しいわね…
俺の身を案じ、俺を求めてくれた。
それだけで、ここでの生活に光がさした。
どんなに苦しい訓練にも耐えられた。
入団した当初は、俺がスラム出身であるにもかかわらずマリアという大貴族の後ろ楯かあるせいか、白い目で見られいた。
しかし、スポンジのように剣術を修得し現国家騎士団隊長・アイザック様をも負かしてしまった今では、昔の話だ。
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そう、マリアから一度だけ返事が来なかった時があった。
あの時はあまりのショックに、その日の記憶がない。
翌朝、他の騎士団から異様に怯えられていたので、なにかしてしまったようだ。
あの日何があったのか聞くと、みな口を閉ざすか怯えて失神までするので、謝ろうにも謝れない。
「(地獄絵図だった……!)」
ことの真相はこうだ。
その日、騎士団中が阿鼻叫喚した。
一方的なデヴィットの八つ当たりによって、彼の所属する第一師団、約千人もの騎士たちが再起不能となったのだ。
第一師団を率いる騎士団団長までも。
何事かと駆けつけた騎士団のトップ、もとい総帥がやっとのことで取り押さえることが出来た。
終始デヴィットは
「マリアどうして、どうしてどうしてどうして…返事がこないんだ……マリア、マリア見捨てるのか?嫌だ、マリア、」
と虚ろな目で仲間たちをなぎ倒していた。
あまりに不気味で狂暴なため、総帥が
「落ち着け、あの優しい公爵令嬢様が貴様を見捨てるものか!きっと、手紙の到着が遅れておるだけじゃ!」
その言葉にハッと息を飲んだデヴィット。
「……そうだ、その通りだ。彼女はやさしい。きっと、何かあったに違いない……そうか、マリア…マリアが……」
と呟いて倒れた。
これ以降、騎士団はさらにデヴィットの生まれについて、とやかく言わなくなった。
そして彼の前では決してマリアの話題は出さないという暗黙の了解が生まれた。
負かされた騎士団団長は、ショックのあまり数日寝込んだらしい……。
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デヴィット騎士団編でした。ショボいお話ですが、また気が向いたら騎士団編も書きます(*^^*)